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別れ

それから一週間。

俺は旅に出る準備を進めた。

準備が整い、ついに村を出発する日がやってきた。


「行ってきます」


父さんと母さんだけでなく村のみんなが村の出口まで見送りに来てくれた。


「ユーリ。お前なら大丈夫だと思うが、無理だけはしないようにな」


「はい」


父さんが肩にそっと手を置きながら言った。


「ユーリ、風邪を引かないようにね。それからちゃんと眠って。体はいつも健康に保つように心がけるのよ。それから、困っている人がいたら助けてあげて。この村はみんなで支え合ってる。ユーリも分かっていると思うけれど、人は一人では生きていけない。困っている人がいたら手を差し伸べて上げて。あなたはそれが出来る男の子よ。それから、悪い女の人には気をつけること。笑顔ばかりを振りまいている人は危険なの。ただただ優しい人にも注意して。心のなかで何を考えているかわからないから。厳しくても背中を支えてくれるような素敵な女性を見つけるのよ。それからね」


母さんは次第に涙を流し始めた。

そんな光景を目にしてしまうとたびに出づらくなってなってしまう。


そんな母さんを見た父さんは母さんの肩に手を回す。


「たまには帰って来るんだぞ、ユーリ。父さんと母さんに元気な姿を見せてくれ。」


「うん。わかった」


それから村のみんなから言葉をもらい、俺は彼らの見送りを背に村を旅立った。


行ってきます。


皆が見えなくなる直前に俺は大きな声を出して手を振った。


さぁ、俺の冒険がこれから始まる。


都市サンバーグを目指しながら俺は考える。

冒険者としての生き方についてだ。


まず大前提としてできるだけ目立つことは避けたい。

何らかの機関に目をつけられて過酷な扱いを受けさせるのはゴメンだ。社畜として生きるのは前世だけで十分だ。


次に出来るだけ危険な仕事は請け負わない。

命あっての人生。

父さんと母さんにも無理はしないって約束したしな。


この2つはできる限り守りたい。


サンバーグまでの道のりは歩いて3日程度。なので途中で野宿をする必要がある。

しかしこの辺は危険な魔物は存在しない。


魔物。文字通り魔法を操るモンスターだ。


高位の魔物は国を滅ぼすほどの力を持つ。


遭遇しないに越したことはない存在だ。というか、遭遇したら死を覚悟しなければならないような存在だ。


先日もある王国が魔物に滅ぼされた、という話を聞いた。


ブラックドラゴン、と呼ばれる魔物。

最上位種だ。


滅ぼされた国はここからかなり距離のある王国だという話だった。


この世界は一つの大陸出できている。


その大陸を東西南北中央の5つのグループに分けるのが一般的。

俺が生まれたニン村は大陸で言うと最南端に位置する。

サンバーグもまた南部に位置する。


そしてブラックドラゴンに滅ぼされた王国、グリテン王国は大陸の北部に位置する。


大雑把に各地区の危険度を言うと

北部→超危険

中央部→普通

東部→危険

西部→比較的安全

南部→安全


といった具合。


北部は超やばい。行きたくないし行く予定もない。


とりあえず俺は大陸の南部を拠点に生活していくつもりだ。

いざとなったら故郷であるニン村にも帰れるし。


とりあえずサンバーグの冒険者ギルドで冒険者登録をして、安全な仕事を請け負って当面の資金を調達する。


しばらくは生活に困らないくらいのお金を両親からもらったとはいえ、働かなければお金は減っていく一方だからな。

まったく、前世で使い道がなくて貯金していたお金をこっちの世界に持ってきたかったぜ。まぁ、前世の紙幣なんてこの世界ではただの紙切れにしか過ぎないんだけど。

くそー、残業代で貯めたお金、せめてなにかに使っておくべきだったぜ。


墓場に金は持っていけないからな。

経済を回すためにもお金は貯めるだけではなくて好きなことに使うのがいい。


死んで学んだことの一つだ。


さて、日が落ちてきた。

今日はこの辺で野宿することにしようか。


風魔法を使って上空へと飛翔する。


周囲の索敵。

目に見える範囲で魔物や獣の類は確認できない。


地面に降りたつと俺はリュックからテントを出し組み立てる。

それから俺は簡単に料理を行い腹を満たした。


日が落ち月が世界を照らす。


幻想的な景色だ。


前世ではゆっくり空を見上げる心の余裕も時間の余裕もなかった。


美しい。

なんて美しいんだろうな。


さて、明日も歩きっぱなしだし、そろそろ寝るとしよう。

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