模擬戦 前半
あぁ〜憂鬱だなぁ。眼力に負けて「はい」って言っちゃったけど。クラスがドン引きするの目に見えてるし。かと言って手を抜くと先生に睨まれるし、何よりそんなことできるような精神状態じゃないんだよねぇ。戦う(やる)時ってのは。
「おはよぉ〜。茶々っち。今日は早いねぇ」
ゆったりとした、甘ったるい声が後ろからする。
雲母は今日も甘栗色のふわふわボブヘアを弾ませている。
「おっはよ!髪型一緒なんだね、昨日と」
「流石に第一印象を変えるとみんな困るかなって」
「それは一理ある」
朝からぐだぐだ喋っているといつの間にか教室の前にいる。よくある。よくある。
「おっはよー!」
「おはよう」「茶々ちゃんおはよー」
朝からうちのクラスの女子ズは賑やかだよなぁ。まだこのクラスが始まって2日だよ!凄いな女子って。
「おっ、京さんだ。やっぱ京さんだって」
「いやいや、清武さんに決まってるだろ」
男子はクズしかいないもよう。。。
朝礼の始まりを告げるチャイムが鳴り、クラスは落ち着き始める。
「おはよう。それでは朝礼を始める」
佐々木先生はつつがなく連絡事項を述べていく。
「最後に今日のことだが、最初の授業はARデバイスついての説明に加え実際に使っているところを見てもらう。」
「見てもらうって事は僕たちは使わないんですか?」
昨日クラス委員に決まった西野が手を上げる。
「そうなるな。また説明するが、ARデバイスは全く安全というものでは無い。だから最初はどういう風に使うのかを見てもらう。」
「わかりました」
とりあえず納得したという感じで西野が座る。
「それでは筆記用具だけ出して教室で待機していたまえ。以上だ」
そう言って、佐々木先生は教室出ていった。
「誰が使うんだろうね」
「先生かなぁ」
「先輩かもよ!」
「生徒会長ならいいなぁ」
「かっこいいもんねぇ。まさか狙ってる?」
緊張が解けてクラスはまた熱を帯びる。
これって、「私がするよ!」とか言っていいのかな。ダメっぽいよな。。。
辺りを見回すと、福田君と目が合う。
「。。。チッ」
凄く睨まれた上に舌打ちされただと。。。
やっぱり憂鬱だなぁ。
「それでは授業を始める」
ついに始まってしまった。けど最初はデバイスの説明とか言ってたから多分トべるはず。それで気を紛らわすしかない。今日は模擬戦やるって言ったら雲母に「絶対パンツとブラ着てくるんだよ!」って鬼の形相で言われたからとっても締め付けられている。窮屈だなぁ。でも、もし雲母に「履いてるわけないじゃん」って言ったらどうなるかなぁ。考えるだけでコウフンしてくるッ!
「ARデバイスは使用者の想像力に直接働きかけそれを実体にする装置だ。言葉にすると成功しやすいから覚えておくといい。」
色々と捗り終えて意識を戻すと、佐々木先生がARデバイスを持ち「パピルス」と言いって教卓の上に古ぼけた紙切れを出現させたところだった。
何だぁ、あのガラクタデバイスは。政府が無償で配ってるやつじゃん。自分の使うって言っててよかったぁ〜。
「ふむ、そろそろ時間だな。模擬戦を行う訓練棟に行く前に模擬戦をしてくれる人を紹介しよう。」
はいぃ〜!?
「今回模擬戦をしてくれるのはARデバイスでの戦闘経験がある、京と福田だ。よろしくな」
クラスがザワつく。まさかクラスメイトが行うとは思ってかなったようだ。高校1年生なんてARデバイス触ったこともまだないような世代だ。
「茶々ちゃんすごーい!!」
「福田、女子に負けるなよ!」
「頑張れ!茶々ちゃん」
クラスが湧き上がる中、雲母の顔だけが険しく祈るように目を伏せていた。