表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/192

ロザリンドと料理人

 結婚式に、美味しいご飯は付き物です。やはりコース料理がよいでしょうか。それとも、立食パーティ?


 というわけで、我が家のメインシェフで付き合いの長いダンに相談に乗ってもらうことに。兄?兄はミチェルさん達とお出かけ中です。


「お嬢様」


「はい」


「結婚式の料理は、その家の料理人の腕を問われるものだ。俺は、お嬢様と最高のフルコースを作りてぇ!」


「ダン…!」


 なんというやる気!私も頑張らなくてはと思いました。


「お嬢様!俺は世界最高の、コメを活かした世界初のフルコースを作りてぇんだ…!!きっとお嬢様と俺なら、できる!!俺も年だ。俺にとってお嬢様の結婚式のフルコースを、人生最高のものにしたい!!」


「…ダン!!わかりました!やりましょう!!」


 お米のことまで考えてくれていたなんて…!メインシェフはダン、サブシェフや当日雇いの料理人を募ったところ……


「ダン、この顔ぶれは何!?」


「あ~、腕は確かだぜ?」


「大半が王宮の上級料理人ってどういいこと!?確かに腕は確かでしょうよ!」


「昔の勤め先の仲間でな。給金安くてもいいから、お嬢様と俺のフルコースを味見したいんだとよ」


 なるほど。異世界知識チートの私が腕のいいダンと作るご飯を食べたい。わからなくはない。


「じゃ、ついでだからメニューの相談に乗ってもらいましょうか」


 王宮の上級料理人ならば、メニュー作りもお手のものでしょう。


 色々話し合った結果、フルコースでということになりました。立食だと人気あるものばかり減ってしまう恐れがあり、この人数でやるにはあまりにリスキーだからとのこと。


 こっちのフルコースも大体、異世界(むこう)のフルコースと大差なかった。違うのはソルベ(口直しのシャーベット)と食後のコーヒーぐらいかな?こっちはまだまだ紅茶がメインでコーヒーは普及してない。その話をしたら、ダンが異世界のご飯を食べてみたいと言い出した。


 そうなれば、当然王宮の上級料理人のおいちゃん達も黙ってない。異世界料理、しかも本場のなんて料理人なら誰だって食べたいだろう。


「…ちょっと考えさせてください。それから安全性を考えて、連れていけるのはあと一人です」


 界渡りするなら神に一応許可を貰ってからがいいだろう。


「いいよ~」


 軽い(シヴァ)は今日も白くて軽かった。


「ふむ…かまわぬ」


 天ちゃんパパこと、天狐様もあっさり了承してくれた…どころかたまには美味いメシが食いたいと同行することに。

 渋いイケおじに囲まれる悪人顔の私。ついでにと連れてこられた天ちゃんから一言。


「なんか、凛…ロザリンドさん…姐御って感じ」


「従えてないわ!」


 髪が目立つので、外国人で誤魔化せるよう茶髪と青い目に変えました。黒髪黒目だと違和感が半端なかったよ。顔が明らかに西洋人だからね。


 天狐様のわがま…おねだりにより、三ツ星レストランでフルコースを食べることになりました。

 どれも綺麗でおいしく、ダンと王宮の料理長さん(いつの間にか混ざってた)が話し合いつつ食べてました。


 そして、ダンが言った。


「シェフを呼んでもらえないか?」


「ダン?」


「大丈夫だ、お嬢様」


「??」


 何が大丈夫なのか解らないが、とりあえずダンが落ち込んでいるのは解る。


「何かありましたでしょうか?」


 シェフは優しそうなおじ様でした。


「私は傲っていました。お嬢様の素晴らしい食材はそれだけで美味い。だが、この料理は…普通の食材のポテンシャルを最高に引き出している。1品1品だけでも芸術品だが、そこにさらに全体のバランスも考えられている…こんなにすごい料理は生まれて初めてだ」


「いや、ありがとうございます」


 シェフさんも嬉しそうに微笑んだが、私はダンが思い詰めたような表情なのが気になった。



「弟子にしてください!!」



……………………はい?




「…………………はい?」


 優しそうなおじ様シェフさんも固まった。偶然にも私と同じことを考えていた。ダン、何を言っちゃってんの!?


「お願いします!雑用でも何でもいたします!弟子にしてください!!」


「ええええええ…」


 困惑するシェフさん。ですよね!私も困惑してるわ!


「俺も気持ちは解る…ダン、後の事は任せとけ!」


「煽らないでください!」


 無責任に煽る王宮の料理長さんに注意するが、ダンはまったく引く気がなさそうだ。


「ふむ、凛よ」


「ふへ?はい」


 急に天狐様から話しかけられて首をかしげた。


「お主が望むなら、この者を修行させてもよいぞ」


「いや、そんな勝手に…」


「儂からの結婚祝いだ。愚息が以前迷惑をかけた詫びでもある。どうする?」


 ダンにはお世話になったし、ダンがやりたいなら望みを叶えてあげたい。


「お願いします」


「ふ…まったく、お主も言葉も他人のためなら願うのだな」


 天狐様の力によるものなのか、シェフさんはにっこりしてダンを連れていった。


「あの者が満足したら儂が責任もってそちらに連れていく。待っておるがよい」


「ありがとうございます、天狐様」




 そして、1週間後。




「待たせたな、お嬢様!和食、洋食、中華、インド料理…なんでも作るぜ!」


 ダンがだいぶ若向きの格好で帰ってきた。しかも、フレンチだけじゃないの?


「…天狐様?」


「いやっ…その…この人間がなかなか満足しなくてな?」


「…天狐様?」


「仕方がないからちょいちょいっと時間をずらしてばれない程度に若返らせたらちょっとやりすぎて…すまん!」


 天狐様はやっぱり天ちゃんのパパだ。懐に入れたものに甘く、優しい。


「わかりました。お祖母様に言いつけます」


「凛!!?それだけはやめてくれ!あれの説教は長いのだ!」


「知ってる」


 渡瀬の祖母は、説教が長くて無限ループになる。しかも昔のあれこれまで引っ張り出してくるからタチが悪い。

 根っこから悪い人ではないが、クセがあり凛花は嫌いまくっていた。こと姉ちゃんとの折合いも超最悪だった。こと姉ちゃんについては、義娘と継母だからだろうけど。


「凛!??」


 かる~く若返らせたりとかするからですよ!でも悪気はないので今回だけは勘弁してあげました。



 なんて、嘘です。



 すまんで済んだら警察要らないんですよ!湊さん経由でばっちり祖母に伝えて、きっちりみっちりお説教していただきました。

 さらに、祖母から『一度は顔を見せに来なさい』とのお返事をいただきました。今度日本に用事がある時は、凛花も連れて挨拶に行こうかと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ