がっかりとワクワク
時間は少し巻き戻り、凛花が罰掃除をしている放課後。手伝ってやりたかったが私も仕事があるし仕方ない。
しかも、毎日マイダーリンが私をお迎えに来てくれているのですよ!帰りに馬車でイチャイチャするのが私の楽しみなんです!転移なら一瞬だけど、馬車で揺られながらディルクの膝に座って学校であったことを話すんです。ディルクったら『一緒に学校はいけないけど、せめて登下校だけでも一緒にしたいんだ』とか言ってくれて……あああ、ディルクが好きすぎて辛い!
バートン侯爵の家紋が入った馬車に乗り込む。しかし非常に残念なことに、先客がいた。
「何しに来たんですか?」
ロザリンド・ブリザードが大発生である。だって、だって!ディルクとイチャイチャしようと思ったら、校長がなんでか乗ってたんだもん!いや、状況はわかるよ?出待ちしてたらディルクが見かねて(多分)助けてあげたんでしょ?でも、私とディルクの貴重なイチャイチャタイムを削減するなど………許せん!!
あれだ、めっちゃ苺ショートが食べたかったのに売り切れだった時レベルのガッカリ感…!そして怒り!
「ロザリンド、おいで」
ディルクがブスッとした私に苦笑して呼んだ。お膝に乗っけてくれたので、ちょこっと機嫌は直りました。しかし、まだ私は不機嫌ですよ。
「…お家で今日は好きなだけモフッていいから…」
機嫌、直りました!ディルク限定でチョロい私です。家に帰ったら、お腹とかもふりまくる!
「さて、お話をうかがいましょうか」
まあ、内容は予想よりちょこっと……いやだいぶ酷かった。
私達が一斉に転校したことでやはり他貴族も一斉に転校したらしいのですが、その上学校側に問題があったのではないかと悪評がたち、元々いた貴族達まで転校しかねない。学校から貴族が居なくなりかねないところまで追い詰められているらしい。
「んー」
きっかけになっちゃった身としてはどうにかしたいが、そう都合よくホイホイアイディアが出るわけもない。私は超人ではないのだ。基本的には凡庸な人間だ。
「…状況は把握いたしました。今回の件のきっかけは確かに私ですし、何かしらの対策をするとお約束しますわ」
「ありがとうございます!」
とりあえず、校長にはお帰りいただいた。しかし、頭が痛いな。どーするかなぁ…しかもこれ、シルベスターを辞めて戻ればいいって問題でも多分ない。今度はシルベスターに悪評がつく。しかも、ちょこっと在学してすぐの転校だ。シルベスターがひどい学校だと噂される可能性は非常に高い。
「むー」
いい案が思いつかないなー。
「ロザリンド」
「ん?」
ディルクが私の頭を優しく撫でる。気持ちいいのでディルクに寄りかかって甘えた。
「今通ってる学校の教員が昔の…騎士団時代の先輩で、臨時講師を頼まれたんだ」
「うん」
「週2回なんだけど、その日はお昼を一緒に食べた…い!?」
ぎゅっとディルクに抱きつく。嬉しい!
「ディルク大好き!もちろんです!超嬉しい!!んもー、愛してる!今夜は寝かせませんよ!」
「!?う……うん」
まだまだ新婚とはいえ照れるディルクが可愛い。
「でも、仕事大丈夫?」
一緒に居られる時間が増えるのは嬉しいが、ディルクの負担が増えるのは困る。
「楽隠居しているまだまだ働ける頼りになる元侯爵様に仕事を押しつけるから大丈夫」
「そんな抜け穴が……」
今度お義父様にさしいれしよう。そうしよう。間違いなく安心ですね。
「今の仕事が片付いてからだから、来週からの予定だよ」
「わあ、楽しみ!あ、でも……」
シルベスターは獣人差別が強い。ディルクが不快な思いをしないだろうか。
「大丈夫。それもあってでお願いされてるから」
ウインクしたディルクはかっこよくて、めちゃくちゃときめきました。
ディルクは、私の旦那様は本っ当に素敵すぎます!
馬車でディルクにうっとりしながらいつもみたいに学校であったことをお話しするのでした。
なんか足りない…と思ったら、ディルクが足らなかったんですね(笑)
ディルクも参戦するみたいです。