3.契約
「もう一度聞こう。本当に彼女を匿うのだな」
「ああ、構わない」
「それじゃあ、契約だ。ここにサインを」
そう言って、シーナは紙を取り出す。
何かが書かれているが、全く読めない。
魔界の文字とかそんなだろうか。
「これ、何が書いてあるんだ?」
「いろんな約束。例えば、命を懸けて彼女を守ることとか。死んでも自己責任だとか。あ、破ったら死ぬから気をつけて」
「じゃあ分かるように日本語で書いてくれよ。全く読めねえよ」
「無理だ。一種の魔術だからな。変えることはできない」
「まじかよ......」
「安心しろ。彼女を見捨てたりしなければ死ぬことはない」
「逃げなかったら死ぬのに逃げても死ぬのかよ......」
「だから彼女を連れて逃げろ。もしくは自分だけ残れ」
「分かりましたよ......」
早くもやる気が失せてきた。
ありのままを伝えすぎだろ。
オブラートに包めよ。
「それじゃあサインを。ちなみに断ったら殺す。口封じだな」
「はいはい......」
仕方なく契約書にサインをする。
すると契約書がいきなり燃え上がり、跡形もなくなった。
炭とかもない。完全に消えた。
「契約成立だ」
「今の何? いきなり燃えたんだけど」
「契約は魔術が発動すると形から魔力になる。君の中に入り、もし約束を破れば、すぐに殺せるように」
「怖っ......」
「じゃあ私は、大罪を探してくるから。後はよろしく」
そう言って、どこかでに消えるシーナ。
瞬間移動出来るのかよ。
てか、
「大罪を探す?」
「うむ。正確には、大罪の『芽』じゃな。大罪はいつも7体いるわけではない。誰かが死ぬと、その力が誰かに受け継がれる。しかし、能力の発現には時間がかかるのじゃ。儂のように、力を受け継いですぐに発現する者もいれば、10年以上経ってから発現する者もいる。力を受け継いでいるが、発現はしていない。それが芽じゃ。儂らはそれを探しにここに来た」
「この世界に大罪が?」
「レヴィアタン。やつはマモンに殺されたが、儂とシーナは力をマモンに渡さないように妨害した。それが成功し、力はマモンの物にならなかった。しかし、力はどこかに流れた。そして、流れ着いた先がこの世界じゃ」
「そのマモンが今皇帝側にいる唯一の大罪か」
状況から考えてルシファーとレヴィアタンとシーナを同時に相手にして、レヴィアタンを殺したってことか。
大罪2体と魔王で相手しても勝てないってどんな強さだよおい。
「良かったのか?」
「ん?」
「お前はそれで、良かったのか?」
多分それってのは契約のことだろう。
「半ば脅しだったからな......それに、」
「それに?」
「こんな退屈な日常が変わるんだったら、命なんていくらでも差し出すよ」
「お前は日常がどうなってもいいのか?」
「ああ」
「はあ......分かった。これから、頼むぞ」
こうして、幼女との同居が始まった。
ブクマついててテンション上がったので、明日も投稿します。