【第22話】戦争準備③
いまだ混乱する、ジークの横では竜王が現状報告を聞いている。
ジークとしては、竜王の件も驚いたが国の心配もしていた。
なぜ叔父はこのようなことをしたのだろう。前王との間は仲は悪くなくジークとしても優しい王のイメージがある。
変わったとすれば、姉が戻ってきてからだ。そもそも姉は、他国に嫁いだのだが、合わなかったとのことで戻ってきていた。
第二夫人の子供ということだけど、王の子には変わりない。
まわりは関与をすることはなかった。そんな姉を不憫に思ってか、叔父が援助していたのだった。
突然の王の病死。その後、叔父は変わってしまった。
大臣の1人が発言をする。
「そちらのジーク王子は今回の事何かご存知ではないのか?」
疑われているのは分かる、今進行する気配がある国のしかも王子なら当然だ。
「わたしには、叔父の考えがわかりません。どうしてこのようなことになったのか......」
他の大臣からも当然、疑惑の目、好奇な目で見られているのを感じる。王子として常に感じている視線だ。
「王子を交渉の材料とすることもできますぞ」
やはりその考えか、ジークも考えていなかったわけではなかった。
自分がいるから攻めてくるのは明らかだった。
交渉の材料でも構わないから国へ戻るつもりだった。国へ戻ればおそらく待っているのは死だろう。
王子といえまだ、15歳の若者にとって怖くてたまらなかったが、震えるのを我慢して発言した。
「わたしは交渉の材料でも構いません。それで戦争を回避出来るのであればこちらこそお願いしたい。」
即座に竜王が発言をする。
「それはならん」
「セルニア大臣よ、国を思う、そなたの気持ちもよく分かる。」
大臣が頭を下げる。
「しかし、皆は忘れているかもしれないが、この竜神王国は弱い者、国をなくしたもの、戦争で敗れたもの達が集まりできた国だったはず、過去の我らと同じものを見捨てよというのか?」
辺りは静まり返った。
一部の長命な者達は、懐かしい記憶を思い出していた。
圧倒的な敵を前に、怯まず諦めなかった竜王。そして、その横で万の軍に単騎で突撃を繰り返す剣帝の姿を。
ジークは、竜王の、言葉を嬉しく思ったがそれ以上に不味いと思っていた。配下の者達に独裁者に見えるのではないかと。
「竜王、それではこちらの被害がでる可能性もあります!わたしが国へ戻るのが最善の手です。」
「ジーク王子は、勘違いされているようですね。」
ミン宰相が話し始める。
「竜王の思いをわからないものなどこの場にいるはずがありません!」
会議の参加者が力強く頷く。
「それでも.....」
発言をしようとした、ジークの言葉を竜王がさえぎる。
「この者の性格は見ての通りじゃ、少しの間だが、この者に剣を教えることになって教えていたのだが、この者の剣は、守り耐える事ができる剣だった。」
竜王は続ける。
「政治的な事は、レオパルドに任せておるから、わしからはお願いじゃ、この者の事を気に入っておる、助けてやってくれないか?」
竜王が頭を下げる。
参加者達に同様がはしる。
「竜王様がおっしゃらなくても、戦うのとはもとより決まっております」宰相がこたえる。
「おーーー!」
と歓声が上がった。
ジークは感動で涙を流した。
今まで生きてきて、王子でないジーク本人の事を評価してくれる事が初めてだったからだ。
ざわつきが収まったところに、竜王の使いである火の鳥が表れた。
「ピーーー」
「ありがとう。」
竜王は、クルミに連絡をとり、レオパルド王がラルセット公国にいることを聞いた。なので、レオパルド王にも伝言を頼んでいたのだ。
「さて、はやく準備をした方がいいいぞ」
「それはどのような?」宰相が問う。
「我が息子は、既に単騎でラルセット公国に入っておるぞ」
ざわつく、一部の大臣はやはりかと思った。
ミン宰相は、1人で片付けるつもりなのですねと思った。
「それでは急ぎ準備を!」
ミン宰相が号令を出す。
レオパルドは、新しく徴兵された兵士の訓練をしていた。
皆くらい顔だったが、レオパルドの教え方、熱意に引かれているものも多くなっていた。
レオパルドは思うのだった。
この者達では、竜王国の鍛え上げられた兵士には勝てない。
全滅するだろう。生きるため、家族のために真剣に取り組む兵士達を見て思うところがあった。
「ふー、こんなとき親父ならどうするかなぁ」
つい考えてしまった。
そんなときに、親父の使い獣の火の鳥が表れた。手紙を渡して消えた。
その手紙には
『国には、我がいる。思うがままに成すべき事を成せ。』
その文だけだった。
その言葉にレオパルドは覚悟を決めた。