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忘れた頃にやって来たてんさい

 ボッチなポッチ視点になります。

 ジェンドのお父さん達とはぐれて、なんとか隠れながら移動しているものの…このままじゃ魔物に食われてしまう。嗅覚がいい種族でよかった。視界は暗くて悪いけど、匂いで敵を察知できるから今のところ魔物に気がつかれる前に逃げ切れている。

 しかし、遭遇したら間違いなく終わりだ。考えろ!生き延びるにはどうしたらいい?必死に打開策を考えた結果、たまたまポーチに入れっぱなしにしてあったウルファネアボーイ6号のスーツを思い出した。


「うわ、すごい…」


 ウルファネアボーイ6号のスーツ。僕は空き缶拾いとか地道な作業にしか使ってなかったけど、暗いところもよく見える。走ればいつもより早く走れる。


 視界がよくなったおかげで運よく隠し部屋を見つけられた。しかも誰かがここで一泊したらしく、運がいいことにまだ魔物避けの結界がある。ここで自分の持ち物を確認することにした。

 よくアトリエにこもるから、幸いにも食料や水はそこそこある。節約すれば一週間は大丈夫そうだ。


 しかし問題は武器だよなぁ。コテとかペンじゃ、武器にならないしなぁ。果物ナイフならあるが、無いよりましぐらいだ。


『そんなことはありません!ペンは剣よりも強いのです!』


「…………………………」


 ヤバい。幻聴が聞こえてきたよ。ペンは剣よりも強いって…この場合は完全に違うよね。物理的攻撃力は剣が上に決まっている。搦め手ならやり方によっては勝ることもあるかもしれないけど、今回ペンはどう考えても役に立たないだろう。


『いいえ、諦めたらそこで試合終了だと母様が言ってました』


「だから、剣よりペンが強いってそういう意味じゃないでしょ!いくら努力したって物理的攻撃力でペンが剣に勝てるわけ…」


 そこで、僕はあるものが輝きながら浮いているのに気がついた。追い詰められたせいか、ついに幻覚まで見えるようになったらしい。


「そもそも、君…筆じゃん!」


 ついツッコミしてしまった。正直、ペンより攻撃力が低いよね!


『そうでした。てへぺろ』


 舌も無いよね。筆だし。


『ありませんね。筆だし』


「『………………』」


「筆がしゃべった!しかもアルディン並みに光ってる!!」

※基本幼少期に呼びすてだったので、今も公式以外では呼びすてです。


『はっはっは。ご主人、散々話しといて何を今さら』


「…まぁ、確かに。君は確か…ロザリンドお姉ちゃんがくれた筆だよね」


『はい。(ペン)は剣よりも強し…略してツヨシと申します』


「だからペンじゃないよね」


『ツヨシです』


 ダメだ。ジェンドのお父さん並みに話が通じない筆だ。


『ですから、ツヨシです』


「ええと…さっきから僕の思考にも返事してない?」


『ツヨシはご主人専用の筆ですから、ご主人の思考を読み取るなど簡単です。今までもツヨシはご主人が出したい色を出していたでしょう?』


「ああ…」


 そうだった。ツヨシ(仮)はロザリンドお姉ちゃんが武器としてくれたけど用途が不明の望んだ色を出してくれる便利なお気に入りの筆だった。


『思い出してくれましたか』


「…まあ、うん。急に喋りだしたのはなんで?」


『そのロザリンジャースーツ殿によりご主人の魔力とツヨシとの結び付きが上がったのと、ご主人のピンチにツヨシが助けたいと願ったからです』


「ありがとう?」


 ロザリンドお姉ちゃんが作ったものって、なんで皆こんなに個性的なんだろう。ツヨシ(仮)は筆のくせにネックスより表情豊かだ。

 筆が喋るのも、きっとロザリンドお姉ちゃんが作ったものだからだ。ヴァルキリーみたいなものなんだ…多分。


『さあ!さあさあさあ!ご主人!!今こそツヨシを使うときですよ!』


 興奮したツヨシに詰め寄られた。使うって………







 僕は予備のシーツに岩の絵を描いて隠れながら進んだ。ツヨシの効果でただの岩にしか見えないらしい。実際魔物が近くを通ったが、気がつかれなかった。


『どうです!ツヨシスゴいでしょ!ツヨシスゴいでしょ!!』


「…うん」


 ツヨシの声は僕にしか聞こえてないようだ。これだけ騒いでいるが、魔物は寄ってこない。


「…!!」


 慌ててまたシーツをかぶる。魔物は素通りして行った。離れたのを匂いで確認してから移動する。


 そんなことを繰り返していたら、血の匂いがした。行かない方がいいのは理解している。僕は弱い。


 でも、だけど…僕は許せる?


 僕を見て見ぬふりしていた大人達みたいに、見知らぬ人とはいえ、見捨てた僕を…許せる?




 無理だ。許せない。




 僕は血の匂いに向かって駆け出した。




 そして、ツヨシ(仮)が僕の想いに応えた。


『ご主人、ご主人の熱い想いは受け取りました!今こそツヨシの真の力を発揮すべき時!この世で一番強いものを描くのです!!』


 僕は、ツヨシを手に取り描いた。この世で一番強いものを。不思議なことに、ツヨシの絵の具は中空を漂い、思い通りに描くことができた。




 そして、絵の完成と同時に叫んだ。




「創造の翼よ、羽ばたけ!!」





 完成した絵が、立体となり雄たけびを発した。


「ロッザリンドォォォ!!」







 僕は、その出来ばえを見たとき『ディルクさんに殺される』と思った。

 ついに目覚めた相棒(ツヨシ)の力で、少年は立ち向かう。


 次回、ウルファネア戦隊ロザリンジャー!

 戦女神と目覚めし6号!!


 合言葉は『ロッザリンドォォ!!』



※次はロザリンド視点になります。作者の気分により、内容は大幅に変更する場合がございます。ご了承ください。

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