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やっぱり中二病は救えないっ!  作者: Runner Champe
第一章 アヴィリティ・ファンタジスタ
6/11

エーデルカイト~つまり、話しました~








「ふぁっ、んん」



黒い槍の少女襲来事件から翌日。

眠気眼を擦りながらも学校へ行くため起床する。

時刻は午前7時。学校の校門がしまるのが8時20分で、学校前まで行くのに20分弱だから、かなり余裕のある朝だった。

おれは現在、独り暮らしをしている。

それはおれのことを知る人間から離れるためでもあったが、何よりあの姉から逃げるため、というのが第一におれの中にはあった。

……姉のことを考えるのはよそう。朝から気分悪くなる。
















朝食を終え、身支度を済ませてからまだまだ時間に余裕があるため、テレビをつけてニュースを見る。

殺人、強盗、詐欺、強姦と悪いニュースから始まり、開店間際のスーパーマーケットや行方不明の子供が見つかったなどのいいニュース。あれが、うまい、これが、うまいのどうでもいいグルメコーナーもある。

待ち望んだ普通の日常。

不満はないし、自分が選んだことだ。……でも、あの騒がしさが懐かしくある。

双子の妹による腹キックにより目が強制的に覚まされ、リビングに降りると年中発情しているのかと突っ込みたくなる姉のセクハラを受ける。

母の作った朝食を食べ、今年で五歳になる末妹の面倒を遅刻ギリギリまで見る。

……だめだな。独り暮らし二日目でもうホームシックかよ。



「……がっこ、いこ」



おれはズキズキと悲鳴をあげる胸の痛みを忘れるよう、そう言って学校へ向かった。


















教室に入ると既に阿宮葉と春日木が席に着いていた。

阿宮葉は机に突っ伏して時々、もう、たべられないよー、とか言ってるので寝ているのだろう。…よく眠る奴だ。



「よう」



「おはよう、月岡くん」



机に着いたおれは、鞄を置くと隣へ向き、春日木に挨拶をした。

それに春日木も応答し、自然とおれたちは会話を始めた。



「それで、わたしのちゅーにびょう?を更正するのでしょう?どうやって更正するのか参考までに聞いておきたいわ。…変なことされても困ってしまうから」



「へ、変なことってなんだよっ!…んなことしねぇっつの」



「そう。それなら安心ね」



朝っぱらからぶっ飛んだやつだ。

いや、だからこその中二病なのか。



「いやまあ、まだ具体的には考えてねぇけどよ、お前の能力はなんだ?」



「わたしの能力?昨日、自己紹介で言ったはずだとわたしは記憶しているのだけれど」



ジト目でおれを見る春日木。…ってそうじゃねぇよ!!

なにおれが昨日のことすら忘れている記憶力皆無な人間、とでもいいたそうな顔してるっ。



「そうじゃなくてだな、おれはお前の能力の詳細が知りたいんだよ!!」



「ああ、そう言うことね。なら、最初からそう言えばいいじゃない」



「あのなぁ……。はぁ、もういいや。取り敢えずお前の能力の詳細教えてくれ」



キョトン、とした表情で此方を伺う春日木を見てると怒る気もなくなり、簡潔に用件だけを述べた。



「分かったわ。……わたしの能力、<透過する不可視(インヴィジヴィレ・インビジブル)>は他者の無意識を操る能力よ」



「その能力に限界はないのか?」



「限界は分からないけれど、この学校の生徒全員くらいなら簡単に無意識を操れるわ」



マジかよ。少し楽観視してたな、コイツの状況を。こりゃ、早急に何らかのアクション起こさねぇとヤバイ。……ほぼ、覚醒している。



「そうか、分かった。さんきゅーな」



「別にあなたにお礼を言われるようなことではないわ」



素直じゃないな。可愛くないぞ。

それにしても……。

何らかのアクションとは言ったが、何をすればいいのだか。

……最悪、アレ(・・)を使えばなんとかなると思うが、できればそれは最終手段として取っておきたい。

おれはあいつの中二病を更正したいのであって、なにもあいつの中二病を否定したいわけではないからな。




















放課後。

帰りを誘いに来た春日木と阿宮葉に今日は用事があるからと断りをいれ、おれはある教室の前に来ていた。

立て札を見るとそこには『生徒会室』の文字がある。

そう、おれは生徒会室に来ていた。

理由はある人物に会うため。

といっても、昨日知り合ったばかりなのだが……。

コンコンコン、と扉を三回ノックする。



「どうぞ」



扉の内側から少し低めのソプラノヴォイスがおれのノックに対して応答する。

それを聞いてからおれはドアノブを捻り、生徒会室へ足を踏み入れる。

生徒会室の中は簡素の一言に尽きる。

長テーブルにパイプ椅子、書類を収納する棚。

それくらいしかなかった。

その長テーブルの上座に座るのは白髪に碧眼の美少女。可愛いと言うより綺麗という言葉の方が似合う少女。それが、生徒会長、(たちばな)鳴神(なるかみ)だ。

橘の名で気づいた人もいるかもしれないが、彼女は何をかくそう我らが担任、橘雨水先生の妹だ。

そんな鳴神会長とおれが出会ったのは昨日、黒い槍の少女と戦った場所だった。

気絶していた二人を保健室に連れていくよう指示してくれたのも鳴神会長だし、鳴神会長は黒い槍の少女の後始末をつけてくれた。

どういう処断を下したかは分からないが、黒い槍の少女はどうやら生徒会の人間だったらしく、それならばと彼女に黒い槍の少女の処遇を委ねたのだ。



「月岡くん、さっそく来てくれたのか」



「ええ、まあ。彼女のその後も気になりましたし、なりよりおれの計画の助けになるような情報を握っていると、会長自らが仰ったので」



「ふふ、そうか。……あぁ、すまない。何もないが、座ってくれ」



鳴神会長に言われたので、手前のパイプ椅子に腰かける。



「それで、まずはなにから聞きたい?」



こちらに顔を向けた鳴神会長は新しい玩具を見つけた子供のような表情でおれに問い掛ける。



「じゃ、まずは彼女の処遇について、ですかね」



「いいだろう。あの者は内の生徒会でもかなりの問題児でな、少し灸を据えるため、茶道部の方に飛ばしておいた」



ああ、いかにも礼儀のなってない彼女には居心地の悪そうな部活ですもんね。



「それで、本当に聞くのか?<夢楽園(ファンタジスタ)>のことを。私がいうのもなんだが、アレは別格だぞ?それこそ 昨日(さくじつ)君を襲撃したアリスなどとは比べものにならん」



黒い槍の少女はアリスというのか。なんか似合ってないな。

そう言えばあの娘の能力は最後まで詳細が分からなかった。

何もない空間から突然現れたことから空間干渉系の能力とは思うが……なんか引っ掛かるんだよなぁ。

何故だろうか?

まあ、取り敢えずこの話は置いておいて。



「構いませんよ。それだけ、彼女も別格ってことです」



別格には別格。

古来よりそうと相場が決まっている。


春日木にはこの高校最強の中二病患者、<夢楽園(ファンタジスタ)>と戦ってもらう。

これが、おれが取れる現時点での最高のアクションだ。

覚悟しろよ、春日木?

おれはちっとスパルタだぜ?


















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