村へ降りる(中編)
二話に分けると言ったな?あれは嘘だ…。
「はぁ…はぁ…。死ぬかと思った…。」
「いやぁ!楽しかったね!」
「楽しくないよ…。」
俺は無事に食堂についた。
ガチャッ
食堂の中はとても賑やかで明るい雰囲気だった。
入るとすぐに恰幅のいいおばさんが父さんに話しかけてきた。
「あら?クラウスさん?いらっしゃい。」
「やぁ、カロリーネ。元気そうでなりよりだ。」
「あなたもね。ところでそちらは息子さん?」
「あぁ、そうだ。一番末のアベルだ。ところで席は空いてるかい?」
「空いてるよ。今日は酔っぱらいが多いから気をつけるんだよ。」
「はいはい。」
カロリーネさんの案内で空いていた奥の席に行く。
「はい。席はここでもいいかい?」
「あぁ、大丈夫だよ。ありがとう」
「注文が決まったら呼んでおくれ。」
そういうとカロリーネさんは厨房の方へ行ってしまった。
「アベル、どれにする?」
父さんがメニュー表を見せながら聞いてくる。
「んー…そんなに種類はないんだね…。」
メニュー表に書かれている料理の種類は5種類くらいしかない。お酒は沢山あるのに…。
「ん?そうか?どこも大体こんなもんだぞ?」
「そうなの?」
嘘だ…。
「あぁ。そういえば王都の方とかはあるんじゃないか?」
「本当!じゃあ今すぐ行こう!」
「ここから王都は遠いから今すぐには無理だよ。」
「えー!!行きたいー!」
「はぁ…。10歳になったら王都のパーティーに行くことになるからそれまで我慢するんだ。」
10歳か…。あと5年…?まてない…。
「うぅー。王都にはどうやって行くの?」
「はぁ。馬車に決まっているだろう。歩いていくのか?」
父さんが呆れたように聞いてくる。
「えっ!歩いて行けるの?」
「行けるけど外にはこわーい魔物がいっぱいいるんだぞー?アベルがそんな所にでたらすーぐに食べられちゃうぞー?」
1人で行こうとしてたのを気づかれたのか父さんが子供に言い聞かせるように言ってくる。
「わかったよ…。10歳までは我慢するよ…。」
「わかってくれたんなら良かった。」
父さんがほっとした様な顔をする。
「さぁ、注文するものは決まったかい?」
いつの間に来ていたのかカロリーネさんが聞いてくる。
「あぁ、じゃあ俺は角うさぎのステーキを頼む。アベルは?」
「えっとね!日替わり定食とスライムゼリー!」
「はいよ。作ってくるから待ってるんだよ。」
俺は数少ないメニューの中で1番気になったものを選んだ。
「父さん父さん。」
「ん?」
「魔物って食べれるんだね。」
「あぁ、そうだな。見た目があれの割に肉は美味い。」
「見た目?魔物ってどんな見た目してるの?」
俺がいつも行っている森では動物は見ても魔物は見ない。やはりファンタジー定番のゴブリンとかいるんだろうか…。
「魔物はなぁ。すっごい怖いんだぞぉ。」
「それはさっき聞いたよ…。」
「あれ?そうだっけ?」
父さん…ついに…。
「父さんはまだぼけてないからね。」
「あ、良かった。」
本当にぼけちゃったのかと思ったよ…。
「まぁ、魔物の見た目は王都に行く時にでも見れるだろうから。」
「えー。やだやだー。見たいー。」
このくだりさっきもやったなぁ。
「さ!そろそろ料理が来るから。」
父さんがそういうとカロリーネさんが厨房から出てくるところだった。
「えー!なんでわかったの??見てないよね???」
そう。父さんは1度も厨房の方を見てないのだ。
ちなみに父さんは厨房を背にして座ってる。
「さー。なんででしょー。」
後ろに目でも付いてるのか??
「ついてないよ。」
「え?!」
なんだなんだ…。超能力か??
「ふふ。アベルの考えることなんてすぐ分かるんだからな。」
怖すぎ。
「2人とも出来たから温かい内に食べるんだよ。」
「はーい。ありがとう!」
運ばれてきた料理はとても美味しそうだった。
日替わり定食にしてしまったせいで肉の中身がわからない謎のステーキとパン、それから透明なゼリー…。
「ふぅ…。」
「ん?どうした?食べないのか?」
「いや、食べるよ。いただきます。」
ステーキを小さめにカットして口に運ぶ…。
「……うまっ!!!」
普通に美味しい…。
俺はあっという間に料理を食べ終えた。
ちなみにスライムゼリーも美味しかった…。
「ふー。お腹いっぱい。ごちそうさま。」
「ん、食べ終わったか。」
「うん!」
「じゃあ外いくぞ。」
父さんがカロリーネさんに食事の代金を支払い外に出る。
「父さん、次はどこいくの?」
「市場だな。ここからは少し歩くぞ。」
父さんはそういうと俺の手を引いて歩き出した。
食後の運動はお腹に響く……。
ふぅ。市場かぁ、楽しみだなぁ。
三話に分けます。