【第38話】アリスの心
ライゲン将軍が先に着いた。
「何かご用でしょうか?」
「アリスのことなんだけど、何か思うところがあるんじゃないの?」
「あの...」
少し考え込んでよう、話を始めた。
「大将軍の奥様に非常に似ていたものですから。幼い頃より奥様を知っておりまして先代大将軍のお子様で、わたしも護衛として接しておりました。」
「亡くなった大将軍は、婿養子みたいなものなの?」
メリットの発言に、微妙な表情になるライゲン。
「そう言われるとそうですが、実力もあり慕われていたので、周りも認めておりました。」
「何で亡くなったの?」
「それは、魔物の国ナオルグの進行を食い止める為に先陣で陣頭指揮をとっていたところ。亡くなられたとだけしか分からないのです。」
「おれも救援に向かうのを止められた。相手の戦力差を考えると厳しい戦いだっただやろうな。」
与太郎が、話をした。
クルミは思った。はめられたのではないかと、しかし誰が?
怪しいのは開国派のシャイブ大臣か、それとも与一将軍との可能性もあるかな。
「その後、亡くなってしばらくして奥様と赤ん坊が消えたらしい。おれにも探せと命令がきたからな。」
何か隠してる。ちょっと顔色が変わった与太郎が気になったが、話を続けることにした。
「わたしのところに来る予定でした。そして、守って欲しいのと手紙が来たのですが、こちらから迎えの兵を送りました。
しかし、待ち合わせの場所には来られませんでした。」
そして、ドレドラスがやって来た。
「アリスを中心に話をしてると言うことは、気づいたようだな。」
「やっぱり、アリスの素性を知ってるの?」
「何となくな、しかし詳しくは知らん!調べもしなかったからな。」
堂々と言ってのける。ドレドラス。
この豪胆な性格はある意味才能だと思う。
「とりあえず、知ってることだけ教えて。」
「断る!」少し怒っているようだ。
「えっ ちょっとどういうことよ?」
「まず大事なことがある!」
メリットの言葉に反論した。
ドレドラスは、周りを気にもせずアリスに向かって行った。
「頭のいいお前なら、何となく察しているだろうが、どうやらお前はこの国の姫だそうだ。」
「うん.....」
「それでも、アリスお前にお願いがある。」
「何?」
アリスが不安な表情をしていた。
「お前が姫だとしても、お前の父親、家族でいさせてくれないか?」
アリスの目線に合わせて、腰をおとしアリスに問いかけた。
「うん!!」
アリスが泣きながら抱きついてきた。
「少し、2人だけにしてあげようか。」
クルミが促し、皆外にでた。
クルミは、ドレドラスの怒った理由に気づいた。
アリスの気持ちを誰も考えれなかったことだった。本人は気丈に振る舞っていたが、ドレドラスには分かっていたのだろう。
あ~ぁ。
今回は何もドレドラスには何も言えないかな。
それでも何もしないわけにはいかなかった。
まずは、
「与太郎! 何か隠してない?」
「うぐっ。何も隠してないですぞ!」
言葉がおかしくなっている。隠し事には向かないタイプみたい。
「隊長、自白したのと一緒ですよ。」
「はぁ わかったよ。実は、おれは親父に奥様を秘密裏に確保。出来なければ、国外へ逃がせって言われたんだよ。親父がどおしてそう言うことを言ったのか分からないけれどな」
「そして、おれが見つけた時にはすでに亡くなっていたんだよ。
親父は、その後で死亡を隠して生死不明扱いにしたみたいだ。」
与一将軍の発言の意図は、分からなくもない。血筋が大事な富士の国。それを守ろうとした。普通に考えればそうだけど。なんかねぇ。
「報告があります!富士の国から兵が迫ってきております。この数約2万。」
「やっぱり動いてきたね。」
あわただしくなってきた。
「予定どおり、防衛の為に各員配置について!」
「承知。」皆が一斉に動き出した。
「与太郎、あなたはどうするの?」
クルミとしては強制的に戦いをさせる気はなかった。
「正直、仲間通しで戦いたくはないな。待ちの警護にでもあたるよ。一般人に攻撃を加えるようなら容赦はしないがな。」
「じゃお願い!」
クルミは与太郎に治安維持を任せることにした。
あとは問題は兵力差だった。
こちらは戦えるのは2000人くらいだろう。一部は武装させた市民だった。
「ちょっと厳しいかぁ」
戦えば、勝てる可能性もあるが被害は必ず出る。向こうは戦力差があるから強気に出るだろう。
親衛隊も向かってきてはいるのだが間に合うか分からないところだった。
仕方ない。クルミは覚悟を決めた。
ある人物を呼び出すことにしたのだった。この世界でも有数な実力者。
妖精交信でカーグシン竜王を呼び出した。状況を説明した。
『カーグお願いがあるの?』
『何なりと。』
クルミの決意のこもった声に察したみたいだった。
『いつかの借りを返してくれない?』
それは、遥か遠い昔に約束した。
カーグとクルミの話だった。
『その言葉を待っておった。任せよクルミ殿。』
『ありがとう。』
これで戦力差もなくなるはずだ。