鳴動1
「私の両親を殺したと・・・」
洋子は激しく動揺した。自分の両親はまだ、生きている。今日も同居している母にお早うを言ってから家を出た。
「それは、どういうこと・・・」
「まずいこと言っちゃったな。今の両親から聞いてないのか」
平田は悪びれもせずに言って、笑った。洋子は震える唇を抑えきれなかった。
「俺はあんたの家に押し入ったのは20年前だったな。あんたのことも覚えてるよ。あんたは小さかったな」
平田はがらっと表情を変え、残忍で淫猥に笑った。
「あんたの母さんは、柔らかかったな、プシューってナイフが突き刺さって血がプーって」
平田は急に幼児のような胡乱な顔になって、涎を垂らした。
洋子は悲鳴を上げた。しかし、強ばった喉からは、何の声も上がらなかった。
「思い出すよ。あんたも俺のこと覚えてないかい」
平田は拘束服を着たまま、腰を動かしている。興奮して、顔が上気していた。「ああ、あああ」
平田は射精していた。その時、漸く洋子の喉から、つんざくような悲鳴が滑り出た。
「キャー!」
外にいた二人の刑務官は部屋に飛び込んでくると、平田の体を押さえつけた。
「大丈夫ですか」
「ええ」
洋子はか細い声で刑務官に答えた。
「ああ、ありがとう。気持ち良かった」
平田は引っ立てられて行きしな、洋子にそう言った。そして、
「あんたには妹がいる。そいつを探しだしな。そいつが鍵だ」
と捨て台詞を吐き、ニヤッと笑うと部屋から連れ去られた。
後に残された洋子は体中から血の気が引いて、震えたままその場に立ち尽くしていた。まるで、レイプされたようだ、洋子はそう思った。