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白川と日吉には、今回の探検は中止にしよう、とメールを送った。
二人とも、残念がってはいたが、この豪雨の中では仕方がないと見て、合意してくれた。
手持ち無沙汰になってしまった僕は、ネットで辰子山の事を調べる為、パソコンを立ち上げた。
検索をかけると、数件のヒットがあった。
その中には、佐藤の話す通り、雨の日の夜、水神様の像が動くのを目撃した、という情報が僅かながらあった。
夏ということで、肝試しをする人が増えているのか、ここ最近の投稿もあった。
その投稿者は、夜中、柵を乗り越え、水神様の前で数人の仲間と写真を撮っていたところ、白い服を着た女性に注意を促されたという。
その日は、他に変わった出来事は無かったようだが、その二、三日後から、仲間の一人の様子がおかしい、と書き込まれていた。
充血した目で、ぶつぶつと独り言を言うようになり、簡単な受け答えはできるものの、酷く怯えた様子になってしまったらしい。
白い服を着た女性というのは、まさか先週僕らが出会った彼女であろうか。夜の辰子山に肝試しに来る人間に、頻繁に声をかけているのだろうか。一体何者なのだろう。そして、様子のおかしい仲間というのは、一体何に怯えているのだろうか。
様々な疑問が頭をよぎったが、あくまでネット上での噂。どれもこれも、確証的なものが無い為、僕は考えるのを辞めて外を見る。
一時間以上強く窓を打ち付けていた雨は、次第に勢いを弱めていったが、依然降り続ける。
その後、土日で佐藤からの連絡は無いまま、月曜の朝を迎えた。学校で会ったら、彼に文句を言ってやろうと思っていたが、それは叶わなかった。
担任の教師から、僕らは佐藤の失踪を告げられた。