やる気の起きない男の物語
「面倒だなぁ」
気を抜くといつもこの言葉がこぼれ出る。
何事にも中々やる気が起きず、物事も長く続かない。
生きることにも面倒だと思いだしてきた冴えない男の元にある日、一通の封筒が届いた。
封筒の中を見ると一枚の白い紙が入っていた。
その紙には何も書かれておらず、光で透かして見ても、火で炙ってみても何も無かった。
「なんだ?悪戯か?」
そう言って紙を破ろうとした瞬間、玄関から物音が聞こえた。
コン コン
手の甲で軽くノックするような音
「すいません、佐藤さんのお宅ですか?」
男性の声が聞こえた。宗教の勧誘か何らかの募金だろうか。そういうのには興味がないと毎回断っているのに執拗な連中だな、と思いながら面倒そうな足取りで玄関へ向かった。
「はい、佐藤ですが、何用ですか?宗教とか募金なら興味ないんで帰ってください」
玄関を開けるとそこには黒いスーツを着た男が4人程立っていた。
「こちらのほうに封筒が届けられたと思うのですが中を確認しましたか?」
「え?まぁ・・・でも中はただの白紙でしたよ?」
「白紙?本当に?」
白紙と聞いてスーツの男達は顔色を変えた。
「間違いなく何も書いていない白紙の紙が入っていたんですね?」
何故そこまで白紙である事を確認してくるのか。疑問に思いながらもとりあえず返答した
「確かに白紙でしたよ。なんなら今から持ってくるんで確認しますか?」
何度も聞かれちゃ面倒で仕方がない。部屋から封筒を持ってきてスーツの男達に手渡し、白紙である事を確認させた。
「確かに白紙ですね、では申し訳ありませんがこちらにご同行お願いできますか?」
白紙の紙を封筒に戻し、スーツの男は内ポケットに入れながら言った。
「同行を拒否する場合であれば力ずくにでも連れて行きますが。」
拒否する選択肢は元から無いかのように食い気味に別のスーツの男が言った。
「わかったよ。とりあえず着替えるから少しまってて貰えます?」
服を着替え、スーツの男達に誘導されるがままに車に乗せられ、運ばれた。
続く