第二話 第一異世界人発見!(ただし盗賊)
「んー、とりあえず寝ようかな?」
ものすごく眠くなってきた。金属に触れていないのにだ。なんだか不思議と眠い。
「結界を展開してと」
近くの木に寄りかかりながら、対魔導及び物理に対抗するための結界を張ってから、直ぐに眠りについてしまった。
※※※
目が覚めるとどうやら捕まっしまったようだ。結界を不十分に張っていたのだろうか?だが、それはありえない。
一年間ほぼ毎日やっていた動作である。間違えることなどない。たとえ、どんなに眠くても、だ。
「見てくださいよ、兄貴。かなりの上玉でしょう? 不用意にも寝ていて気が付かなかったもんで、連れてきやした」
「ほぉ。生娘なのだろう? 高く売れるだろうなぁ」
下品な視線を当てられる。どうやら、盗賊の類いなのだろう。
「お前はなぁ、あの金属砂の取れる森で眠ってたんだよ。不用意にも熟睡してな。その事を後悔しながら高く売られろよ?」
奴隷として、だろう。前回から嫌というほどに見てきた。特に女の奴隷がどのような末路を辿るのかも知っている。
能力を使おうにも、手枷足枷が邪魔である。正確に言えば金属が、であるが。
金属砂。その言葉を聞いて理解した。大量に巻き上げられた金属を吸い、大量に全身に張り付いてしまった為に能力が発動しなかったのだ。
「お前らは、いつもこんなことをしているのか?」
「言葉の聞き方がなってねぇなぁ。やれ」
檻が開けられ、大量の水をかけられた。かなり冷えている。しかも、衣服が完全に水を吸ってしまっている。
「ほら、どうする? そんなびしょ濡れの服を着ていたら冷え込む夜には凍えて死ぬぞ? ほら、そうなりたくなきゃ。分かるよな?」
確かに、夜になれば冷え込むだろう。まぁ、一晩ぐらいじゃ死なないのは分かっている。
「売られるくらいなら、死んだ方がましだな」
「ちっ、強情な」
憎々しげに、睨み付けてからそのまま去ってしまった。
さて、困ったものである。この枷さえ外せれば問題は全て解決するというのに。素肌に触れているので駄目なのだ。
ほんの少しでも離れていたら、弱体化するだけですんだのに。
「あ、あの。大丈夫ですか?」
どうやら先客がいたらしい。目を凝らして見るとかなりの美少女がいた。この少女もどうやら捕まってしまったらしい。
「ん? あぁ、大丈夫だ」
「凄いですね。ボクにはあんなこと出来ないです。ボク、アナタとは違う選択をしたんですよ。水をかけられた時に」
どうやら、水をかけるのは恒例行事らしい。胸糞悪いが。だが、どのようなことになったのかとても興味があった。
「へぇ、どんな選択をしたんだ?」
「助けて下さい、なんでもします。って言ったら──」
この少女の話を聞いてから、言葉の選択を失敗したと思った。
どうやら、ここの盗賊のボスはかなりの変態なようで、少女の枷を全て外して、少女の自らの手で濡れた服を脱がさせたと言うのだ。
かなりの屈辱であろう。見知らぬ男にそのような目で見られるのは。
「なぁ、お願いがあるんだが」
少女の話を聞きながらイライラしだした。奴隷として売られるのも嫌なので、とっとと逃げることにしよう。
「ボクに出来ることなら、なんでも」
「俺の枷の内側に服を巻いてくれないか?」
こうなれば、とことんやってやろう。ついでにあの男には地獄を見せてあげよう。
「それならボクにも出来ます」