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【第41話】与一将軍

昨夜は、アリスの最後で盛り上がった。アリスの本名は、智世(ともよ)と言うことをライゲン将軍が教えてくれた。


ドレドラスがつけてくれた名前も捨てられず、合わせることにした。


クルミはアリスの気持ちを尊重することにした。そして皆も受け入れてくれたようだった。


今日は、祭りの2日目だった。

夜は盛大に食事会を行う予定。お披露目会はまた明日最後に行うことにした。


慣れないことでクルミも疲れたからだった。ミン宰相は、部屋にこもって出てこなかった。


「うぅぅー」とうめき声が聞こえるとのことだけれどそっとしておこう。昨日の醜態がこたえたようだった。


今日は、アリスと一緒にお店を回ろうと思って捜していたら与太郎に見つかった。


「昨日は盛り上がったようだな?」


「まぁね!」

昨日は警備で見れなかったようで、少し不機嫌だった。


喜介が与太郎の話を遮る。

「与太郎様、今はそれどころではないでしょう!」


何か話したいことがあるらしい。


「何かあったの?」

富士の国で何かあったのかと思ってしまった。


「あったというか、来たって感じだな。」


「えっどういうこと?」

与太郎は何か言いにくい感じだったので、喜介を問い詰めた。


「富士の国からの使者が来ており、クルミ様、アリス様に会いたいとのことです。お願いできないでしょうか?」


「いつの間に?」

と質問したが、昨日は与太郎が警備をしていた。侵入するのも簡単なはずだよね。


少し黙る与太郎。本人としてもあまりよくないことだと思っているみたいだ。


「まぁいいよ。まずは、わたしだけで会うってことでもいい?」


「あぁ。いいはずだ。しかもクルミの為にもなると思うぜ。」


与太郎が答えた。何のことか分からないが会うことにした。


与太郎が与えられている部屋に案内された。


「コンコン。喜介です。入ります。」


そうしてドアを開けた。


そこには与太郎に似た初老の男性が座っていた。顔を見て予想はついた。


「聖女様。わたしは、そこにいる与太郎の父で与一と申します。」


丁寧な挨拶をしてくれた。

与一将軍。鎖国派で富士の国を仕切る2大勢力の一つの将軍だった。


「わたしは、イサカリ クルミ。聖女なんて呼ばなくて名前のクルミでお願いね。」


「イサカリ・・・・ 疾風勁草流を使うとは本当ですか?」


やっぱり与太郎は知らないみたいだけど、イサカリの名前は残っていたみたいだね。とクルミは思った。疾風勁草流の流派を極めた一族だけに与えられるものだった。


「少し手合わせを!」


そういうと、刀を振りかざした。

クルミは、頭の飾りだったカンザシで刀の軌道をほんの少しずらして空振りにさせた。


その好きにカンザシを首もとに当てた。


「殺気がなかったから、止めたけど次はないわよ。」


「参りました。」


静かに刀を直した。

「親父がこうも簡単にやられるとはな。」

与太郎が驚きの表情だった。

喜介も同様だった。


「やはりクルミ殿は、剣帝様の血筋でしょうか?」


「さぁどうでしょう。」

クルミは焦った。血筋どころか本人だなんて言えなかった。


話を変えるため、クルミは質問をした。

「それで、ここに来た要件を聞かせて。」


「まぁそれが目的ですから、今は詮索はしませんが、いずれ教えていただければと思います。」


これは諦めてない感じだった。


「まず、智世様を返していただきたい。そして街の民も富士の国へと当然戻していただきます。」


「親父! それは・・・話が違うだろ!」与太郎が激怒している。


与太郎は、知らなかったということかな。まぁ嘘が下手そうだからね。


「それが本音なの?」

クルミは違和感を感じていた。この話しなら1人で会いにくるのはおかしいと思ったからだ。


「えぇ。開国派シャイブ大臣は考えているでしょうな。」


やっぱりか、食えないジジイだなぁと思った。


「それで、あなたはどうなの?」


「そうですなぁ。まず、智世様に合わせてもらえないでしょうか?」


沈黙が続いた。このままではどうしようもない。


「分かったわ、でも武装は預からせてもらうわね?」


「わかりました。」素直に応じる与一将軍。


「与太郎、刀を預かってて」


「おれでいいのか?」

まぁその考えは当然だった。与一の息子だから。


「あなたは敵じゃないでしょ?」


クルミの発言に喜んでいる与太郎。


「ちっバカ息子が。」

与一将軍は、与太郎に刀を渡す。


メリットに、妖精交信でアリスを連れてきてもらうようにお願いをした。


しばらくして、アリス達が到着する。メリットとアリス、そして、ライゲン将軍だった。アリスの護衛でそばから離れなかったのだ。


ドレドラスは一度、竜神王国に報告と追加の物資を取りに戻っていた。


先に反応したのは、ライゲン将軍だった。


「与一将軍! 」

アリスの前に立ち、睨み付けた。

まぁ敵の大将が1人できているのだからそうなるだろう。


「ライゲン将軍か、そなたの忠誠心も変わらずだな。」


2人は顔見知りのようだった。


「それで、アリスを約束通り連れてきたわよ。何が目的なの?」


「智世様と呼ばしていただいても?」アリスに問いかけた。


「はい。」

アリスは返事をした。父や母を追い込んだかもしれない人物だ。

緊張しているようだ。


「智世様、この与一はあなたの母親、智利(ともり)様よりあなた様の助けになって欲しいと産まれる前にお願いをされておりました。

なので智世様の願いを1度だけ聞きます。何なりとご用命を。」


周りは唖然としている。

「信じられるか、大将軍、智利様を追い込んだ要因はお前にもあるではないか!!」

ライゲン将軍が叫んだ。


ライゲン将軍を与一将軍は、無視した。まっすぐに智世を見つめていた。


「それなら、この内戦を止めてくれますか?」

アリスがお願いをした。


「承知。与一がこの命の限り内戦を納めます。」アリスに誓った。


そして、クルミの方を向き話し始めた。

「クルミ殿、あなたが富士の国へ来られたのは神剣草薙が目的なのでしょう?

あなた程になるとそれに似合う武器も必要なはずです。疾風勁草流を本当に、扱えるのであれば使えるでしょう。」


「どこにあるか知ってるの?」


「シャイブ大臣が場所は知ってるかと。」


「2週間後、和平交渉の場を作ります。なので富士の国までお越しください。」


「わかりました。」

アリスが即答した。周りは何か言いたげだったが仕方がない。


「では、2週間後。」

与一将軍は、最後にアリスに優しい目を向けていた。

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