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魔刀の反逆者―最強と謳われた男の復讐譚―  作者: 黒肯倫理教団
謀略の魔国編

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63話 三つ巴(1)

 ガルムは獣人の魔核を喰らったことによって恐るべき力を手に入れていた。

 ラクサーシャと同等の魔力。

 そして、同等以上の腕力。

 更に魔導兵装を込みにすれば、数値的な強さではガルムのほうが高いだろう。


 そこまで上り詰めるために、彼はどれだけの命を奪ってきたのか。

 ラクサーシャへの勝利に餓えた獣は、この機会を待ち侘びていた。


 ガルムはレイナに視線を向ける。


「ラクサーシャは俺が殺る。それまで、他の雑魚共を近付けるな」

「分かりました」


 補佐官レイナ・アーティス。

 その能力は戦闘面、頭脳面の両方において指揮官に匹敵する。

 そんな彼女を前に、セレスが悠然と立ちはだかった。


「帝国の悪魔共め。近衛騎士団長の名誉に懸けて、この私セレス・アルトレーアが討ち取って見せよう」

「随分と威勢の良い。ですが、それは不可能かと」


 レイナがレイピアの剣先を突き付ける。

 しかし、セレスは動じる事無く剣を構えた。

 その横にレーガンとエルシアが並ぶ。


「三対一だろうが、オレは手加減しねぇぜ?」

「帝国の騎士なら殺すことに躊躇は無いわ。精々足掻くことね」


 レーガンが戦斧を突き出し、エルシアが大魔法具アーティファクトを構える。

 それぞれが大陸屈指の実力者であり、相性的にも調和の取れた三人だ。

 後方でベルの神聖魔法による援護もあるのだから、これを相手取れる人間など大陸に五人といないだろう。


 先手を取ったのはレイナだった。

 レイピアで斬りかかるかと思いきや、凄まじい速度で虚空に術式を描いていく。

 現れたのは、剣士が使うとは思えない複雑で緻密な術式。


此の地こそヒーア・ラントゥ・ヴァス――氷魔の領域ペルマ・フロスト


 空間が凍て付く。

 それは比喩でも何でもない。

 刹那にして極寒の領域が生み出されたのだ。


 その技量もさることながら、魔力量も異常だった。

 ラクサーシャやガルムほどとは言わずとも、彼女も神域に足を踏み入れているようだった。


「行きますッ!」


 素早い身のこなしでセレスに肉薄する。

 セレスは突き出されたレイピアをいなし、流れるような動きで斬り返した。

 しかし、剣を振るったときには既にその場にレイナの姿は無い。


 背後に気配を感じたセレスが剣に炎を纏わせようとして異変に気付く。


「魔法が使えない、だと?」


 セレスの得意とする属性が威力を発揮できない。

 それが示す意味は単純。

 彼女はこの場において、著しく弱体化しているということだ。


 剣が思い通りに振れない。

 身体能力の強化を使えないことなど初めてだったセレスは慣れぬ感覚に苦戦する。

 ただでさえ力が発揮できないのに、その上、魔力が使えないせいで違和感があった。

 その違和感に気を取られ、レイナの動きに集中できない。


 まともに打ち合うことも出来ず、セレスは顔をしかめる。

 その様子から異常を察したエルシアが魔道銃を突き出した。


「伏せてッ!」


 轟音と共に極光が放たれる。

 極光はセレスの頭上を通過してレイナに襲い掛かる。

 流石にその威力は受け止められないらしく、レイナはそれを後方に飛んで交わした。


 エルシアは周囲を見回し眉を顰める。


「厄介ね。この結界、あいつが動きやすいように作られているわ」

「まじかよ。なら、どうするってんだ?」

「どうするって、倒すしかないわよ。シュトルセランがいれば、すぐに対処出来たでしょうけどね」


 ここにきて、シュトルセランを置いてきたことが仇となっていた。

 エルシアは腰の剣に視線を送り、頷く。


「出来れば、少し時間を稼いでくれると助かるわ」


 エルシアは懐の剣を抜刀する。

 術式破壊レジストの刻まれたその剣は、彼女の切り札の一つである。

 レーガンはその意図を察して頷く。


「分かったぜ。オレとセレスで出来る限り時間を稼いでやる」

「頼んだわよ」


 そう言うとエルシアは剣に魔力を通していく。

 剣に刻まれた術式の全てを起動させなければ術式は発動しないため、ただでさえ複雑な術式を刻まれているのだから相応に時間がかかってしまう。

 それまで持ちこたえてもらう必要があった。


 だが、戦況は悪化する。

 後方から何人かの気配を感じた。

 振り返えってみれば、そこには悪魔が立っていた。


 悪魔の姿を模した魔導兵装。

 それは帝国の騎士の象徴である。

 その実力は竜種をも凌駕するほど。

 生半可な戦力では相手取ることは厳しいだろう。


 エルシアはクロウに振り返る。

 レーガンとセレスの補助にベルを回す必要がある。

 現状で割ける戦力といえばクロウとしかいなかった。


 エルシアの視線を受け、クロウは頷く。

 ここまで来て、既に覚悟は決まっていた。


「やってやる。やってやるさ! 俺だって、旦那に鍛えられてるんだ。負けるはずがない!」


 短剣を構え、クロウが騎士たちに斬りかかった。

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