1-7 無能な付与術士は角兎と戦う
初めての戦闘シーンです。
飛び出してきたのは2羽のウサギだった。
といっても、ただのウサギではない。
大きさが僕の腰ぐらいまであるうえに、額に20cm近い角が生えている。
「ホーンラビットね」
カメリアさんが呟く。
角の生えたウサギだからホーンラビット。
そのままの名前である。
だからといって、舐めて良い相手ではない。
「【エンチャント:スピード】」
全身にオーラが纏う。
体が少し軽くなった気がする。
(ヒュッ)
1羽のホーンラビットが襲い掛かってくる。
だが、その動きは直線的で簡単に読むことができた。
あっさりと回避に成功する。
「っ⁉」
避けられたことに驚愕した様子のホーンラビット。
おそらく僕を見て、格下だと思っていたのだろう。
わからないでもないが、ウサギにすら格下と思われることに少しショックを受けてしまう。
「キュッ」
可愛らしい鳴き声とともにさらに追撃してくる。
行動はまったく可愛らしくない。
あんな角が直撃すれば、かなり痛いはずだ。
だが、それはあくまで直撃すればの話である。
「キュッ」
ホーンラビットの攻撃はまったく当たらない。
角の攻撃部分は先端のみ──攻撃自体は直線的なのだ。
つまり、その向きとタイミングさえ分かれば、読むことはたやすい。
回避行動に専念すれば、僕でも対処は可能なのだ。
(ドンッ)
僕の背中に衝撃が加わる。
近くにあった木の幹に背中をぶつけてしまう。
「キューッ」
チャンスと思ったのか、ホーンラビットが突撃してくる。
(ヒョイッ)
(グサッ)
だが、その角が僕を貫くことはなかった。
代わりに木の幹に深々と突き刺さっていた。
「キュウッ!」
回避されたことに怒った様子のホーンラビット。
僕に向かって文句を言ってきている。
だが、すぐに自分の状況に気づく。
勢いよく突進したせいで、自慢の角が深々と刺さっている。
つまり、動けなくなっているのだ。
「キュ・・・・・・」
まるで媚びるかのように可愛らしい鳴き声を出す。
自分の状況を理解し、すぐに行動できるのは素晴らしいことだと思う。
だが、流石に襲い掛かってきた相手に情けを掛けるほど僕も優しくはない。
「【エンチャント:パワー】」
別の色のオーラが体を纏う。
そして、ホーンラビットに近づき、背後から首のあたりを抱きかかえる。
(ゴキッ)
鈍い音が鳴り、嫌な感覚が伝わってくる。
ホーンラビットの体はだらんと力なく垂れ下がっていた。
それでも角は突き刺さったままだった。
「意外と早く終わったわね」
僕の様子に気がつき、カメリアさんは話しかけてくる。
彼女はとっくにもう一匹のホーンラビットを倒していたようで、すでに血抜きをしている最中だった。
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