小さなお嬢様
専属メイド、カリン視点
私メイドのカリンと申します。
先日新しくお迎え致しましたお小さなお嬢様、ミラ・エルクお嬢様の専属メイドに配属されました。
事の成り行きはお館様が領地の視察中、魔物が出る森の中で倒れていたお子様をお拾いになり、なんの気紛れかお持ち帰りになられたのです。
怪我は見当たらず、しかし意識が無く、衰弱や栄養不足もみられ、どのようにしてあの場にいたのか検討もつかず憶測で親に捨てられた子供という認識でした。
家令のルドヴィック様の鑑定が弾かれてしまい簡単な情報しか分からないとの事で目覚め次第、ミラお嬢様の状態を見ながら事情聴取となりました。
ミラお嬢様は可哀想な出で立ちのままこちらのお屋敷に運ばれて参りました。獣の血を大量に浴びたのか全身グッショリと濡れそぼり、頭の部分は乾いてきたのか黒い髪にもべったりと血濡れた状態でした。
私は率先してお嬢様を湯殿にお連れしました。
他にシャーロットとジャスミンも一緒です。
3人で手分けして意識のないお嬢様を洗い上げました。
その時の私たちの意識は一緒でした。
一刻でも早くお嬢様を清潔にしてあげたい。
血濡れのボロボロの衣服を脱がせるとガリガリにお痩せになったお身体が現れました。
それを見た瞬間、私は何故かポロポロと涙が溢れました。
私は自分が流す涙を気にせず、次の行動に移します。
適温になったお湯を何度も何度も丁寧に髪に当てていき、忌々しい獣の血を洗い流します。
その間、シャーロットはお身体を、ジャスミンは足や腕を担当しておりました。
更に石鹸で泡立てて何度も洗い流すと。
「ああ!髪が……」
ミラお嬢様のお綺麗な黒髪が獣の血と共に流れ落ち、白髪に徐々に変わってしまいました。
その後の私達の行動は更に迅速でした。
私は清潔になったお身体を拭き上げ、怪我等の有無を確認、発熱の為か体温が上がったお嬢様を暖かい寝間着でくるみ、急拵えのお嬢様のお部屋のベットへお運びしました。
その間、シャーロットが熱冷まし用のタオルや着替え等の手配。ジャスミンがお館様へ報告に向かいました。
用意を済ませシャーロットに後を任せて、私もお館様の元へ。
そして私、シャーロット、ジャスミンの3人がお嬢様の専属メイドとして配属を言い渡されたのです。
寝込んでいるお嬢様がいつ目覚めるのか、状態の急変も考えられる為、付きっきり三交代で様子を見る事に致しました。
シャーロット→私→ジャスミンの順です。
先日、シャーロットからお嬢様が一時目覚め、水を口にされて感謝の言葉を頂いたと嬉しそうに報告されました。
そろそろ目覚めが近いのでしょうか?
私の時にも目覚めて下さいますでしょうか?
ドキドキして参りました。
小さなお嬢様のお世話が出来る事を楽しみにしております。
ここまで読んで下さり有難う御座います。