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1-3

 ジェイドたちがラバメの転移陣から途中休憩を挟みつつ、3つの転移陣を経由して目的地のメロリに到着したのはすでに日が沈んだ後だった。


 傭兵ギルド内の転移陣から一歩踏み出すなり、ナイジェルは大きく欠伸をした。涙目になりながらジェイドの肩をポンポン叩いて労ってくる。


「やっっと着いたなあ! お疲れ、ジェイド」

「ああ」


 ジェイドは軽く頷いて、足早に転移陣のある部屋を出た。

 転移魔法を立て続けに何回も使ったせいで、かなり魔力が消耗している。一秒でも早く帰宅して休みたかった。


「つくづくジェイドが転移魔法を使えて良かったぜ。ラバメからここまで、魔動車だと五日間はかかるもんなあ」


 魔動車は読んで字のごとく、魔力を動力源として動く車で、魔力を持つ者は自身で車に搭載された魔石に魔力を供給できるが、そうでない者にとっては決して安価ではない魔石を都度購入し、交換しなくてはならないため、よほどの金持ちでない限りは魔動バスや魔動列車などの公共の交通機関を利用する。


 ちなみに、ナイジェル曰く、魔動車持ち=エリートなので、女性をデートに誘う時は「俺の魔動車でドライブしない?」と言うと成功する確率が高いらしい。ジェイドは女性を軽々しく口説かないのでどうでもいい知識だが。


 傭兵ギルドがある首都メロリは、広大な国土を誇るフゼンメール共和国の中央部に位置している。今回魔物の討伐依頼があったのは、国の西端にある辺境の地だったため、魔動車や魔動列車ではうんざりするほどの時間がかかる。だからこそ、ジェイドが転移魔法での移動を選んだのだった。


 二人は傭兵ギルドの二階にある転移陣から一階の受付に移動し、依頼完了の報告と素材の一部を売却する。


「おかえりなさい、ジドニールさん、パーカーさん。 討伐お疲れ様でした!」


 カウンターに座っていた受付嬢のひとりであるリリアがにこやかに二人を出迎える。大きな榛色の目と栗色の髪をしていて、その清楚な見た目がギルドメンバーから絶大な支持を得ているらしい。


「リリアちゅわん!!」


 ナイジェルは目当ての令嬢が担当してくれるとあって上機嫌だ。カウンターに走り寄ると肘を突いて身を乗り出す。


「君に会うために、急いで帰って来たんだよ! どう、今夜俺と食事でも」


「ごめんなさい、パーカーさん。今夜は他に約束があるんです。依頼達成を確認しますので、討伐したジャイアントボアの魔核をご提出願います」


「ううっ、つれないリリアちゃんも好き……♡」


 頬を染めながら何やら呟いているナイジェルを横目に、ジェイドは鞄から自分の分の魔核を取り出した。掌程度の大きさの赤黒い石のような見た目で、カウンターに並べるとゴトゴトと音を立てる。


「それではお預かりしますね。少々お待ちください」


 リリアはジェイドとナイジェル二人分の魔核を丁重に籠に入れると、カウンターのすぐ後ろに置いてあった魔道具の方へ向かった。


 魔核を専門の魔道具で分析すれば、種族や性別、年齢、魔力量などを判定できるため、討伐対象と差異がないか調べているのだ。


 数分後、リリアは籠を抱えてカウンターに戻ってきた。


「はい、間違いなく、討伐依頼の出ていたジャイアントボアの魔核ですね」


 リリアは魔石板に報告内容を入力していく。ジェイドとナイジェルが内容を確認し、署名して完了だ。


「こちらが報酬となります。今回の依頼は魔物の討伐のみでしたので、採取した魔核はお二人に所有権がありますが、買取はご希望ですか?」


「ああ。俺は全部買取で頼む。ついでに買い取ってもらいたい素材があるんで、それも」


「あっ、俺も俺も!」


「承知しました。それでは、報酬と買取の合計金額をギルドカードに振り込んでおきます」


 討伐したジャイアントボアの数ははかなりの数だったので、自分たちで食べたり使ったりする分を除いてもそれなりの金額になった。


「またよろしく頼む」

「はい、こちらこそよろしくお願いします、ジドニールさん」


 ジェイドはギルドの出入口へ向かって踵を返した。


「じゃあね、リリアちゃん! いつかデートしようね!」

「お二人とも良い夜をお過ごしください」


 背後でナイジェルが「うわ~ん、ジェイド、俺スルーされたよ!」と嘆く声が聞こえるが、無視して建物を出た。

誤字脱字は見つけ次第修正していきます。

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