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思いつきの代償

 ロザリンド視点に戻ります。

 ダンが欲しいのは、肉やモツだから、魔石や骨、鱗や殻なんかは基本大半が不要になる。出汁をとるにしても、量が多い。もったいないのでお持ち帰りした。なんか作れるかもしれないし。

 とりあえず、魔石はエルンストにあげようとした。エルンストに何も言わずソッと魔石…いやでかいから魔岩?を渡したら、真っ青になって断った。


「おまっ、こんな高価なもんをポンとよこすなよ!!なんでこんなバカでかいやつ…何してきた!?」


「元手はタダですよ!人をトラブルメイカーみたいに言わないでください!結婚式の料理に使う最高の食材を狩ったからです!これ使えば、エルンストが造りたかった超大型飛行魔具が造れますよ~」


 ジャンボジェットみたいな、たくさん人が乗れるやつです。魔石の出力の関係で、計画は出来ていたものの実用化には至らなかったんですよね。


「ぐ…!」


「造ったら、きっと操縦者の負担が軽減しますよねー。たくさんの人が乗るとこに使えたら便利ですよねー」


「ぐぐ……」


「もちろん見返りは求めますよ。造ったら、私の結婚式で送迎してほしいなー」


「…わかった」


 エルンストがようやく折れました。彼は魔岩を調べて飛行魔具に適したものを選び、3つの魔岩を受けとりました。


「少なくない?研究費のためにもう少し…」


「少なくない。造ったら試乗させてやるよ」


 すっかりひきこモヤシを返上したエルンストは、コミュ障も治してしまいました。優しく微笑むエルンストはすっかりモテるようになり、理系イケメンに進化しています。友人の成長を感じつつ、魔法院を後にしました。







 さて、残りを賢者に押しつけようかとも思いましたが、少しギルドに売却することにしました。結婚式、莫大なお金がかかるかもしれないから実家の負担を軽減するためです。私って倹約家のいいお嫁さんだね(自画自賛)




 冒険者ギルドは、なんか忙しそうだった。冒険者が行列を作ってるとかではなく、通信魔具が鳴り止まなくて受付のお姉さまやギルドマスターまでてんてこ舞い………出直そうとギルドを出ようとしたら、ギルドマスターから肩を掴まれた。


「…ちょいとお話をうかがえますかね?お嬢様」


「……………え?」






 ギルドマスターの執務室に通された私。くそぅ、ジェラルディンさんも連れてくるべきだったかな?


「…今、各国で討伐不可能・監視対象と認定された魔物が次々と消える事件が起きている」


「…………………」


 それは、もしや…


「心当たりは?」


 ありすぎるが、貴族スマイルでにこやかに対応した。今こそガラスの仮面をかぶるのよ、ロザリンド!!


「…ございませんわ」




「「……………」」



 室内に沈黙が落ちた。


「…実は、SSランクパーティである『破天荒解』がとある魔物と交戦した」


「はい」


「その魔物は、ヤマタノ獣王牛鳥。かつて英雄・ジェラルディンが討伐した魔物と同種であったと思われる」


「………はい」


「実は破天荒解は戦いたくて戦ったのではなく、たまたま別の依頼で居合わせ、ヤマタノ獣王牛鳥が村へ襲いかかったために戦わざるをえなくなった。さらにたまたま近くにいたとある勇者のおかげで結果として被害はなかったのだが、一般人も守らねばならず、やられるのは時間の問題だったらしい」


 そのとある勇者って…私はその場にいなかったわけだから…該当者は一人しかいない。


「……………はい」


「破天荒解がせめて一般人だけでも避難させようとしたら、ヤマタノ獣王牛鳥は消え失せた。そして、声が聞こえてきたらしい」


「……………声?」


「なんでも若い女性と少年が、

『あれ?この魔物怪我してんじゃん!討伐途中の獲物を横取りはマナー違反でしょ!?』

『戻してもいいけど、多分たくさん人が死ぬよ?』

『待て!戻さなくていい!』

…という会話をしていたらしい。……心当たりは?」


「ありま…せん!」


 私だって証拠はないもんね!


「たまたま近くに居合わせ、同じく交戦した勇者が『あれはロザリンドちゃんの声に違いないッス!助かったッスね!』と言っていたらしいが?」


「凛花ぁぁぁぁ!!」


「…説明してくれ」


 私は観念した。ギルドマスターに詳しく経緯を説明しました。


「…………そうか。未だ見ぬ脅威まで狩ったのか」


「ええと、まさか騒動になるとは思わず…読みが甘くてすいません…」


「いや、被害を防いでくれたわけだから、ギルドマスターとしては礼を言わねばならん。さて…君個人に実はもう一つ用事がある」


「………はい?」


 他には何もやらかしてないはずだ。私は首をかしげた。


「君のランクはSSSランクだ。しかし、英雄・ジェラルディンを越える功績を残している。本当に世界を救った勇者様だからな。実は、SSSランクより上のランクを作る話が出ている」


「だが断る」


「……聞いてくれ」


「絶対NO!!」


 聞きたくない!とイヤイヤしたが、無情にもギルドマスターは語った。


「……今回の功績で間違いなく君のギルドランク昇格が決定するだろう。前人未到の新ランクに、だ」


「い、いやああああ!?はっ!ジェラルディンさんも一緒に狩りました!ジェンドとジャッシュもです!!」


「…わかった。ジャッシュ殿はギルドに未登録だったな。ジェンドは今回で昇格するだろう」


「冒険者ギルドなんか脱退してやるぅぅ!!」


「やめてくれ。君のギルドへの貢献度は非常に高い。抜けられたら困る」


「なら、昇格中止して」


「………やってはみる。だが、もし無理だったら?」


 ギルドマスターは約束を守るだろうが、上が聞いてくれない可能性は高い。ここは私も妥協すべきだろう。


「…………ジェラルディンさんもセットで昇格なら…」


「それは問題ないだろうな。しかし、流石はルーファスの娘だ。何をしでかすか全く読めん」


 ギルドマスターは笑って父の珍プレーを語ってくれた。父は昔から父でした。

おかげで気は紛れましたが…まさか食材調達にこんな落とし穴が隠れていたなんて…!

 とりあえず気を取り直して素材の一部を売却しようとしたら、時価(オークション)になると言われました。深く考えずすべて実家に送金するよう依頼しました。


 後日、私も見たことないレベルのとんでもない大金が実家に運ばれて、兄に呼び出され…

『説明!!』

『へい!喜んで!!』

…というやりとりがされたのは、言うまでもない。


 ロザリンドの名案の代償は、前人未到の新ランク昇格でした。


 ロザリンドが思いつきで行動すると、大概ナニかが起きますね。

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