【第20話】戦争準備
「他国なので、慎重に行動しないとな」
レオパルドは身分がバレてしまうと、ミン宰相に怒られるだけじゃすまないだろうと考えた。
なので、大きな街は避けて小さい街や村を巡っていた。
ある街にたどり着いた。
人口はそう多くないが、ある程度いろいろあるのどかな街だ。
だが街は活気がない。
「あんたも街に来るタイミングが悪かったね」
宿屋のおばちゃんが話しかけてくる。
「活気がないようだけど、何かあったのか?」
「王が亡くなられて、弟のルーク公爵が国をまとめるようになったからだよ。」
話を聞くと王子の後見人とのことだが、好き放題な状況らしい。王子は竜神王国へ追い出したのじゃないかとのうわさだった。
それから地方の国民に税金を増やしたとのこと。
王が亡くなられていたのか、レオパルドは、数回会ったことがあり、国民思いの良い王に思えた。
国の変わる節目だな。
何事もないといいのだが。
「それだけじゃないよ、急に徴兵ってことで、若い男は全て兵士にされちまったよ。私の息子もね」
「それは、物騒な。」
「みんなは、竜神王国へ攻め込むのではないかとうわさしてるよ」
レオパルドはこれは、不味いなと考えた。しかし、疑問もあった。
ラルセット公国は小国で、竜神王国に戦争をしかけても勝つことは厳しいと思う。国力も10倍くらいの差がある。
少し調べてみるか。宿屋の女性に礼をいい、宿を出た。
せっかく休暇を満喫していたのに、この性格はどうにも出来ないな。レオパルドは根は真面目過ぎるほどの性格だった。
まずは、情報収集をすることにした。
「ギルドに行ってみるか」
レオパルドは、Bランクの冒険者としての肩書きもあった。昔強引に作ったのが役に立ちそうだ。
「ギルドへようこそ、どのようなご用件でしょうか?」
この街にも小さいながらギルドがあった。
「ギルド証をお願いします。」
レオパルドは、渡す。小さいギルドのわりには人が多かった。
「レオ様ですね、Bランクとは失礼いたしました。」
「いえ気にせずに対応して欲しい。」
ギルドのランクは、Bランクも少なく複数人の貴族、領主などが認めた場合に与えられるランクになる。
そして、Aランクは、国の国王が認め、ギルドの審査を受けた。人格、功績を認められた者になる。
そして、さらにその上にSランクとなる。これは、今は存在していない。
「Bランクのレオ様にお願いしたいご依頼があります。本来はCランク以上での希望なのですが....」
情報収集だけをしたかったのだがとりあえず聞いてみるか
「ラルセット公国からの依頼で、兵士達への技術指導の依頼になります。ただこれは少し裏があるかと思います。」
「裏とは?」
兵士への技術指導は新米の兵士などによく行うことがある。サバイバル訓練、探索訓練など冒険者が得意なことを教える。
今回はおそらく....
「これより先は、別室でお話させて頂きます。」
ギルド長よりの説明になった。
「戦争への介入になる可能性もあるのです。」
ギルドは本来は戦争への介入は、禁止されている。各国々にあるので、自由、平等を掲げている。
今回はグレーな依頼で、断ろうかとも考えていたそうだ。
ラルセット公国は、戦争への準備をしているのは間違いないのだが、竜神王国にかなうはずがないのになぜだとギルド長は、疑問を持っていたのだ。
「可能であれば、実情を知りたいと考えていました。可能であれば、この依頼を受けていただき、確認をしていただけないでしょうか?」
「わたしでいいのでしょうか?」
「当然の質問ですが、今このギルドにCランクの方もいないのです。しかし、Bランクの方ならばとすがる思いでお願いしたい。」
「わかりました。」
「ありがとうございます!
それでは明日からお願い致します。」
クルミは白い巫女衣装をきて川の中に立っていた。水に入ることできわどい格好になっており、親衛隊が見たら卒倒してしまうだろう。
これも好きでやっているわけではない。水の精霊の加護を強くするためで、検索範囲を広げるためだった。
クルミは昔は裸で入っていた、特に誰も気にしなかったからだ。
今は、違うつい昔と同じ感覚でしようとしてメリットに止められた。
少し【検索】のスキルでもなかなか見つからなかったので、範囲を広げることにした。
精霊の力も借りて。水の中で祈るクルミは神秘的にメリットには見えた。
シャオは連れてきてはいない、当然メリットが止めた。
「クルミさん、ミン宰相が魅力的な大人の女性に見えて羨ましかったって話してたけど、クルミさんの方がきれいでかわいいと思うけどな。」
メリットは、女好きではないが、クルミは非常に魅力的に見えていた。胸を気にしていたが、メリットはクルミよりもない。
「はぁー」
ため息がでるほどきれいだった。
祈りが終わり、クルミがこっちに向かってくる。その姿にメリットは、顔を赤くした。
「少し、危険な状況になっているみたい。急がないと危ない!」
「えっ」
「急いでラルセット公国に行くわよ!」
そのころ、ジークのもとにも祖国の危機が知らされた。
教えたのはミン宰相の使いだった。
本当は、ミン宰相は、竜王に知らせたのだが、ジークも修行中でそばにいた。
「はやく、戻らなくては!!」
焦るジーク。
「少し待つのじゃ」
「しかし.....」
「行かぬとは言っておらぬ、少し情報と準備が必要だ」
「まずは、クルミ殿に連絡を」
カーグが召還魔法を行う
「火の精霊にお願いする、我が友よ、力をかせ!」
火の竜巻が巻き起こり、そこから火の鳥が表れた。
「ピーーー」
「きれいな鳥さん」アリスが目を輝かせている。
「クルミ殿に伝言を頼む」
「ピッ」
小さく鳴いて飛び立った。
「まずは、王国へ行くとするか」
「王は不在なのでは?」
「わしは王とも知り合いなのじゃよ。着いてきなさい。」
ジークは、自分が素手に王よりも上の竜王に会っていたことをまもなく知ることになる。