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魔刀の反逆者―最強と謳われた男の復讐譚―  作者: 黒肯倫理教団
流浪の王国編

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35話 魔国へ

 武道大会の開催はすぐに決まった。

 ザルツからの提案はすんなりと受け入れられ、早速準備に取り掛かり始めていた。

 無論、ジスロー率いる元老院からの猛反発があったが、ラジューレ公爵の一喝で表向きは静かになっている。

 武道大会の開催までは、元老院の動きも封じられそうだった。


 あとは、時が来るのを待つだけである。

 もし、武道大会で帝国に対抗できるだけの戦力が見つからなかったならば。

 ラグリフ王は今度こそ、帝国に属国として従う覚悟をしていた。


 セレスは王城での一件をラクサーシャたちに伝える。


「そうか。これならば、王国もどうにかなるだろう」


 ラクサーシャはほっと息を吐いた。


 セレスがザルツに相談をしにいく前に、クロウはラジューレ公爵に付いている密使の男に通信を入れた。

 セレスたちと合流させることができたため、これで上層部の動きは抑えられる。

 とりあえず、目先の危機は回避できたといっていいだろう。


 ラクサーシャたちの用意した筋書きは至極単純なものである。

 武道大会にラクサーシャが偽名で参加。

 優勝したら近衛騎士団長の座を与えられることになっているが、その時に正体を明かす。

 無論、ラクサーシャに匹敵するほどの相手が出てくる可能性も考えられるが、それは限りなくゼロに等しいだろう。


 ラクサーシャが正体を明かしたときに元老院が反発するだろうが、こちら側にはセレスとザルツ、それにラジューレ公爵と味方も多い。

 後は王が頷くか否かにかかっている。


 今出来ることはは武道大会が始まるのを待つだけだ。

 一ヶ月という期間を有効に活用する必要があった。


 セレスは窓から顔を覗かせて日の位置を確認する。


「それでは、剣士殿。私はそろそろ王城に戻らねば」

「うむ」


 一礼すると、宿から去っていく。

 セレスの背を見送ると、ラクサーシャたちは今後の行動を話し合う。


「さて、武道大会まで一月の猶予がある。どうするべきか」

「あ、旦那。それに関していくつか話しておきたいことがある」

「ほう。聞こう」

「まず、港町で聞いた少女についてだけど、完全に足取りが分からなくなった。全く情報が手に入らなかった」


 クロウの言葉に、一同は残念そうに肩を落とした。

 強者の情報はなかなか得られないため、出来れば足取りを追って少女の下に辿り着きたかった。

 しかし、足取りが途絶えてしまってはどうしようもない。

 エレノア大森林にいたのか、はたまた迂回して魔境へ向かったのか。

 そもそも国外に留まっているのかさえ分からなくなってしまった。


 しかし、足取りは分からなくなってしまったが、大陸のどこかにいるのは確かだ。

 大陸各地を巡っていけば、いずれ情報も手に入るだろう。

 一同は気を取り直し、クロウの話に耳を傾ける。


「次に。ここ最近、王国の南西ではぐれ竜が出たらしいんだけどよ。それを一撃で仕留めたやつがいるって噂だ」

「ほう、はぐれ竜を一撃か」


 ラクサーシャは感心したように頷く。

 竜種は非常に硬い鱗を持っており、一撃で倒せるとすればラクサーシャやレーガンのような力の強い者か、エドナのような強力な魔術師くらいだろう。

 それだけの一撃を放てるならば、戦力としては一級だ。


「聞いた話だと、そいつは王国の各地で大魔法具アーティファクトを集めて回っているらしいぜ。既に結構な数の大魔法具アーティファクトを持っているみたいだ」

「かぁーっ、大魔法具士アーティファクターってか。オレも一つくらいは欲しいもんだ」


 レーガンは背中の戦斧を見つめため息を吐いた。

 手に馴染んだ武器ではあるが、丈夫なだけで魔道具ですらない代物だ。

 ミスリルプレートの冒険者にしては、異様に武器の質が低かった。


「その人がどこにいるかは分かるんですか?」

「残念だがこっちも分かってないんだ。まあ、大魔法具アーティファクトがありそうな遺跡にでも行けば、どっかしらで会えそうな気はするけどな」

「そうなんですか」


 ベルは頷くと、クロウの話をメモする。


「それと、もう一つ。これが大きなことなんだけどよ、魔国の方で内乱が始まるらしい」

「ほう、魔国で内乱か。あれは大人しい気質の国だと思っていたが」

「ああ。王位継承争いで、第一王子派と第二王子派で割れているらしいぜ」


 ラクサーシャは興味深そうに身を乗り出す。

 元将軍ということもあるせいか、他国の事情が気になるようだった。


「けど、状況を見れば第一王子派の圧勝だろうな。国内の有力貴族の大半を味方に付けて、さらに相当な腕の護衛を雇っているらしいからな」

「んな状況で、よく第二王子も抵抗するもんだな。オレだったらさっさと退散するってのに」

「その辺りの事情は魔国で調べなきゃ分からないだろうな」


 クロウは今持っている情報を出し尽くしたらしく、メモ帳を懐に仕舞った。

 ラクサーシャに視線を向ける。


「なあ、旦那。ここはどっちかを手伝って、恩を売っておくのはどうだ?」

「うむ、それがいいだろう。帝国との戦いに、魔国の協力が得られるならば大きい」


 魔国は大陸でも屈指の魔法大国である。

 騎士が少ない代わりに魔術師が多く、戦争の際には大魔法が飛び交う。

 小国ながら戦力は王国に匹敵するほどで、わざわざ攻め込む国は少ない。

 魔国を味方に付けられたならば、帝国との戦争も現実味を帯びてくるだろう。


 それに、とラクサーシャは続ける。


「魔国には私の友人がいる。遅かれ早かれ行くつもりだったのだ、この機会に魔国へ行くのもいいかもしれん」

「友人って言うと、あの地下牢獄を設計した?」

「うむ。シュトルセランならば、手を貸してもらえるはずだ」


 賢者と称されるほどの頭脳は、確実に助けとなるだろう。

 卓越した魔術はエドナにも匹敵するほど。

 大陸最高峰の魔術師を味方に付けたかった。


「なら、武道大会までの期間は魔国で決まりだな」


 ラクサーシャたちは方針が決まると、早速行動を始める。

 明日の朝には宿を出て、魔国へ向かうことになった。

流浪の王国編終了。

登場人物紹介と間話を挟んで次の章に移ります。

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