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109話 取り残される

 翌朝になると、一同は里を出て移動を開始した。

 コウガとマヤに先導され、森の中を進んでいく。


 魔物の一匹とて存在しない穏やかな道程。

 目的の遺跡に着くまで戦うことは無いだろう。

 しかし、そこに気の緩みは無い。


 神代の技術、閉門の楔パルフェ・ランクェス

 その正体は人形兵ゴーレムであるという。

 古竜の亡骸を利用して作られたためか、その気性は極めて荒い。


 それを鎮めるには楔の眷石ヘクセ・ヒュムネを嵌め込む必要がある。

 完全に破壊せずとも、最低でも行動不能までは持っていかなければならなかった。


 そして、今回はラクサーシャを抜きで戦うことになっていた。

 クロウも参戦するが、妖刀『喰命』は抜かない。

 エルシアとクロウ、セレス、レーガンの四人で戦うのだ。


 これは、ただ閉門の楔パルフェ・ランクェスを従えるだけの戦いではない。

 この戦いを通して、自分たちがラクサーシャの傍らに立つ資格があると証明するのだ。


 今や、ラクサーシャの戦いは解放軍だけに留まらない。

 王国を、魔国を、そして皇国をも巻き込んだ、大陸史に残る大戦になるだろう。

 強大な軍事力を誇る帝国に、幾つもの勢力が連合して立ち向かうのだ。


 破壊者ロア・クライム。

 竜乙女シェラザード・ランエリス。

 そして、魔刀の反逆者ラクサーシャ・オル・リィンスレイ。

 天涯である三人に比べれば、エルシアたちは幾らか劣っていた。


 これまで、皆はラクサーシャに頼りきっていた。

 彼がいれば負けることは無いのだと、心のどこかで安堵していた。

 圧倒的な強さを誇るラクサーシャならば負けることは無いと、甘い考えを持っていた。


 その結果が港町での戦いである。

 ラクサーシャが倒れてから、エルシアたちは成す術無く打ち負かされてしまった。

 しかも、ラクサーシャが倒れた原因は仲間を庇ったことだった。

 足手纏いになっている現状に甘んじてはならない。


 故に、ラクサーシャに頼らずに戦う。

 それがエルシアたちの決意だった。


 森の中を進んでいくと、一同は遺跡の入り口に辿り着く。

 入り口には強固な結界が張られていた。


 地下へと続く階段。

 その奥に、強大な気配を感じた。


「今から入り口の封印を解く。いつでも戦えるよう、準備をしてくれ」


 クロウの言葉に、一同は武器を構える。


 レーガンが戦斧『雷神の咆哮ブリッツ・ブリューレン』を呼び出す。

 その身に紫電を迸らせると、漆黒の鎧が現れた。

 戦鬼の名に相応しい、勇猛な戦士の姿。


 セレスが腰に帯びた剣を抜刀する。

 父の形見である、大切な剣。

 近衛騎士団長の名に相応しい、気高き騎士の姿。


 その二人の姿に、エルシアは羨望の眼差しを向ける。

 セレスは王国での一件で、そしてレーガンは皇国での一件で悩みを解決することが出来た。

 エルシアだけが悩みを抱えているのだ。


 間近に迫った帝国との戦争。

 大陸では既に、王国と魔国、そして皇国が連携して準備を進めている。

 悩んでいられるのは東国にいる間だけだった。

 迷いのある剣で、本当に戦い抜けるのだろうか。


 エルシアが答えを見出す前に、一同は遺跡の最奥に辿り着く。

 部屋の中央に鎮座するのは、体長が十メートルはあろうかという巨大な竜。

 その体は聖銀ミスリルの装甲に覆われ、生半可な一撃では傷一つ付けられないだろう。


 だが、ここにいるのは強者のみ。

 聖銀ミスリルであろうと、武器を振るうことに変わりは無いのだ。


 エルシアは破魔剣オルヴェルに魔力を流し込む。

 極光を纏った剣を構え、目の前の巨竜を睨み付ける。


 その殺気を感じ取ったのかは分からない。

 閉門の楔パルフェ・ランクェスはゆっくりとその首を持ち上げ、一同に狙いを定め――咆哮。

 戦いの幕が開けた。

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