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1-6 無能な付与術士は疑問に思う


 準備を済ませ、すぐに出発した。

 近くだったら急ぐ必要もなかったが、買い物できる場所まで意外と距離があるらしい。

 カメリアさんの家はポツンと一軒建っているだけで、周囲に他の建物もなかった。


「はぁ、はぁ」

「大丈夫?」


 息を切らしている僕に心配げに声を掛けてくる。

 そんな彼女はまったく呼吸を乱していない。

 同じ速度で進んでいるのに、ここまで差が出るのか。


「大丈夫、です」

「病み上がりなんだから無茶は禁物よ。休憩するわ」

「・・・・・・はい」


 やせ我慢をしたが、無視をされた。

 看病された手前、そう言われると断れなかった。

 近くの木を背にその場に座り込んだ。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


 水を入れたコップを手渡される。

 先程のお茶と違い、新鮮な水である。

 準備の段階で確認している。


「ぷはっ」


 一気に水を飲むと、喉が潤うのを感じる。

 相当乾いていたようだ。


「カメリアさんは背負っている剣で戦うんですか?」


 少し休んだおかげで息も整った。

 少し気になったことを質問する。

 準備の際、彼女は大事そうに剣を背負っていた。

 それだけで特別なものであることがわかる。


「いや、この剣は使わないわ」

「え?」


 だが、予想外の答えが返ってきた。

 そんな僕の反応に彼女は小さく笑う。


「今の私が使うのはこれよ」


 彼女は腰から小さな武器を取り出す。

 小さい両刃──いわゆるダガーナイフと呼ばれるものだろう。

 背負っている武器に比べるとかなり心許ない。


「背負っている剣があるのにですか?」


 純粋な疑問を投げかける。

 別にダガーナイフを否定するつもりはない。

 例えば、大きくて動きが制限されるような場所なら、小回りのきくダガーナイフの方が使い勝手はいいだろう。

 だが、ある程度の空間がある森の中であれば、後ろの剣でもあまり問題はないように思う。


「癖で背負っちゃうのよね」

「え?」


 彼女が小さく何か呟くが聞こえなかった。

 思わず反応するが、彼女がそれに答えることはなかった。


(ガサガサ)

「「っ⁉」」


 近くで何かが動く音が聞こえる。

 即座に反応して構える。

 といっても、僕には戦う術はない。

 攻撃してくる相手から逃げるためである。


((バッ))


 近くの茂みから小さな影が飛び出し、僕たちに襲い掛かってきた。







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