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鳴動5

 校門から出てくる女子中学生の波は下校時間には途絶える気配がない。彼女たちは口々に話の花を咲かせている。彼女たちの話題は多様にして一様だ。

 しかし、ここ最近、彼女たちの話題はある一点に集中していた。

「ねえねえ、朋美も見たらしいわよ」

「ホントに」

「見たって、例の都市伝説?」

「そうそう。見たっていうか、何かキツネに化かされたっていう」

「狸なんじゃないの?」

「どっちでもいいよ。なんかさあ、よくあるじゃない。昔話で」

 風が吹き始めた。突然の風は彼女たちの会話を吹き飛ばした。空は曇天に急変し、霧が立ちこめ、ほんの少し先も見えなくなった。

「ねえ、これってさあ」

「うん」

「朋美が・・・」

 語尾が恐怖に震えていた。彼女たちは周りが暗闇に覆われ、立ち尽くしてしまった。そして、突然、自分たちの遥か前方に光が見えた。

「に、逃げよう」

「うん」

 彼女たちは光に向かって全力疾走した。必死に走っても走っても光には近付かない。彼女たちは恐怖に泣きながら走った。

 その時、

「やめなさい」

 と言う凛とした声が辺りに響いた。

 途端に辺りの景色が日常に埋没すると、女の子たちはその場に取り残された。

 当たり前の風景。

 その場で茫然としている男が一人。

 女の子たちは我に返ると一目散に走り出した。後には男と、そして、美しい少女が残された。

「ねえ、そんなに女の子驚かして、何が面白いの」

 少女は男に向かって言った。

「情けない」

 男は応えたようにうなだれると、か細い声で少女に言った。

「どうして分かった。俺がやったとどうして分かった」

 禍々しい波動が刃となって少女を襲った。頬に行く筋もの傷が走り、そこから血が流れ出した。少女は痛みを感じて、驚いた。

「痛覚にも働きかけることが出来るなんて」

 嘆息と共に感嘆が少女の口から漏れた。しかし、少女の表情には動揺も狼狽も現れなかった。返って男の方に焦燥が色濃く出ている。

「もう、やめたら。あなたに人を傷つけることは出来ないでしょ」

 男は肩で息をすると、疲れたような声で

「負けたよ」

と言った。すると、少女の顔に付いていた、傷は綺麗さっぱり無くなっていた。

「どうにでもしてくれ」

 男は思わず道ばたに座り込んだ。

「じゃあまず、名前を聞かせて」

 少女は澄んだ瞳をくるっと廻して言った。

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