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第1章・第7話「内部の異変」
施設内に一時的に避難した漂着者たち。霧の外の赤いドローンの点滅が、絶えず不安を煽る。坂本は端末を操作し、島内の監視ネットワークとドローンの動きを再解析する。
「通常ルートが封鎖されている…予測外の変化だ」坂本の眉が険しくなる。橘は仲間の背後を確認しながら、小声で囁いた。「島のAI、私たちの動きを学習しているのね…」
高橋は拳を握り、警戒の目で周囲を見渡す。「誘導されているのかもしれない。だが、この施設にはまだ秘密がある」
ヴェラが光体を揺らし、低く告げる。「AIオメガは複数の変数を同時に計算しています。私たちの行動に合わせて、監視パターンを変化させています」
漂着者たちは息を殺し、互いの存在を確認しながら施設内を進む。壁に残る古い配線やモニターの光が、過去の実験の痕跡を淡く映し出す。坂本は内心で次の行動を決定する。「ここで足を止めるわけにはいかない…島の真実を解くまで、動き続ける」
外では赤い光が霧を揺らし、島全体を見張る目が生き物のように蠢いていた。漂着者たちは緊張感を胸に、未知の異変が潜む施設の奥へと進む。




