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第三話 生き地獄を見せてあげよう。

少々、グロテスクです。

「よいしょっ、これで大丈夫ですか」

 やっと全ての枷が素肌に触れていない状況になった。これで、ようやく能力が使える。といっても、本来の一割も使えない。


 全身に着いていた砂塵も先程の水で殆ど落ちたようだった。


 だが、枷を腐食させることぐらいならできる。


 ゆっくりと枷が腐食していく。赤錆が凄い勢いで浮き始める。ものの数分で枷は全てボロボロになり手で外せる程になった。


「す、凄いですね」

「だろ。少し待っててくれ」

 濡れていた服も全て時間を巻き戻して乾かした。そして、完全に金属が全身から離れたので完璧に能力を行使できる。



「さぁて、地獄を見てもらおうかな。《時凪》《空喰》来ませい」

 二本の愛用の刀が両手に現れる。その姿に驚いたようにこちらを見る少女。



「な、なんですか! その剣は、どこから出したんですか!」

「ま、少し待っててくれよ。その枷、外すから」


 二本の刀を腰の鞘に納刀してから、指をならす。すると、ぼろりと枷が外れた。地面に落ちた衝撃で砕けるほどに腐食が進んでいた。


「少しの間待っていてくれないか? 俺一人でちょっとやるべき事があるからさ。必ず戻ってくる」


 檻すらも腐食で蹴るだけで倒れた。だが、その轟音でワラワラと盗賊達が現れることになってしまった。



「てめぇ、大人しく檻に戻れ! 今なら相応の罰で許してやろう」


「数が多いからって、調子に乗ってんのか? 俺は最上級にイライラしたんだよ」

 少し広い通路には六人ほどの盗賊が経っていた。まさか一晩と経たない内に逃げ出すとは思っても居なかっただろう。



「裏神楽二刀流、神楽 詩音」

「てめぇら、やっちまえ!」


 俺が話すのと同時に、思い思いの武器を持ってこちらに走ってくる盗賊達の姿が見えた。


 まったく動かずに、そのまま眺めていた。いや、動く必要がないから動かないだけだが。



「恐怖ですくんだかぁ?」

「なぁ、達磨って知ってるか?」

 質問に質問を返している。だが、三人の男の手足が重力に従って落ちた。断面が標本のように綺麗なままである。



 あまりの激痛に声を上げることもなく、気絶してしまった男達。動いてすらいないのにどうやって、と言うような顔をして後ずさる残りの三人。


 答えは簡単。空間をずらしただけである。空間がずれるとくっついていた物は強制的に離されるのだ。だが、刃物のような物で切断したわけではない。


 だから、回りの肉が潰れることがない。



 一瞬で残りの三人も達磨にしてそのまま放っておいた。もはや、両手両足が無い状態では生活すら出来ないだろう。その前に大量の出血で死ぬだろうが。




「さてさて、ボスはどこかなぁ?」

 時々出会う盗賊達は、全て達磨にした。だが、殺してしまえばそのまま苦痛に喘ぐことも無くなることに気が付いて、断面を回復させてあげた。


 これで大量出血で死ぬことはなくなった。ついでに言えば、四肢欠損をも治すレベルの回復魔法が通用しなくなった、とも言えるが。



 歩きに歩いて、ようやく奥の部屋についた。



「どうやら、ハズレを引いてきたみたいだな。俺の部下達をあしらいやがって」

 どうやら、声が聞こえていたらしい。睨み付けながらボスがこちらを見ていた。


「ま、そんなことは置いといてさ。今から地獄を見せるつもりなんだ。覚悟しといてね」

「部下達とは俺は違うぜ? なんせ元Bランクのハンターだぜ」


 恐らく、上にSとAの二つがあるが、そこまではたどり着かなかったのだろう。ちなみに詩音は前の世界ではSランクである。



「あ、そう。でもね。もう、遅い」

 ボスの足首から下が無くなった。それと同時に、手首から下も無くなった。


 だが、さすがボスである。どんな激痛でも気絶しなかった。その辺りはさすがBランクであろう。


「なんだてめぇ」

「強いて言うなら、魔王殺しの勇者かな?」




 倒れたボスの傷口を即座に癒した。その事実にボスが顔を絶望に染める。何て言ったって、もう元には戻らないのだから。



 首根っこを掴んでズルズルとボスを引きずっていく。辺りの惨状に顔を引きつらしていくボス。



「さて、戻ってきたよ」

「う、うん。おかえり」

 かなり血の匂いが充満している。それに、一度だけミスって返り血を浴びている姿に引かれた気がする。



「さてさて、ここにいるのは。俺達をこんな所に押し込めた張本人です。やっぱさ、こーゆーのは地獄を見せてあげないといけないと思うのよ」

「ア、ハイ」


 完全に目の前の少女が怯えている。殺気と言うより怒気が出ているのはわかっていた。ついでに言えば、引きずられているボスも怯えている。



 ボスを仰向けに寝転がらせる。バタバタと足掻いている。しかし、逃げ出すことは出来ていない。


「俺は神楽 詩音。お前の名前は?」

「ボクはナズナ・ガルル」


「そうか、ナズナ。ならさ、ゲームをしようぜ」

「はい?」

 ボスとナズナが同時に声をあげたのだった。




「だからゲームさ。ちょっとだけ下品だけどね」


「ほら、ここにさ俺達の敵が寝転んでいるじゃん? この男の息子を苛め抜くの。蹴ったり踏み潰したりしてね」


 どうしてかナズナが内股になった。不思議である。だが、小声で遠慮しときます、とだけ言ったので一人でやることにした。



「ふーん。ま、触りたくもないか。よしじゃぁ、一回目!」

「ちょっと、まっ! がぁぁぁぁっ」

 おもっいきりジャンプして飛び乗った。こんなんでは潰れる事はない。だが、かなりの激痛であろう。


「二回目~」

 どんどんジャンプして飛び乗っていく。ナズナが涙目になっていく。


 十回目ぐらいで気絶してしまった。ついでにもう一度だけ四肢を切り落としてから完全に再生させた。


 その後に、思いきり蹴ってボスを起こした。



「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

「ありゃりゃ、壊れたかな?」


 ずっと謝り続けているボス。完全に壊れてしまったのだろう。何を聞いても謝罪しかでてこない。



「ま、いいか。ナズナちゃん。行こう。近くに町があるはずだし」

「う、うん」


 ものすごく怯えられたが、ゆっくりと手を繋いできた。地球でも異世界でもほとんど握ったことの無い他人の手である。


 もにゅもにゅとした感触を感じながら、歩き出した。うっすらと月明かりが見え始めていた。

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