第一章 プロローグ 怪物に追いかけられた末に
新作を書いてみました。
ママヒロインの作品を読んでみて、年上好きとして書いてみようと思いました。
一応、今作のヒロインは一回り上ぐらいですが・・・・・・
「はぁ、はぁ」
口から苦しげな息が漏れる。
ずっと走っているせいか全身に痛みがある。
だが、止まるわけにはいかなかった。
「グオオオオオオオッ」
「っ⁉」
背後から雄叫びが聞こえてくる。
ちらりと振り向くと、人間の数倍はある巨体の怪物が追いかけてきた。
通路自体はそこまで広くないのでそこまでスピードはないが、なまじ巨体であるため思ったより距離は離れていない。
少しでも止まれば、追いつかれてしまうだろう。
(シュッ)
「くっ⁉」
左肩に熱を感じ、体がフラつく。
視線を向けると、赤い棒状のものが伸びていた。
だが、すぐに後ろの方に消えていった。
あの怪物が体の一部を伸ばして攻撃してきたのだろう。
だが、そんなことを確認している場合ではない。
地面をしっかり踏み、倒れずに駆け出した。
しばらくして、開けた場所に到達した。
洞窟の中なのに巨大な滝があり、大量の水が落ちていく。
余裕があれば観察してみたいが、そんな時間などあるはずがない。
「はやくっ!」
女性の声が聞こえてくる。
吊り橋の先に数人の人たちがいた。
その中のリーダー格の女性が真剣な表情で指示を出している。
責任感の強い彼女だからこその行動だろう。
彼女の言葉に従って、吊り橋を渡り始める。
「グオオオオオオオオッ」
怪物も開けた場所に出てきた。
先程まで窮屈な場所にいたせいか、その声には怒りの感情を感じる。
その感情の向かう先は当然身近な敵だろう。
つまり、僕である。
(グラッ)
「ぐっ」
吊り橋を揺らされ、バランスを崩す。
手すりを掴んで留まるが、下を見てぞっとする。
巨大な滝から落ちた大量の水が吊り橋のかなり下で急流になっている。
あんなものに巻き込まれれば、ひとたまりもないだろう。
「くっ」
手すりを掴んだ状態で少しでも前に進む。
吊り橋の上ならば、通路と同じようにあの巨体では追ってくることができないはずだ。
だからこそ、揺らすという姑息な手段に出たわけだ。
下に落ちないようにバランスを取れば、追いつかれずに向こう岸に渡れるはずだ。
何度も揺らされながら進み、吊り橋の9割ぐらいまで来ることができた。
これであの怪物に追われる恐怖から解放される──という安堵の気持ちが思い浮かぶ。
(ブチブチッ)
「っ⁉」
不吉な音が聞こえた。
進むべき道がなくなり、僕の体は宙に投げ出されていた。
突然の出来事に頭がついていけず、視界に映る光景がスローモーションになっていた。
指示を出していた彼女の悲痛な表情が印象的だった。
だが、今の僕にどうこうすることはできない。
(ザバアアアンッ)
勢いよく着水し、急流に僕の体は飲み込まれた。
泳ぎが苦手なわけではないが、例え得意でもこの流れでは自由に泳ぐこともできない。
(ガンッ)
「っ⁉」
頭部に強い衝撃を受けた。
その瞬間、僕の視界は一気に暗くなった。
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