制裁1
ここはアルデンテ王国、この街は1960年から6年間続いたサマルトリア連邦との戦争に負けたが、その後の経済発展が進み、ラグアジア大陸の中ではサマルトリア連邦、ルナ共和国に続いて3番目に大きな国へとなった。この国を大きくした要因は2つ、ジョイ・マックス社を中心とする自動車産業ととうもろこしの栽培である。そんなこの街のドライバーのジョン・ディーコンはしがない街のタクシードライバー、今日も様々な客を目的地まで運ぶ。時は2003年冬。ジョンはアルデンテの外れにあるダーマンフォレストで1人の客を乗せた。外見はシルクハットに厚くて黒いコートを着た男で、右手には黒くて大きいスーツケースを持っている。上流階級の民族だろうか。この街には3つの階級差がある。1つは上流階級(この国ではラットと呼ぶ)2つ目は商人階級。いわゆる一般人と呼ばれる種族だ。ジョンはこの階級に属している。そして3つ目は農民階級(この国ではコーンと呼ばれる)だ。ダーマンフォレストではいわゆるコーンと呼ばれる民族が住むわけだが、なぜこの男がここにいるのだろうか。ジョンはとても不思議に思う。しかし、これは仕事だから、どんな人であれ余計な詮索を入れるのはご法度だ。ジョンは男に尋ねた。
「お客さん、どちらまで?」
すると男は
「アルデンテ城まで行ってくれ。できるだけ急ぎで頼む。」
「わかりました」
そうジョンが言うと、スマホを取り出した。ジョンはこの国の道には不慣れで、スマホで道を検索している。そんなことをしていると客はそそくさと急かしてくる。
「早く出してくれないか」
そんなに言うならさっさと支度して向かえばいいものをとジョンは思いつつ、ダッシュボードから契約者とペンを男に渡した。男はそれを見て驚いた顔をした。
それもそのはず、そこには‘契約書 これから行う行為に関してこちら側は一切責任を負いません’と一文その下にサインを書く欄があった。男はその契約書にすぐサインをし、男にこう聞き返した。
「いったい何をする気だ」
ジョンは答える
「別に何もする気はございません」
そう言ってスターターを回すとエンジン後部から異様な爆音が響く。
男が懐からハンドガンを出そうとするのと同時にジョンはアクセルを思いっきり踏んだ。すると男はGにやられてそのまま後ろはベッタリ張り付いた。ジョンは快適にドライブしているが、男は殺されると思いなんとか銃をジョンの頭につけ一言
「この車を止めろ、でなきゃ撃つぞ」
ジョンは言う
「急げって言ったのはお客様じゃありませんか」
しかし内心、彼は焦っていた。後ろから銃を突きつけられるのはこの仕事をやっていて今回が2回目だからである。そのまま走り続けてると撃鉄を落とした音が背後から聞こえる。男はもうどうしようもないと思った。目の前にきついコーナーがさしかかる。それが見えた途端、ジョンはシートベルトを外した。そして
「ご希望ならば止まりますよ」
と一言言うとコーナーの前にある看板めがけてアクセルを踏み、ジョンは運転席のドアから飛び降りた。
束の間だった。車は轟音とともに電柱にぶつかり、中の男はそのまま前のガラスを突き破り、おもいっきり吹っ飛んだ。ジョンはすぐさま男の確認に行く。まだ息はあるようだ。ジョンは男が持っていた銃が付近に落ちているのに気づくとそれを手に取り。男の胸に3発撃ち込んだ。そして男が死んだのを確認すると、ジョンは後部座席に置いてあったスーツケースを手に取り、漏れたオイルに火をつけてその場を去った。