ポッチ行方不明事件
ロザリンド視点になります。
何事もなく穏やかな夕方の帰宅時に、事件が起きてしまった。
鳴り響く某筋肉なマンのテーマソング。うちの脳味噌筋肉英雄の固有着信音だ。彼からの通信はとても珍しい。嫌な予感しかしないが、放置するわけにもいかない。
「はい、こちらロザリンド」
「主、すまない…」
「お姉ちゃん、ポッチが穴にコロリンしちゃった!」
「お姉ちゃん、ポッチがはぐれちゃった!」
「え?」
まったく状況が読めない。ジェラルディンさんは説明がど下手なので実家の双子天使達に確認した。
なんと、コルド遺跡(最終ダンジョン)でジェラルディンさんが魔物に体当たりされ、ポッチが穴に落ちたという。ボッチなポッチ…とかボケてる場合ではない!ポッチが通信魔具を持っているかは不明だが、ダメ元で通信してみるも不通。そもそもあのダンジョンは魔法を受け付けないから転移不可。ポッチがまだダンジョン内部にいるなら、通信魔具があっても通信不可だろう。
「ジェラルディンさんはそのままポッチの探索を!ルチルとルシルは戻りなさい!ジェラルディンさん一人の方が早い!私は応援を頼んだらすぐ探索に加わります!!」
「ロザリンド、俺も先行するね!」
頼れるディルクが先行して探索に向かってくれた。
「お願いします!」
もはや時間との勝負だ!
私はすぐに冒険者ギルドへ行き、依頼を出した。幸い自由な風と紫水晶の護りの手が空いていたため指名依頼をし、兄、凛花、ミルフィ、シーダ君も捜索に参加してくれた。
ポッチにはウルファネアボーイ6号のスーツを持たせてある。あれを持っていて使っていれば生存率は格段に上がるが、そもそもポッチがスーツを持っているかが不明だ。しかもなんの準備もなくジェラルディンさんが連れ出したらしいので、食料や武器も持ってない可能性が高い。
おまけにはぐれた場所が最悪だ。コルド遺跡は最終ダンジョン。敵も超強い。だから、ジェラルディンさんが体当たりされてポッチを落とすようなへまをやらかしたわけだが。
魔物をひたすら倒しながら迷宮を進む。
「ポッチ!ポッチ、どこ!?」
お願いだから、無事でいて!!私は必死でポッチを呼んだ。精霊さん達や魔獣さん達も探してくれている。
「ポッチ、ポッチ!!返事して!!」
必死で叫ぶ。
「ロザリンドちゃん、闇雲に探しても駄目ッスよ」
「凛花…………」
凛花は蝶ネクタイに短パンだった。眼鏡とショートカット…なんか縮んでちんちくりん度が上がっている。
「見た目は子供!頭脳は腐女子!その名は、名探偵リンカ!!」
「今はノーおふざけでお願いします」
私のハンドクローが炸裂しました。忙しいときになにしてんだバカが!
「あだだだだ!ロープッス!闇雲に探しても駄目ッスよ!ジェラルディンさんとはぐれた穴は地下10階から11階に繋がってたッス!時間から見てポッチ君は10階か11階にいると思うッス!避難のため12階にいる可能性もあるッス!」
「最初からそう言え!」
魔力妨害対策済みの通信魔具で捜索している皆に連絡した。
そして、迷宮を進む冒険者から目撃情報があったのだが、不可解なものだった。
「こちらディルク。ロザリンド、応答して」
「ディルク?」
「…まだポッチ君は見つけてないよね?」
「うん」
ディルクが何やら言いにくそうだ。
「…ヴァルキリーも一緒だよね?」
「うん」
うちのヴァルキリーなら、今は阿修羅モードで敵を倒してるよ。
「あの、12階でポッチ君らしき子に助けられた人がいるんだ。ウルファネアボーイ6号と名乗るピチピチスーツの多分少年とロッザリンドォォと名乗る凛々しい美女に助けられたって…」
「なんでそうなった!?」
「うん…ロザリンドは美女だけどロッザリンドォォと叫ぶのはヴァルキリーだし…」
とりあえず、ウルファネアボーイ6号はポッチの可能性が高いが…同行者に嫌な予感しかしない私がいた。
ポッチ、本当にどうなってんの!?とりあえず、無事でいるのは喜ばしいが、混乱しつつ必死でポッチを探すのでした。
そして、私はてんさいは忘れた頃にやって来るということわざを体験するのです。
てんさいがひらがななのはわざとです。
次回!ウルファネア戦隊ロザリンジャー!!
まさかまさかの大冒険!
ポッチの秘められた才能が開花する!?
『覚醒の6号』をお見逃しなく!!
※なお、内容は作者の気分により勝手に変更される場合があります。ご了承ください。




