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「なぁ、辰子山の銅像が動く話って知ってるか?」
高校の帰り道、隣を歩く佐藤に尋ねる。
佐藤とは今年、つまり二年生から、同じクラスになり仲良くなった。
整った容姿をしているため、女子が騒いでいるところを見たことがあるが、確かに入学当初から目立つ存在ではあった。
しかし、その事を知ってか知らずか、彼自身は全く鼻に掛けていないところが、男達からも好感を持たれているポイントだろう。
「知ってるよ。水神様だろ?」
有名な話だったのか。
こともなげな佐藤の表情に少し驚く。
「ワクワクするよな。そういう話。」
言いながら佐藤はニヤリと笑った。
わからないでもないが、大人になるに連れて、そういった気持ちが冷めていく自分がいた。
人生の中で、オカルティックな体験があまりに乏しいために、まことしやかに囁かれるその類の噂に対する期待値はどんどんと下がっていた。
「なんでそんな噂が流行ったんだろう。」
基本的な疑問を口に出してみた。
「うーん、やっぱりあれかな。悪ガキを戒める為に利用してたんじゃないかな。」
佐藤は答える。妥当なところだ。
その後は学校の事、進路の事、他愛もない話をした。
「じゃあ今度、水神様のところに行こうぜ。」
別れ際に佐藤はそう言って手を振った。