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なんで皆無茶するかなぁ

 水月さん達が作った糸で作った布は、天女の羽衣のようでした。ふわりと軽く、滑らかで柔らかに輝いている。染色もしやすいらしく、色とりどりの布をミス・バタフライが持ってきた。


「見て見て!アタシが欲しかったのはこれなのよぉぉ!!」


「まあ!素晴らしい出来ね!」


「これならばお嬢様に相応しいドレスになるでしょうね」


 盛り上がるミス・バタフライと母・マーサ。しかし、私はげっそりした水月さんが気になる。とりあえず回復魔法をかけたが、一晩でやつれている気がする。いや、蜘蛛達も弱ってる!?


「水月さん…何があったの!?」


「おなカ、すいタ…」


 うずくまる水月さん。


「たんとお食べ!!」


 水月さんは人型になったら味覚が変わったらしく、人間のごはんも食べられるようになりました。生肉貪り食う美女は見たくないのでよかった。蜘蛛には生肉をあげました。たんとお食べ。


 落ち着いたところで何故やつれていたのか聞いたら、必死で糸を作り寝食を忘れたとのこと。


「忘れないで!寝食大事!!休んで!」


 何故私の魔獣さん達はこんなにも献身的なのだろうか…解せぬ。


「主、嬉しくなイ?」


 水月さんがしょんぼりした。


「嬉しいよ。綺麗な糸は嬉しいけど、水月さんがやつれてるから悲しいが大きい。あのね、私は貴女達がとても大切なの。だから、無理をしたら悲しいの。糸より、水月さんが大切。そこは解って」


「主…」


 水月さんはウルウルしていた。何やら他の蜘蛛達と会話している。とても嬉しそうで可愛い。


「ね!ワタシの主は世界一なのヨ!」


 過大評価はやめていただきたい。頷くな、蜘蛛達よ。


「主、仲間達も主に仕えたいって言ってるヨ」


「駄目!うちの子は水月さんだけで充分です!」


「主、控えめだから自分を過小評価してル。ワタシも仕えるまで長かっタ。諦めないが、大事」


 頷く蜘蛛達。


「いやいや。待ちなさい、水月さん。そんな長期戦してまで仕えるようなご主人様じゃないからね!?」


「ワタシ達を厭わなイ。モノでなく『ワタシ達』として見てくれル。身内…群れに優しイ。あり得ないぐらい強イ。主以上のご主人様なんテ、この世に存在しなイ」


 力強く、誇らしげに力説されました。


「いや、きっともっといいご主人様が居るはず!」


「例えバ?」


「アルディン様!」


「まぶしイ」


「一言で否定された!?」


 彼らは基本夜行性だから眩しいのは嫌なんだそうです。知らなかった。


「アルフィージ様」


「黒いから嫌」


「………………」


 否定できない私がいました。使えるものは使う派だしなぁ…為政者としては正しいけど…


「兄様」


「悪くないけド、植物の方が好きだよネ?」


「……………」


 否定できない。


「でも、兄様は蜘蛛好きだよ!」


「害虫駆除するからでしョ?」


「………………」


 否定できない。


「ジェラルディンさん!」


「悪いひとじゃないけド、馬鹿には仕えたくなイ」


「辛辣!」


「なら、なら…ミルフィ!」


「ミルフィ?あの子は蜘蛛苦手みたいだヨ」


「……………………」


 もはや八方塞がりだ。


「それ二、主と同じぐらい強いのっテ、ディルク様ぐらいだヨ。ディルク様も、オススメ」


「……仕えるとかじゃなく、たまに遊びにおいで」


 ディルクに仕えたら同じことだよ。確かにディルクはオススメだけどね!もはや説得不可能と悟った私は、蜘蛛達に力なくそう告げたのでした。


 それから休息と食事はきちんとさせてくれとこちらもよくみたら隈ができてたミス・バタフライにもよく話して解散となりました。








 改めてよく見てみると、布は透けていてまるで清流のようです。光にかざすと虹ができる。すごいドレスになりそうな予感ですね。


「ロザリンドちゃん、母様すごいの作るからね!」


「ありがとうございます。マーサ、母様が無理しないよう見張っててね」


 かなり健康になった母ではあるが、無理をすれば寝込む。マーサに母の体調管理をお願いした。


「もう、無理しないわよぅ」


「お任せくださいませ、お嬢様。奥様、お嬢様のドレスデザインで三連徹して寝込んだばかりでございましょう」


「きゃああ!?マーサ、それをばらしたらだめぇ!!」


「……母様?」


 アワアワしてマーサの口を塞ぐ母は可愛いが、聞き捨てならない。


「む、無理はしないわ」


「約束ですよ?母様に何かあったら、泣いちゃいますからね?」


「ロザリンドちゃん…」


 苦笑する母、かわゆす。


「そして兄様に言いつけて味も効果もスッゴい汁を飲ませますからね!」


「ロザリンドちゃん!?汁って何!?」


「兄特製の味を度外視したトンデモ汁です。味も効果もスッゴいですよ」


「無理しません!」


 母は必死でした。私も汁の出番がないことを祈ります。ドレスは職人さん達もヘルプに入っていただいて作ることになりました。完成が楽しみです。


 追伸・汁は念のため兄に頼んで用意しておきました。1回だけ使った、とだけお伝えしておきます。

 母は泣きながらもう無理しないからと一口でギブアップしました。

 蜘蛛さん達はドレスができてからもローゼンベルク邸またはバートン邸に来るようになりました。子供が好きで孤児院で子供達と遊んであげたりしているようです。


 健康になった母は、たまに無茶をするようです。基本的に倒れないようマーサが止めますが、今回は言うことを聞かなかったので汁の出番が来てしまいました。

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