第十一話 軽率すぎたです。
久しぶりの一人だなぁ。なんだか、ずっとシオンさんと一緒にいたような気がするよ。出会ったのは三日ぐらい前なのにね。
それに、ボクはシオンさん言っていない秘密があるんだよなぁ。それは、ボクが本当は男だってこと。
嫌われるのが怖かった。言ったら、気味悪がられて去っていかれるのが嫌だった。仮初めでもいいから、この満たされた時間が長く続いて欲しい。
あ、村長さんがこっちに手を振ってる。こっちに来て、って言ってるみたい。待たせたらいけないから、走って──
「うわっ」
なにこれ。ぐしゃぐしゃのドロドロだよ。なんでこんな所に穴が空いてるの?危ないじゃん。
うへぇ、気持ち悪いよぉ。
あ、でも穴の深さは深くないみたい。ボクでも登れそう! それにしてもこのドロドロした泥が気持ち悪いよぉ。
何とかして、よじ登れた。その前に、二回落ちたけどね。
「すいませんね。忘れていましたよ。そこに落とし穴が有ることを」
「うぅぅ。良いですよ。ボクが悪いんだし」
村長さんが手を伸ばしてきた。これは、握手かな? でも手、汚れてるしなぁ。でも、握っちゃえ。
ふぇぁっ!
むぅ。まさか、引っ張られて後ろにも落とし穴があるなんて。しかも、こんどは白い粉が入ってるよぉ。
あれれ? なんだか、体が痺れてきたぁ。それに、熱い! 火傷しそうな程熱いよ。危ないよ。こんなの。
「大丈夫ですか!」
何とかして、村長さんに助けてもらったよ。うー。物凄く熱いよ、それにドロドロだし。最悪!
「一度、体を洗いましょうか。さすがに、その姿では依頼は出来ないでしょうから」
「はい……どうして、村長さんは依頼で来たって分かったんですか?」
だって、連絡がとれないから来たんでしょ? 向こうはそんなこと知らないはずだよね。それに、何となくだけどこの村には人が二人しかいないよ。
それも、ボクを含まないで二人しか。
でもまぁ、お風呂に入って体を綺麗にしよっと。
案内されたお風呂の脱衣場で汚れた服を脱いだ。びちゃびちゃで脱ぎにくいけど、頑張ったよ。
隣には、綺麗な服が出してあった。村長さんが貸してくれたんだ。男物で悪いけど、って言ってた。
ボク、男なんだけどね。
ふぅ、さっぱりした。って、あれ? 服が無くなってる。うそ、盗まれた。
あ、でも泥まみれの方は残ってる。良かった、洗えば良いもんね。っと。ぬ、掴んだだけで汚れたよ。
はーい、この泥まみれの服を水で洗って綺麗にしていきます。ごしごし……と、よし綺麗になった。じゃぁ、これを乾かしましょうか。
昔のボクなら、無理だったかもね。でも、今なら出来る。だって、耳があるから。
水人族の耳は特殊なんだ。水系統の魔術ならほとんど高い適正を持つんだよ。ま、切ればほとんど人間と変わらなくなるけどね。
だからこそ、今ならいける!
「水に愛されし子が願う。意のままに水を操る術を与えたまえ。それこそが、我ら水人の願いである。少しの間、神の御業を貸したまえ!」
ぐぅっ、久しぶりすぎて魔力制御が難しい。でも、なんとか乾かせた。これで、着れるよ。
「すいません! 上がりましたよ」
「はいはい。良かったです。それで、今回来た理由はなんでしょうか?」
一回、とても残念そうな顔をしたのはどうしてだろう。まぁ、いいや。