【第39話】感謝祭
竜神王国、ラルセット公国の治安維持での出兵で戦力差は縮まった。
相手が2万に対してこちらが1万五千。
これで膠着状態になるとクルミは予想していた。
案の定。相手の進軍は遅くなり、止まった。
これで交渉の余地もあると思う。
しばらくは様子になりそう。
「しばらくは大丈夫だから、本格的に街を作りましょう!!」
指示を出していたった。
優先したのは、やくそうの栽培。
そして、洋服屋だった。
もっと優先すべきことがあるかもしれないがこれはクルミが譲れなかった。
この街には、女性も多くすんなり受け入れられた。女性達には、クルミが今まで買った服を見せて、作るようにお願いをしたのだった。何かをしていた方が気が紛れるのかもしれない。
膠着状態から数日が経過した。
「クルミお姉ちゃん!」
アリスが駆け寄ってきた。
元気になったみたいでよかったと思ったのだけれど、アリスの格好を見て唖然としてしまった。
「かわいい....」
着物を着せられていて、しかも古いタイプではなく西洋の服との融合のような物だった。
しかも髪もかんざしをして、アレンジされていた。
「いい感じだろ?」
与太郎が話しかけてきた。
「何で、あんな服を着てるの?」
「送られてきたものも多いけど、おれも用意した。」
少し怒りながら、与太郎を問い詰めた。
富士の国と交渉に行った。ライゲン将軍と与太郎。ライゲン将軍はまだ富士の国の城に残ったが、与太郎は先に戻ってきたとのこと。
その時に、こちらに大将軍の娘がいると言うことがしれわたり、色々と貢ぎ物を預かってきたとのこと。
「何でアリスの正体がばれたの?」
与太郎の副隊長が、青い顔をしている。
まさか、与太郎が原因?
そのまさかだった。
「ちょっとアリスの嬢ちゃんには悪いことしたからなぁ。少し何か出きることないかと、城下で一番の洋服屋に頼んだらそこから漏れたみたいだな。」
はぁ 副隊長の顔がますます悪くなっていく。
「内緒だと言ったんだがなぜだろうなぁ。」
副隊長がとうとう土下座して謝っている。
「ばれるでしょ!!」
軽く頭を殴り付けた。
「グォ 何をする!。」
メリットもアリスも呆れて見ていた。
「ばれるのは時間の問題だったからいいとして。わたしのは?!」
「クルミさん!!」
メリットが突っ込んだ。
しかしクルミとしてはそこが一番重要だった。
「あっ!!」
与太郎が忘れてたみたいな顔をしてる。こいつに少しでもときめいたのは間違いだった。
「クルミ様、もしよろしければこちらにご用意をしております。」
副隊長、名前は喜介と言う。人の名前を覚えるのが苦手なクルミが一発で覚えた。
「今回のお詫びにと、アリス様のデザインと似たものをご用意いたしました。」
「ありがとう!!」
思わず喜介に抱きついてしまった。最近はストレスがたまっていたので、テンションが上がってしまったのだった。
「喜介!! 貴様!!」
与太郎が怒っている。喜介は、焦っていた。
喜介が叱られているのを横目に服を見て回った。
「クルミさんこっちもいいかも!」メリットが話しかけてきた。
ちゃっかり自分も物色している。
そこに、親衛隊のローマン、フリードも加わった。
「この生地はいいですね。しかしこれを少しこうアレンジして。」
「胸元は大胆にだな。」
「いいね、いいね。」
みんなノリノリになってしまった。
そして、急遽試着会が始まるのだった。
「お手伝いします。」
タマ婆さんが申し出てくれた。
アリスの服を着せてくれたのもタマ婆さんだった。
また、周りに女性達も集まってきた。
クルミは、みんなにも着てもらうことにした。
喜んでいるようだった。
「それでしたら、今日は日頃の慰労もかねて祭りを行いましょう。」
突然、後ろからミン宰相が話しかけてきた。今回はいつもの老人の姿だった。
カーグがミン宰相を交渉になるだろうと派遣してくれたのだった。
クルミは、凄い勢いで近づいてきた。こっそり話しかける。
「お姉様!もちろん参加しますよね?本来の姿なら誰も気づかないでしょ?」
クルミの迫力に押されてしまったのだった。
「はい.....」
「それじゃあ今日は楽しみましょう!!」
「おーー!!」
なぜか多くの男性から歓声が上がった。
みんなが準備を始めた。
「クルミお姉ちゃん。ちょっと話が....」アリスが声をかけてきた。
われに変えるクルミ。
「何?あっちではなそうか?」
頷くアリス。
人が少ないところに移動した。
アリスからは、これからも一緒に旅を続けたい思いもあるけれど、この国を何とかしたいとも思っているようでどうしたらいいのか悩んでいるようだった。
まだ10歳のアリスには難しい問題だった。
「全てわたしにまかせといて!」
クルミも遠い子孫のアリスをそのままにしておくことなど出来なかった。
「ありがとう。それでも本当のわたしの名前を聞いたの。聞いてくれる?」
「なぁに?」
アリスは本当の名前を告げた。
これからこの名前で生きていく決意をしたみたいだった。