1-5 無能な付与術士は提案をする
「ふう、とりあえずはこんなものかな」
一時間後、生まれ変わった部屋を見ながら汗を拭う。
少し掃除しただけでも部屋の中が明るくなった気がする。
もちろん、完璧に掃除できているわけではない。
だが、ひとまず過ごす分には問題ないだろう。
「これが私の部屋?」
生まれ変わった部屋を見て、カメリアさんが驚愕する。
先程とは明らかに違うのだから、当然の反応だろう。
「ユウって、魔法使いなの?」
部屋を見渡し、彼女はキラキラした目をこちらに向ける。
自分にできないことに尊敬してくれるのは嬉しいが、そんなに大したことではない。
そもそも剣と魔法の世界の人間に魔法使いと思われるのはどうなのだろうか?
「小さい頃から家事の手伝いをしてたので、これぐらいはできますよ」
「う・・・・・・」
僕の言葉に彼女は申し訳なさそうな表情をする。
もしかすると、彼女は家事の手伝いなどしたことがないのかもしれない。
「家庭の事情とかもありますから、別に手伝いをしてなくてもおかしくはないですよ」
「そ、そうよね」
「ですが、一人暮らしをしているなら、ある程度は出来るべきですよ」
「うぅ」
上げてから落としてしまった。
こんなつもりではなかったのだが、思わず本音が出てしまった。
「近くに買い物が出来る場所はありますか?」
「あるけど、どうしたの?」
申し訳ない気持ちになり、話題を変える。
質問の意図がわからなかったのだろう、彼女は聞き返してきた。
「先程の掃除で多くの食材を捨てました。そもそも使える食材がほとんどありませんでしたが・・・・・・」
「うぐっ」
彼女は言葉を詰まらせる。
先程のお茶の件もあり、否定できなかったのだろう。
「料理を作るのに食材が必要です。なので、買い物に行きましょう」
「え? 作ってくれるの?」
落ち込んでいた彼女の表情がまた変わる。
完全に予想外だったのだろう。
僕としては当然のことだと思っていたが・・・・・・
「今の状況もわからないので、当分お世話になるでしょう。その見返りとして家事ぐらいはさせてもらいますよ」
「こちらとしてもありがたいけど良いの?」
いきなりの状況に彼女は戸惑っている。
まあ、見知らぬ男が世話になるから家事をすると言っているのだ。
この反応が自然である。
だが、こちらには他にも理由がある。
「正直、こんな一人暮らしをしている女性を放っておけないです。恩人がゴミ屋敷で野垂れ死ぬのは嫌ですからね」
「・・・・・・」
指摘に黙り込んでしまう。
言い返そうにも今までの状況のせいでそれもできないのだろう。
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