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やっぱり中二病は救えないっ!  作者: Runner Champe
第一章 アヴィリティ・ファンタジスタ
8/11

ホーリー・ナイト・ホワイト・ナイツ~つまり、幼馴染みでした~





「あぅっ、…いつつ」



最悪の気分で目が覚めた今朝。

身体中は切り傷で痛むし、火傷の跡も酷い。血も足りなくてまさに瀕死といった状況だ。



「はぁ…」



仕方ない、今日は学校を休むか……。入学してたった三日でおれの皆勤賞は潰えるのだった。














「さて、と。なにすっかなぁ」






学校へ欠席の連絡を入れたおれはベッドの上に寝転がりながらそう呟く。

学校を休んだはいいもののーーいや、よくわないがーー正直なところ、暇です。超暇。



「取り敢えず、この暇を紛らわすためにゲームでもするか」



立ち上がったおれはゲーム機を取りだし、暇潰しを始めようとする。



ーーだが。



「かーたーん!いるっ?」



本来、ここには存在しない筈の人間の声が、部屋の扉の外から聞こえた。

…まさか、ありえないだろ!



「いるなら返事してよっ!かーたんが学校休んでるのは知ってるんだから!」



なんでアイツがここにいる?!アイツには住所教えてないぞっ!ウザいから!!



「うー。かーたんがその気ならこっちだって考えがあるよ!……この扉邪魔だな、吹き飛ばしちゃえっ」



「やめろっ!!」



「あは、やっぱいるじゃん!かーたん、愛しの白斗が来ましたよ?」



不吉な言葉が聞こえたので急いで扉を開ける。

そこにいたのは白髪を肩より少し下まで伸ばし、赤い瞳を上目遣いにこちらを見詰めるアルビノの美少女。

さっきから鬱陶しいこの美少女の名は 鹿射(しかい)白斗(はくと)

男みたいな名前だがコイツは正真正銘の女でおれみたいなやつではない。

そんなウザいコイツとおれは腐れ縁というか、なんというか……。

所轄、幼馴染みというやつで幼い頃からコイツと知り合っていた。

周囲がおれを女扱いするなか、コイツだけはおれを男として見てくれて………その、感謝はしている。



「もう!なんでボクに黙って引っ越ししちゃうんだよっ!かーたんは聖南いくと思ってたからボク、聖南受けたのにっ!!」



……ただし、ウザい。ウザいのだコイツは。

なんでおれが近場の高校に行かなかったか?

それは中二病的な意味合いとあの姉から逃げるのが第一の目標だが、お前から離れるためでもあるんだよ、ド畜生っ!

……コイツは見た目だけなら完璧な美少女だ。見た目だけだが。

そんなコイツにはたくさんのファンがいた。

おれからすれば、コイツはただの幼馴染みでそれ以上でもそれ以下でもない存在だが、連中はそうは思わなかったらしい。

中学校ではコイツとカップルなんて不本意な噂をされていたが、それがどうにも連中の気に触ったらしい。

……結果。

連中の襲撃にあったおれはダンプカーに跳ねられ、全治一週間の打撲。

怒り狂った白斗により、連中は撲滅された。

ダンプカー程度でおれを殺せるはずがないが、それでもあのときはヒヤッ、としたぜ。



「……知らねぇよ。おれは元々、凡祖受ける予定だったんだ。勝手に勘違いしたのはお前だろうが」



「うー。でもでも、ボクはかーたんと一緒に行きたかったな……」



最後の方の言葉は震えていた。

目尻には涙をため、今にも泣き出しそうな雰囲気の白斗。



「はぁ……。しゃあねぇな、入れよ」



仕方なくおれは白斗を部屋に入れた。

中学卒業から白斗は忙しくなり、春休みにはいままで毎日会っていたのに今年は一度しか会わなかった。

久しぶりにあった幼馴染みに辛辣な言葉を投げて泣かせるほどおれは腐ってねぇ。……それに、若干ホームシックになっていたおれにとってコイツの訪問は案外、嬉しいものだった。




「……。うん!」



心底驚いたような顔をしながら、けれど満面の笑みで大きく頷いた白斗は部屋の中へ入っていく。

それに追従しておれも部屋の鍵を閉めて中へと入っていった。



















「それにしても意外だったなぁ」



「うん?なにがだよ」



「だってかーたんがボクに憎まれ口一つ言わないで部屋に入れてくれたんだもん!」



「……一度、お前の中のおれを問い質したいのだが」



それでコイツは驚いたような顔をしていたのか。

確かにおれはコイツに辛く当たっていたのは事実だが……。



「だからね、久しぶりにかーたんを見てやっぱりかーたんはカッコいいって思ったんだ」



……カッコいい、ね。

そんなこと言ってくれるのはお前だけだよ。家族でさえおれには可愛いだから。



「いきなり何を訳のわからんことを。頭でも打ったのか?」



「えへへ、そうかも」



だから、だからおれはつい、コイツに強くあたっちまう。

コイツの優しさに甘えて。コイツの好意を弄んで。

……最低だな、おれ。



「かーたんはさ、やっぱりあの日のことを引きずってる?」



「……なんだよ、急に」



「いやさ、折角だから聞いておこうと思って。……最後に気になってさ」



最後?よくわからんが何を考えてるんだ、コイツは。



「それで、どうなの?」



あの日、か……。

忘れられない、人生の転機。……おれが、人生で初めて告白し、そして振られた日。

引きずってないといえば嘘になる。結局、今のおれもあの日のことを引きずっているだけにしか過ぎないのかもしれない。

…………けれど。

けれど、それはそれで今を満喫している。

今のおれがいて、凡祖学園に入学して。

春日木や阿宮葉と知り合った。

アリスと鳴神会長に呼ばれていた黒い槍の少女と戦い、昨日はクトゥルフ神話の旧支配者に遭遇し、逃げ帰ってきた。

思えば、まだ三日しか経っていないのに随分と濃い高校生活だ。

だが、それが楽しいと思っている自分がいる。

……その部分だけはおれを振った彼女に感謝したいな。

だから、おれの答えは一つだけだ。



「ああ、もう大丈夫だ。お前が心配することはなにもない」



おれがそう答えると「そっか」と嬉しそうな、けれど、どこか寂しそうな顔をした白斗がいた。

久しぶりの幼馴染みとの時間はおれを癒してくれていたようで体の傷は既に治っていた。






















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