珍妙な子供
苦労性、家令視点
侯爵家家令たるもの、旦那様の意をいち早く汲み取り、あらゆる想定をし、動揺せずに物事を遂行する。
それは先達(親父)の教えにより常に私の行動原理になっている。
大旦那様から今の旦那様に代替わりなさろうともそれは変わらず、私の仕事も執事から家令になろうとも変わらない。
本日旦那様が珍妙な拾いモノを持ち帰って来た。
獣の血でグッショリと汚れたボロ切れだ。
いや、中身がある。
だいぶ痩せこけた子供だ。
スキルの鑑定で子供を観察する。
ミラ・エルク
人族 鑑定に失敗しました
10才 鑑定に失敗しました
状態 心因性記憶障害 栄養失調衰弱 心因性味覚障害 心因性視覚障害
レベル 鑑定に失敗しました
体力 1/4
魔力 鑑定に失敗しました
スキル 鑑定に失敗しました
称号 鑑定に失敗しました
ギフト 鑑定に失敗しました
何なんですかこの子は。
鑑定でこんな半端な表示になったことがありません。
何故種族の人族の後に鑑定に失敗しましたと表示が出るのでしょうか?
私よりレベルが高ければ【鑑定に失敗しました】と出るのは分かりますが人族の後にその表示が出るのはおかしくないですかね?
年もそうです。10才の後の鑑定に失敗しましたと出るのもおかしい。
偽装でしょうか?
どうみても5才程までしか成長していない。
しかし、体力が1とは少しの衝撃でもポックリ逝きそうですね。
まぁ、最大値が4なので赤ん坊並で良くここまで生き残れたものです。
この分では食事も固形物は無理でしょう。
少し治癒魔法で状態維持をして徐々に食事療法で回復が望ましいのかも知れませんね。
料理長には味覚障害がある事を踏まえて滋養スープを作ってもらいましょう。
侍女長には視覚障害がある事を伝え、専属メイドを手配しましょうか。
旦那様には鑑定結果と今後あの子供をどのように扱うか確認しなくては。
もう既にあらゆる可能性が脳裏によぎり、その想定の中で侯爵家にとって旦那様にとって最善が導き出される事を切に祈ることにしましょう。
ここまで読んで頂き有難う御座います。