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ポッチは何故逃亡したか

 一心不乱に絵を描きまくっていたポッチだが、あれから3時間してようやく満足したらしく筆(多分ツヨシ)を置いた。


「ダンジョンマスターさん、本当に感謝します!すごくいいものが作れそうです!」


「…そうか。それにしても、本当に変わった獣人の子よ。流石はジェラルディンの………何故ジェラルディンは増えておるのだ。獣人はスライムのように分裂して増える生き物ではない…よな?」


 ダンジョンマスターらしきクリスタルなグリフィンは、今ごろになってわははと共鳴しながら3時間ぶっ通しで走り続ける迷惑なおっさんに気がついたらしい。

 迷惑なおっさんから聞いたが、コルド遺跡は迷惑なおっさんにとって絶好の狩り場であるため何度も通い…(多分強制的に)ダンジョンマスターと仲良くなったそうな。非常識なおっさんである。


「…ジェラルディンさんが…ふたり……」


 そして、ポッチもようやくこちらに気がついた。あまりにも気がつかないので、こっちはまったり夕食を食べてたよ。

 ぎぎぎ…と錆び付いたブリキの玩具みたいにぎこちなくポッチがこちらを向いた。


「すいませんごめんなさいロザリンドお姉ちゃんはもっと綺麗で可愛くて高貴で素敵です!初めてツヨシを使ったらイメージが色々混ざった結果ああなりました!すいませんでしたあああああああ!!」






 ほぼノンブレスで一気に言うと、ポッチは見事なスライディング土下座をして見せた。





「そうだよね!ロザリンドはもっと綺麗で可愛くて色っぽいよね!」

「そうですわよね!ロザリィはもっと綺麗で可愛くて高貴ですわよね!」


「え…」


 あの…ポッチと愛しのマイダーリンディルク様と親友のミルフィたんのテンションに、私がついていけないんだけど…


「ロッザリンドォォ!」

「ロッザリンドォォ!」


「偽リンドとヴァルキリーが共鳴している?」


「待って!偽リンドってハッスルなマッスルレディ!?」


「ぶはっ……ぐふふ…」

「ぐふっ…」


 とりあえず、笑った凛花にハンドクローをかましておいた。


「あだだだだだ!?ちょっ…ディルクさんもちょいウケしてたじゃないッスか!」


「んー、日頃の行い?」


「ぐっ、否定できな…いやいや、えこひいきッス!」


「じゃ、愛の差」


「ひいきッス!ひどいッス!痛いッス!いじめカッコ悪いッス!!」


 凛花がとてもやかましいので、しぶしぶ解放しました。




 ポッチはおずおずとディルクに問いかけた。


「ディルクさん、怒ってませんか?僕…僕…本当に本当にごめんなさい!お姉ちゃんを冒涜するつもりはなかったんです!わざとじゃないし、本気でお姉ちゃんはもっと可愛くて綺麗で気品があって優しくて「待て。誰それ」料理上手で頭もいいです!」


 途中で私がツッコミしたけど、ポッチはスルーした。


「…なんで俺が怒ると?」


「ディルクさんはお姉ちゃんを大切にしてるからです!生きたまま八つ裂きは勘弁してください!」

「しないから!ポッチ君は俺をなんだと思ってるの!?」


「相手が子供だろうと、お姉ちゃんが絡むと大人げなくなる超強いお兄さん…」


「……」


 否定できないディルクがいました。


「はっ!謎は…謎はすべて解けたッス!」


「謎ってなにさ」


「ポッチ君がコルド遺跡の最深部まで来ちゃった理由ッス!ポッチ君は強い魔物よりもディルクさんが怖かったから、ディルクさんから逃がすために偽リンド達は最深部まで移動したッス!最深部でポッチ君がダンジョンマスターさんの美しさに目がくらんでディルクさんを忘れたからここに留まったッスよ!」


「つまり、ここのダンジョンマスターが綺麗じゃなかったら…」


「延々と追いかけっこするはめになったかもッス!」


「…そ、そうかも…」


「ポッチ君は本当に俺をなんだと思ってるの!?」


「ロザリンドお姉ちゃんを誰より愛していて、お姉ちゃんを貶めることを許さない超強いお兄さん」


「……」


 ディルクは否定できなかった。私、愛されてます。


「でも、ディルクは謝ればちゃんと許してくれるよ?それに私が弟みたいに可愛がってるポッチにひどいことしたりしないよ」


 ディルクがめっちゃ頷いている。


「…うん。僕が勝手に怖い想像しただけだと今は思ってる。ところで、お姉ちゃん」


「うん?」


「ツヨシで具現化した絵って、いつ消えるの?」


「…………さあ?」




『………………………』




 あれ?急に静かになったよ??


「無責任ッス!」

「一匹でも手に負えないのに、二匹も面倒見る余裕はないよ!?」

「消しゴムとかないの!?もしくは自然に消えないの!??」


「…だって、私は絵は得意ってわけじゃないから試してないし。つーか、ジェンドはお父さんをペットかなんかと同じ扱いするのはどうなの?そして、消しゴムを作ったとして…消すの?」


「無責任ッス!」

「たまたま助かっただけであって、友達を死ぬほど危険な目にあわせるような父はペット以下の扱いでも充分だと思うよ?」

「……無理!消せない!」


「ジェンド、ジェラルディンさん達が悲しげに鳴いてるよ…ところで、消すにしても調べるにしても、どっちが本物だっけ?」



『……………………』



 誰も答えてくれなかった。どうやら皆見分けがつかないらしい。

 2倍になった迷惑なおっさんは、悲しげに鳴いている。どうしよっか?


 私はちょっと頭痛がしてきましたよ…。

 現在、もうすぐ100話記念企画を実施中です。詳細は活動報告をご覧ください。

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