不思議な体験【夏のホラー2020 投稿用】
※この作品はフィクションです。 作中に登場する人物や組織、団体、出来事等は現実では存在しておりません。
それと、これを書いた当人はホラーがことのほか苦手です。
大作ホラー映画みたいな、絶叫できる質の作品は書けませんので、ご了承願います。
時刻は深夜。
どうしても今買わなくてはいけない物を思い出してしまい、最寄りの駅前コンビニへ行かねばならなくなりました。
この辺は治安が良い。
でも、だからこそ出てくる悪い人も居るので、女の子ひとりで夜の外出はどうしても怖いものです。
オンナの矜持、最低限の身嗜み。
乱れてないかへアセット、お手軽超特急メイク、お急ぎなのにそう感じさせない服選び。
…………うーむ、これで夜の外出でも目立たず、だけど可愛くできているかな?
持っていくものだって隙を見せられない。 ハンドバッグの中身も確認。
いつでも便りになるスマホ、防犯グッズ各種、ハンディライト、車対策に反射板付きの小物。 それと財布に買い物メモ……と。
見落としチェック、指差し確認……ヨシ。 マスクを着けて、さあ急がなきゃ。
おっととと、家の鍵を忘れちゃあいけない。
私が住んでいる場所とコンビニの位置関係は、線路を挟んで向こう側。
コンビニ近くには駅前交番もあって、こんな急場で本当に助かります。
そして、そんな急場は何度か経験しているのですが、これから話す不思議な体験は、今までもこれからも一度きりでした。
~~~~~~
あの日も同じ。
深夜コンビニに用が有ったのです。
場所は、線路の向こうへ渡ろうと歩いていた、丁度駅舎の反対辺りでした。
駅は連絡橋でつながる2つのプラットフォームが有る、いかにもな古い駅舎。
そのプラットフォームの下には、転落したら走ってくる電車から逃げるための空間が有ります。
そこに偶然、何の気まぐれか知らないけれど、ハンディライトの光を当ててしまいました。
その光が当たった場所に、なにかがいたのです。
線路へ入れないようたっている金網フェンス越しにですが、黒いなにかがグニグニ動いていたのを見たのです。
私はか弱い女の子ですから、即通報ですよ。 ええ。
駅のプラットフォーム下でなにか黒くて大きい物がグニグニしてるって。
そんな物に近寄りたくないですし、もしそのグニグニが私に気付いて襲いかかってきたら、どうしようも無いですし。
それでグニグニを監視していると、すぐお巡りさんが駆けつけてくれました。
私が一方的に知っている方々です。
ええ、そうです。 駅前交番のお巡りさんが2人も来てくれました。
それでライトでグニグニを指しながら事情を説明し、確認して欲しいとお願いしたら、快く応じてくれました。
2人で駅の入り口から連絡橋を渡り、プラットフォームから降りる。
グニグニから注意を逸らせて、そのお巡りさん達に見入ってしまったのが悪かったのか。 短い時間にグニグニが消えていたのです。
もちろん私は大慌て。 あちこちにライトを振り回し、どこへ行ったのか探しました。
相手はよく分からない物体。 どこへ行ったのか分からないと、本当に不安ですからね。
お巡りさんとも協力して探したのですが、結局見つからず。
これだけ探して見付からないなら、この辺から居なくなったのだと割り切るしかない。
そうフェンスの向こうからお巡りさん達に説得されて、恐怖を抱えながらも納得するしかなくて。
でもやはり不安なので、お巡りさん達に買い物の付き添いをしてくれないかな~? なんて甘えようとしたら、連絡橋の階段で背中を見せているお巡りさん達。
もう帰っちゃうんですね。 通報者へ、何だったかの報告はして頂けないのでしょうか?
それでビクビクしながらも、本来の買い物と言う目的を、ひとりで済まさなければなりませんでした。
買い物をなんとか済ませた際、さっきのお巡りさん達が戻って来ているのか興味が湧きました。
戻ってきているなら、今度こそボディーガード代わりに家まで守ってくれたら嬉しいな~とかって、下心込みですが。
それで行ってみたら、交番は空。
外へ出ている旨の札が下がっていて、がっくりしたのを覚えています。
~~~~~~
さっきの話のどこに不思議な体験談が有ったのか、ですか?
少し気が早すぎますよ。
不思議な体験だったと確信したのは、後の事です。
あの翌日、しかも夜で仕事帰り。
警察の人……制服のお巡りさんじゃなくて、スーツ姿の警察の人達。
そんな人が家の玄関前で待っていて、質問してきたんですよ。
「駅前交番勤務の警官が行方不明です。 貴女の通報以後、足取りが掴めません。 なにか知りませんか?」って。
それでですね。 ひと通りお話しして終わったんですが、帰り際にポツリと、警察の方が言ったのを聞いちゃったんですよ。
「国内でポツポツと同様の現象が報告されていて、仲間がポンポン消されちまってる。 一体何が起きてるんだ?」って。
本当、不思議な事ってあるもんですね。
~~~~~~
折角だし、悪ノリで企画に乗ってみました。
この類の怪談(ホラー?)って結構ありますし、どっかで読んだ~とかおっしゃる方もおられるかもしれません。
一応言い訳としては、怪談のセオリーは知ってますが恐いから聴かないし覚えたく無い、あまり知らない奴がなんとか捻り出したオリジナル(のつもり)でございます。
セオリー?
日常(明るめ)で気をゆるめて、不安・不穏を少し匂わせて、再び軽い空気を作りながら“?”部分をまぜて、最後で一気に「ひぇっ(怖)アレはコレだったのか!」と分かったら怖くなる感じで落とす。
ずっと不安・不穏をばらまき続けて、空気の緩急を細かくつけながらひとつの方向へ意識を誘導して、最後に別(反対)の方向からワッ!っておどかすのもセオリーだけど、そのパターンは疲れるし怖すぎるしでやりとーないです。