糸こんにゃくプリズム
世の中の出来事はどうでも良いことで溢れてる。
本人にとって大事でも、他人から見ればどうでも良い。
...のかもしれない。
休日...それは、世の中の「強制」から解き放たれる日である。
いまいちピンとこないが、休日とはそういうものである。
これは、どこかにいる誰かの「休日」である...
「悪いな、今日バイトなんだわ」
学校の帰り道、俺の目の前に突然現れた人間が話しかけてくる。
いきなりバイトがどうのとか言われても、俺はこいつと面識がない。
誰だお前。
俺はそいつを無視しながら、携帯を取り出した。
きょうは休日である。
それを忘れていたあわれな学生たちが何人か登校していた。
学校に着いたところで門が閉まっているのだ、帰るしかない。
バイト男は苦虫噛み潰した顔でこちらを見ている。
早くバイトにいけ。
「きえぇぇぇぇぇ!!!!」
バイト男が奇声を発しながらこちらに走ってきた。
俺は咄嗟にバイト男の突進を避け、目からビームを出して応戦する。
俺のビームで辺り一面は焦土と化した。
バイト男め...ゆるさん...!!
「んぃぃぃぃいいいい!!!」バリバリバリ!
バイト男の顔が真っ二つに割け、中から得体のしれない触手のようなものが出てくる。
あれは...!糸こんにゃくか...!!
凄まじい量の糸こんにゃくがバイト男の体を包み込んだ!
まさか...糸こんにゃくを防御にまわすのか!?
すると、糸こんにゃくの隙間からひかりが漏れた。
それは...とても優しく、暖かい光...
俺はバイト男の糸こんにゃくプリズムに包まれながら、今日の夕食のことを考えた。焼肉にしよう。
それはとても長く、とても短い時間に思えた。
この糸こんにゃくプリズム空間では、何にも干渉されずに自分の全てをさらけ出せる...そんな気さえした。
しかし、何にも終わりはくる。
糸こんにゃくプリズム空間が崩壊を始めた。
こんな形で終わりが来るなんて...俺は実感した。
あぁ...もしかしたらこれが、これこそが俺の求めていた答えなんじゃないか...焼肉くいてぇ。
(完)
糸こんにゃくっておでんで一番嫌いな具材です。