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模擬戦 決着

「十字軍というのは、主にカトリック教が聖地エルサレムをイスラム教から奪還する際に派遣された軍隊のことです。1096年から1099年に行われた第1回に始まり合計で8回行われています」

茶々は本当に授業を始めた。

自分の戦闘ヘリは何故か消えるし、風景も全く違う。福田は自分の考え方が根底から破壊されていくのを感じていた。だが、黙って聞いているなんて真似はできなかった。

「何が授業だ!そんなんでこの試合に勝てると思ってんのか!」

恐怖で動かなくなっていた体を無理やり動かす。すると眉間に物凄い衝撃が走り目の前が白く霞む。

「あなたは授業を座って聞けないのですか?それとも面白くありませんでしたか?」

茶々が手首をさすっているのが見える。

「うそ。。。だろ。。。」

チョークだとッ。。。粉々になる速度でチョークを投げられた。一瞬福田の思考が停止し目の前が真っ暗になる。

「これから面白くなりますから」

その言葉に乗せられた恐怖で飛び起きると

「ここは1096の東ローマ帝国。ここが歴史の舞台です」

自分が座っていた椅子はなくなり、何故か石畳に座っている。周りは古臭い石造り街並みが続いている。

まるではるか昔のヨーロッパのような

「時の皇帝アレクシオス1世の依頼によってローマ教皇ウルバヌス2世は免罪を報酬に十字軍への参加を募りました。ヨーロッパ諸国から集まった兵はコンスタンティノープルにて集結したのです」

辺りは景色を変え広場のような場所に数えきれない程の兵が集まっている。

「ここから、彼らはニカイアやドリュラエウムなどで戦果をあげシリアに向け進軍しました。っと、軍右側に怪しげな男を発見!すぐさま対処しろ!」

茶々が号令をかけると、十字軍はそこにいた1人の男を囲んだ。

「何だ?俺なのか!?」

そして茶々は告げる。

「撃て」

号令と共にいくつもの銃声が響き渡る。

「なッ!目標の姿がありません!逃走した模様です」

茶々は嬉しそうに笑い

「まだ遠くには行っていないはずです。フォーマンセルで捜索にあたってください」

十字軍が散り散りに捜索にあたる。



「ハァハァ。。。冗談じゃねぇ。あんなバケモンとまともになんかやってられねぇ」

福田は思考をめぐらせる。逃げてるうちに見つけたボロ小屋の床下。

ここでギリギリまで考えてやる。必ず勝機はあるはずだ。


チャキッ パァァァンッ


「なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ」

気づいた時には視界は真っ赤に染まり、頭の中は''なぜ''でいっぱいだった。

「面白かったですね」

機能を失ってゆく耳にかすかに聞こてくる声はとても嬉しそうだった。





『そこまでだな。直ぐに福田を医務室に運んでくれ』

「僕が運びます。1年生じゃ医務室の場所わからないでしょうし」

「そうだな。頼んだぞ」

菅に背負われた福田が去っていくと、茶々の周りに温度が戻っていく。ゴムをほどきながらどうだったかクラスメイトに聞こうと顔を向けると、

「ダッ。。。」

言葉が出てこない。さっきまで自然に上がっていた口角は引き攣り、脚が震える。

「あれはやり過ぎだよ。。。」「あんな人だったんだね」「ちょっとヤバいよね」

コソコソ聞こえてくる声はどれも茶々の心をチクチク刺していく。思い出したくないことばかりが頭の中を巡り始める。

「嘘。。。私。。またやっちゃた。。。」

佐々木先生は他の生徒を返し茶々と2人になる。

「京。お前は特別だ。元々高校入学も上官の意向で必要なものでもなかった。」

「あなたが。。。」

茶々は佐々木先生を睨みつける。

「あなたが私を選んだからこうなったんだ!他にもデバイス戦闘の経験者はいた。それは分かっていたはずでしょ!なんで私なの。なんで。。。」

佐々木先生は何も言わない。言う資格がないと自らの過ちを悔やむ。

「帰ります」

「待てッ。京!」

佐々木先生の制止を無視し荷物取りに教室に戻る。

教室入ると廊下まで聞こえていた話し声が急に無くなる。チラチラと見られてはコソコソと近くの人に耳打ちをする。そんな雰囲気に耐えきれず、早足で後ろのドアから出ようとすると

「あんな人と授業とか無理だよねぇ」

トドメを刺す一言に茶々は走って逃げ出す。杏奈の声だった。

学校近くのマンションの一室に帰ると、着替えることも無く泣き喚いた。

「私が悪いの?何でいつも私ばっかなの?小学校でも、中学でも、軍でも。みんな私を悪者にする。化け物だって遠ざける。私だって、好きでこんな事してないよ。私だって、普通がよかった。」

茶々の叫びはいつもと違い、弱々しく誰かに縋るようだった。



目が覚める。制服のまま泣き疲れて寝たようだ。頬には涙の跡があり。喉も掠れて声がうまく出ない。

「今日は休もう。んで、退学届けを出して軍に戻ろう」

学校に休む旨を伝え服を脱ぐ。

ピンポーン

間の抜けたインターフォンの音が響く。

「こんな朝からだれだよ。。。」

玄関まで行きドア越しに声を掛ける。

「どちら様ですか?」

「僕だ!開けてくれ!」

知らん人に馴れ馴れしくとんでもないことを要求されてる!

面倒臭いな。。。追い返す以外の選択肢も無いし、人と話す気分でもない。

「あからさまな不審者の言うことを聞くと思ってるんですか!帰ってください!」

「昨日の今日はダメかぁ。。。また明日来るね!ばいば〜い」

はぁ!?明日も来るだとッ。。。余計面倒だしここは一発で終わらせよう。

「ちょっと待って!何の用ですか?」

「とても重要なことさ」

男は意味ありげに答える。まだ話す気はあるようだ。

「それなら、今、手が離せないので入ってください。鍵はあいてるので」

「話がはやいじゃないか!」

そう言って男がドアを開ける。目に飛び込んできたのは一糸まとわぬ裸体を恥ずかしそうに両腕で隠す茶々だった 。

「キャァァァァァ!!」

バタンッ

「お邪魔しマース」

「あんたは変態か!」

まさか自分を犠牲にして失敗するとは。。。京茶々一生の不覚!

「取り敢えず服を着てくれ」

真正面から見ているのに言うセリフではないがここは言うことを聞きワンピースを着る。

何やかんや落ち着いてしまったので話を聞いてみよう。

「それで用件は?」

「まずは自己紹介から。ぼくは菅季臣。君を生徒会にスカウトしに来た」


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