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作戦会議

翌日。

俺とサーシュはギルドに行き情報収集を行った。


結果から言うと連れて行かれた男は赤きケルベロスの頭目、【暗黒】のザリシアルだった。


モルビコ王国の秘宝を盗んだことで王国騎士団から追跡されていたところ、昨日ボロボロの状態だったザリシアルを発見。

騎士団が捕らえた、ということだった。


見た目の特徴もザリシアルと一致し、かつ王国に伝わる秘宝を所持していたことから連行された、ということだった。


そして、明日処刑台にして死刑が執行されるとのこと。


ふむ。


話だけを聞くと完全にクロだ。


クロだが、しかし違和感を覚える。

【暗黒】のザリシアル。闇魔法の使い手である彼はSランク冒険者に匹敵するほどの強者。そんな男が一人でボロボロの状態で見つかった、ということに違和感を覚える。


仕事をする上で違和感に気づき、何に対して違和感を感じたのかを調べ、対処する、というのは予期せぬ自体を防ぐための防衛手段である。


俺の経験上、この一件は違和感だらけである。


王国の秘宝を盗んだのであればモルビコ王国には用はないはず。


事実彼は秘宝を盗んだ後一度はこの国から逃げている。にもかかわらずなぜ戻ってきたのか。


話では彼はモルビコ王国の入口付近で発見されたらしい。


ほとんと未抵抗だったという話だ。抵抗するほどの力も残っていないほど似ボロボロの状態だったとか。


盗賊団、というからには仲間がいるはずだ。


その仲間たちはどこに行ったのか。


気になる。


冤罪の香りがする。


王国の連中もこの違和感を感じていないとは思えない。思えないが彼らにも面子があるのだろう。見せしめとして処分しなければ体裁が保たれないのかもしれない。秘宝というのが一体何を指すのかは分からなかったが。


「それで、どうするつもりなの?」


宿に戻ってきた俺たちは昼飯を済ませ向き合っていた。


「私としてはこれ以上関わらないほうがいいと思ってるわ。なんか胡散臭いし。」


彼女の言う通り胡散臭い。胡散臭いからこそ、なぜだか連れて行かれた男を放っておけない。


しかし彼女を巻き込むことには気が引ける。


黙っていると彼女が口を開いた。


「ユーリ、あんたのことだから私を巻き込まないようにしないと、とか考えているんでしょ?大方一人で王城に忍び込もう、なんて考えてるんじゃない?」


図星だった。女の勘って恐ろしい。


「えーっと、それはだな」


「行くなら私も行く。あんたが一人で行って、捕まったりしたら寝覚めが悪いもの。それにこの間も言ったでしょ。パーティーは一蓮托生。それに私は色々と魔法が使えるわ。役に立つ場面があるかもしれない」


確かに彼女は非常に汎用性が高いオールラウンダーだ。それは共に過ごしたこの数ヶ月でよくわかっている。正直魔法を知りすぎている気がしている。俺も基礎4系統魔法である、火、水、土、風は村で教わった。これは広く世間に普及している魔法だから教えられる人間は割といる。


しかし彼女が扱う治癒魔法や結界魔法は基礎系統外魔法。扱える人間の数は絞られる。つまりそれだけ教えられる人間が少ないということだ。どこで教わったんだろう。


まぁ、気にはなるけど今はそのことを話しているほどの余裕はない。いつか時間がある時にでも聞いてみよう。


「そう、だな。分かった。なら今夜、一緒に王城に忍び込もう」


「ええ。ただ夜だからといって油断はできないわ。むしろ夜だからこそ警備は厳重になっているかもしれないから」


「俺の魔眼は忍び込むのには向いている」


「ええ。これ以上ないってくらい適していると思うわ。その魔眼があればおそらく牢獄まではたどり着けると思う。問題は、その後ね」


その後。つまり、連れて行かれた男が赤きケルベロスの頭目、ザリシアルかどうかを判別すること。そしてもし違ったとしたら彼を逃がすつもりである。


「牢屋にたどり着く頃には私達が侵入したことは騎士団全体に共有されている、と思った方がいいわ」


「俺の魔眼は相手が少なければかなり有効だが、数が多すぎると目を合わせきれないから集団戦には不向きなんだよな」


「ええ。まぁ、そうね、私にも奥の手はあるわ。いざとなればそれを使うつもりだけど、出来ることなら使いたくないのよね、消費魔力が多すぎるから使ったらしばらく動けなくなるのよ」


奥の手、か、なにそれ、かっこいいじゃん。社畜の奥の手は点滴でのエネルギー補給だぜ。


「隠し通路とかわかったりしないかな」


「有事のための王族専用の隠し通路はあると思うけれど、それを今から調べるのは時間的に無理ね。知っている人間は限られているでしょうし」


「その、奥の手っていうのは信用してもいいんだよな?」


「ええ。とっておきの奥の手よ、何、先に聞きたいの?」


「聞きたいけど、そこまで言うのなら楽しみに取っておくのもいいかもしれないな」


「それじゃぁあとの楽しみに取っておきましょうかね、まぁ、先に言っておくけど殺傷能力はないわ」


殺傷能力がない、か。いくつか考えられるが、妨害系の魔法だろうか。


「決行は日が暮れてからがいいわね、夜の闇が私達を視界から隠してくれる」


「まるで俺たちが盗賊担ったかのような気分だな」


「きっと貴重な経験になるでしょうね」


そうして俺たちは王城へ侵入する方法を話し合った。


目立たないように黒いマントと顔がバレないように仮面を購入した。


万全の状態、とは言えないだろうが今できることはやった。


あとは成功を祈るのみ。


結局最後は神頼みなのだ。

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