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「サラ! この大ばか者!」
「ご、ごめんなさい」
王都から帰ってきたわたしたちを待っていたのは、たくさんの村人だった。
罪悪感で胸がいっぱいになる。
そんなわたしの頭をウイカが容赦なく叩いてきた。
「よりにもよって国王陛下に危害を加えるなんて。だから言ったでしょう、何かあったら相談しなさいって。あんたに何かあったら、あたしは」
「ごめんなさい、ウイカ。もう大丈夫だから。ほら」
半泣きで怒っているウイカに、鞄のなかから取り出した白い花を差し出す。
「王都のお土産。この花を軒先に飾ると幸せになれるんだって」
そしてウイカに気圧されて何もできずにいた初老の男性――村長に鞄を渡した。
「王都の花祭りで貰ってきました。村の皆に配ってください。来年はこの村でも花祭りができたらいいなと思います」
わたしが微笑むと周囲がざわめいた。ウイカが代弁して腕を組む。
「あんたが普通に笑ってるところなんて初めて見たわ」
そんなに驚くことでもないだろうにとリンを見ると、こくこく頷いていた。
「だけど笑ってる方がいいよ」
わたしの睨むような視線に気づいてリンが弁解するように必死になった。
「サラは笑顔が1番かわいいから!」
「……まぁ、いいけど」
*
喫茶店は再開したけれど相変わらず閑古鳥が鳴いている。
時々陛下が変装してやってきては、妃として迎えたいと言ってくる。やっぱりどこからどこまでが本心なのかは分からないけれど、前のような嫌悪感は抱かなくなっていた。
そんな調子で、信じられないくらい平穏な日々を送っていた。
「ぶはっ。コーヒーってこんな苦い飲み物なの! これじゃ流行る訳ないじゃない。いくらお金に困っていないからとは言え、もうちょっとあたしらの生活に合った商売をしておくれよ」
村長はまずいって顔をしかめていたんだから。
余計な一言を付け加えるのがウイカらしい。
「いいんです。わたしは、コーヒーを淹れ続けたいんだから」
そうしている限り、わたしは前を向いて生きていけるだろうから。
「この頑固者。だから嫁のもらい手がないんだよ」
ふん、とウイカが鼻を鳴らしてコーヒーを飲み干す。
「あれ? サラ、耳飾りなんかつけてたっけ?」
わたしの耳元には、紅い色の小さな花の飾りが光っていた。
花祭りで陛下が買ってくれたものだ。
「ふん。似合ってるじゃないの」
詮索したそうなウイカを制するように、わたしは人差し指を口元に当てて答えた。
「幸せを、願うひとからです」




