4.一日
翌朝。
窓の外にパトカーはない。
その事に少し安心する。
昨夜は大変だった。
同じ部屋で寝るだけだったら良かったのに。
あの幼女が寒いからとか言って俺が寝てる布団に入り込んできたのだ。
俺の部屋に来客用の布団なんてあるはずがない。
かといって床で寝させるわけにもいかない。
仕方なく一緒に寝ることにしたのだが、見た目幼女と一緒に寝る高校生とか犯罪臭しかしない。
母さんに見つかったらどうしようとか思いながら目をつぶっていた。
しかし、隣の幼女はそんなのお構い無しに寝る。
警戒心とかは無いのかよとか思いつつ、寝ようとした。
するとこの幼女、俺に抱きついてきたのだ。
しかも寝言で「パパ......」とか言うから知らない人から見たらただの幼女だし、俺はただの変質者だ。
顔も普通に可愛いし、俺だってこんな状況じゃなければ喜んでいた。
でもあのときは違う。
本当にドキドキした。
母さんに見られたら通報されるだろ絶対。
そんな事を思いながら、眠りについた。
どうやら見つからなかったらしい。
しかしルシファーの姿はない。
そのかわり、
「ようやく起きたか、少年」
何故かシーナがいた。
「何でいるんだよ! どうやって入ってきた! ルシファーはどこにいる!」
「質問が多い......」
「いいから早く答えろよ!」
「まったく......まず、何故私がいるかだが、この争いの敗北条件は私が死ぬことだ。ならば死なないように安全地帯に逃げるに決まっているだろう。どうやって入ってきたかだが、壁程度ならすり抜けられる。あと、ルシファーは下だ」
「下? 下って......」
俺の部屋は二階にある。
てことは一階だろう。
つまり、母さんがいる。
「何でだよ! 何で行かせたんだよ!」
「何故って......君の側にいなくても家の中なら気配が消せるから」
「そういう事じゃない! ああもう!」
急いで階段をかけ降りる。
手遅れじゃないと信じて。
「む、意外と旨いな......」
「臭いはきついけど美味しいのよね~♪」
仲良く納豆を食べていた。
「この黄色いのは何じゃ?」
「からしって言ってね、臭いを消すのに使うのよ」
「臭いが消えるのか! よし入れるのじゃ!」
納豆にからしを大量に入れる幼女。
「おいっ......そんなに入れたら......」
「ぱくっ」
俺の忠告も聞かず口に入れる。
「?! ピリピリする! この黄色いのピリピリする!」
「だから言ったのに......」
「ミナト! いたのか......」
「湊人君、おはよう」
「おはよう」
小暮南。
俺の母さんで、いなくなった父さんのかわりに仕事も家事も一人でしてくれている。
「彼女には私から話しておいた。勿論一部を除いて、だが」
シーナが降りてくる。
「よかった......俺の人生終わりかと思った......」
「それより朝ごはん! 学校遅れるぞ!」
「そうじゃぞミナト! このナットウとかいうのを食べろ! 旨いぞ!」
「はいはい......」
そんなに気に入ったのかよ、納豆。
急いで朝食を食べ、家を出る。
「行ってきます」
「言ってらっしゃ~い」
「待て! 少年!」
何故かシーナに呼び止められる。
「何だ?」
「いや、もういい」
「?」
何だったんだろう......