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【第63話】桃介

「それでジーク王子はご無事でしょうか?」

与一将軍がローマンに尋ねた。


「まだ分からないですが、クルミ様を信じるしかありません。それよりこちらの対応、明日の出席はいかがしましょうか?」


夜も遅くに訪問してきて、緊急事態を知らせてくれたローマン。与太郎はすぐに主要な者たちを招集した。


皆の視線が与一将軍、与太郎をチラチラとむけられる。


「明日は欠席するに決まっているだろう!罠があるところにアリスを送るなどありえん。」

ドレドラスが当然とばかり発見をした。


「それには賛成ですが、その後相手がどう動くのかも心配です。」

喜介がドレドラスをなだめている。


「ドレドラス気持ちは分かるが落ち着け、避難民の街が襲われたということは竜神王国の兵達もそちらに向かうだろう。富士の国と中間に構えてどちらでも対応できるようにしていたからな。」

セオドがドレドラスをなだめながらも事態が深刻な状態だと説明する。


こちらの後ろだての竜神王国の軍隊が動かされてしまったのだった。


「この隙をジャイブ大臣が狙わないはずがないということか。」

与一将軍は考え込む。


「親父、考えても仕方がない。全員この国からの撤収準備!いつ攻撃されるか分からない状況だから注意しろ!」


「仕方ないか、党首の言う通りに準備を開始しろ!」


「ハッ!!」

一族の者達がすぐに行動を開始した。


この与太郎の判断が、被害を最小限に抑えることになったのだった。



鈴多も喜介の指示で、移動の準備を開始した。父と母には桃介を伝令にだして足と手が不自由な父の手伝いをお願いした。


志津婆さんは、食料や荷物を荷台に積んでいった。


「わたしは、先に荷車を引いて移動を開始しますじゃ。」

イサカリ商店でもらったものを荷車に半分は載せたままにしていたのが助かった。志津婆さんの指示だった。

年の功だと本人は言っていた。


鈴多は久遠と陽向を呼びに行った。

ギルドの仕事で、夜間警備の仕事をしていたのだった。陽向は久遠に背負わせてついて行った。夜間警備と行っても陽向にしたら夜の散歩と同じだった。



科学の国トルゴラムの暗殺部隊が闇夜に紛れて与一将軍の屋敷に向かっていた。その数300名。いずれも精鋭のみだった。


隊長のワーグルは通信機を使い指示を出していく。


「この先、ギルドに雇われた冒険者たちの見回りの拠点がある。まずそこに2部隊で攻撃。殲滅しろ。」


1部隊は10名での構成になっている。

久遠がいるところに20名の暗殺部隊が向かったのだった。


「与一族の支持する主要な者たちを各個殲滅していく。」

ワーグルは、場所を次々に指示していく。その中に鈴多の親も含まれていた。


桃介は鈴多の親が住む家に近づいていた。家から物音がした。


隠れながら、慎重に進む。鈴多の父と母には良くしてもらっていた。自分の両親は早くに亡くなってしまったので親をあまり知らなかったが優しかったのは覚えている。


鈴多の使いで、家に行くとお菓子や、洋服をくれて桃介も家に行くのは好きだった。


部屋の窓から、覗き込む。そこには血まみれで横たわる鈴多の父親がいた。

そして、今鈴多の母も殺されようとしていたのだった。


「やめろ!!」

桃介が部屋に飛び込んだ。部屋に落ちていた鈴多の父親が、使っていた刀を拾って斬りかかる。


兵士は、あっさりと吹き飛ばしトドメを刺そうとした。


鈴多の母親が飛び出して桃介をかばう。

「グッ 桃ちゃん逃げて!」

胸を貫かれて、口から血を吐きながら桃介を突き飛ばした。


「嫌だ!!」

両親が亡くなって、初めて両親と同じような母親の、温かさを感じた人を見捨てることは桃介にはできなかった。


非常にも母親に止めを刺そうとした兵士の剣を体で受け止める。


「ウゥ」

桃介の胸を剣が貫く。致命傷だった。

倒れ込む桃介に鈴多の母が最後の力を振り絞り抱きしめる。


「大丈夫だよ。最後まで一緒だからね・・・」

そして桃介が先に亡くなった。鈴多の母は願った。

「どうか神様、この子が生まれ変わったら幸せな人生にしてあげてほしい・・・」

大粒の涙を流しながら息を引き取った。

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