第十回 初めての登校
「よおドク太〜、おはよ〜」
「ワゥンッ」
登校への何の変哲も無い歩道を歩いているとき。遅れて後ろからドク太君がやってきた。挨拶をしたのは律佳ちゃんだ。
「特に…変わった装備をしていると言うわけではなさそうですね…」
私は医療犬と言われるドク太の姿を見たが、どう見ても体に名札を巻いているただの犬である。
「いや、装備とかそうゆうのないですから」
耕輔君が苦笑いして答えた。
「え!?じゃあどうやって重たい荷物運ぶんですか!?」
「いや、まんまだよ、まんま」
律佳ちゃんが一さし指を立てて言う。
「まんまって…」
つまりそのまんまってこと?…えー!それじゃ夢がないじゃない!
「はは、夢も希望もないよー?まんまだもん」
って見透かされてるー;さすが律佳ちゃん。
「じゃあドク太君が背中に機材を乗せて、まんま運ぶってことですか?」
「そゆこと。怪力犬だよこいつぁ」
と言って律佳ちゃんはドク太君の頭をぽむぽむと撫でる。
…ぽむぽむて…。
まあ確かに先日、ドク太君は少年が蹴ったサッカーボールを蹴り返していたなー…
と言うわけで学校についた。
外から見た学校は至って平凡だったけど、果たして中身は…
っていうか律佳ちゃんと言う生徒がいる自体、イレギュラーだ。やはり変な生徒がいたり変なルールが存在したりするのだろうか…?
ゴクン(唾飲み音)
教室が静かに近づいてくる…その一瞬一瞬はまさに私にとってスローモーション…。
心臓が高鳴り、なんとなく息も詰まってくる…
高校生活がいよいよ始まるのだ。と言う緊張感だけではない。この教室の中に、
宇宙人や
○来人や
超○力者がいたら
私はどうすればいいのか!!;
…いや、既にそれらしきものは、いるッ!;
「ん?何?」
律佳ちゃんは小首を捻った。
そして、とうとう教室の前まで来る。途端に音が耳から途絶えた…
…この扉を開いたら…それでお終いだから…この無意味な緊張感とさよならだから…!!
「っ!」
私は意を決して、教室の扉を開いた!!
が、教室に入った途端に全身に衝撃が!!
しまった!対人地雷かッ!!;
そのまま私の体は木っ端微塵に粉砕され、あとかたも…
ってあら?
ぼんやり視界を開けると、眼前には廊下が見えた。
あ、下向いてるのか私。
ゆっくり顔を上げると、眼前には教室。そしてさらにその前にはちょっと大きい美形の男子。
どうやら対人地雷ではなく、この男子生徒にぶつかったようだ…。
「ふぅ…対人地雷ではなかったか…」
目の前の美形男子が呟いた。
「ち、違います!誰が対人地雷ですか!」
それを言うならお前が対人地雷だ!だって男だし!(?)
「い、いやすまん。後生だ。本当にすまない」
美形男子は立ち上がりながら抑揚の無い声で私に謝って来た。
声的に本当に謝ろうと思って謝ったのか微妙だが、まあ初対面だし…余計なことは言わないでおこう。
「い、いえ、私こそごめん。前見てなくって…」
「おもいっきり目ぇつぶって開けたもんね」
律佳ちゃんが私を指さしながらケラケラ笑った。
…律佳ちゃん!余計なことをッ!!;
「そうか。なら自業自得だな」
ってこの野郎!;後生とか言い腐ってからに!?
「は、はぁ、すいません…」
「次からは気をつけろ」
「は、はい…」
律佳ちゃんのせいで、完全に私のミスで相手に迷惑をかけたことになってしまった…。
あのイケメン野郎もおかしいケドさ!!私女の子だよ!?
あ、ちなみにこの後少女マンガ的な発展は、絶対、ない。あんなの好みでも何でもないから!?
そんなわけで、登校初日の初教室を入る前、とんだ災難を受けてしまいました。
それにつけて、とってもお腹減ってるし〜…。
何かもう、引っ越したいorz