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まったくもって、チョロくなかった件について。

 ディッツ君視点になります。

 新しい主人は、少し驚かされることもあったが、基本的にチョロい人だった。


 前の主人に比べたら、雲泥の差だ。基本は出来ているから、マナーも細かい部分をサポートしてやれば全く問題ない。しかも、わりと真面目だし頭もいい。暴力もない、空き時間を好きに使っていいと言ってくれた。勉強や読書をする余裕までできた。しかも給金が少し上がった。

 おまけにおやつ付き。これがまた、素晴らしいのだ。こっそり自宅に持ち帰ったらお土産までくれるようになった。家族も俺がアザを作ったりしなくなって喜んだ。




 しかし、新しい主人はチョロくなんかないと…その後に俺は知ることになってしまった。




「あや、見つかっちゃったッスねぇ」


 びしょびしょになったリンカ様。ラヴィータ様が居ないところを狙われたらしい。慌ててたまたま持っていたタオルを渡すが、この程度ではどうにもならないだろう。着替えをどうすべきか考える。


 目の前にはクスクス笑う貴族の子女達。彼女達がやったのだろう。あ、あの女は仕えるのを断った奴だ。つまり、リンカ様は俺のせいで嫌がらせを受けたのか…怒りを感じた俺は、リンカ様の様子がおかしいのに気がついた。


「…ふふふ」


 リンカ様は笑っていた、が……





 よく見たら、目が笑ってなかった。背筋がゾクッとした。






 手早く魔法で乾かして、彼女達を真っ直ぐに見つめると、リンカ様は笑った。


「貴女達は、自分の敵だ。仕返しするから、楽しみにしていてね」


「!?」

「なっ!?」

「は!?」


「やられたら、やり返す!やったからには当然、やり返される覚悟があるんスよね?」



 そして、リンカ様は宣言通りに多分やり返した。



 一人は、トイレに入ったところを狙われたらしい。しかも、その貴族の子女には侍女がおらず、侍従だけ。おまけに着替えはズタズタにされていた。びしょ濡れで帰るしかなかったらしい。


 もう一人は、歩いていたところを落し穴にはまった。落し穴の中は池になっており、侍女がいたのだが侍女だけでは引き上げられず、侍女が助けを呼ぶ間、泣いていたらしい。


 最後の一人は、机から出てきた手のゴーレムと上半身だけのゴーレムに散々追いかけられたあげく、水をかけられた。しかも、ゴーレムの口から出たやつだ。あまりにもえげつない。

 ちなみに、被害にあった貴族の子女は1番身分が高く、リンカ様をびしょ濡れにした主犯格だった。



 しかし何故多分と言ったかというと、証拠がないからだ。トイレでびしょ濡れ、落し穴は目撃者なし。ゴーレムも消えてしまった。

 だが、全員が結果としてびしょ濡れになったことを考えると…リンカ様が犯人なのだろうと思われた。


 当然リンカ様は令嬢達に糾弾されたが、しれっと言い返した。


「どうッスかね?されるだけのことした奴が自分は悪いと思うッスけど?認めてやる義理もないし、正直ざまあみろッスね」


 うむ。リンカ様は性格が悪い。しかし、言うことはもっともだ。やり返されたくないならするな。そりゃそうだ。


 お前がやったんだろうという女子達に、リンカ様は鼻で笑って言った。


「なら、証拠を持ってきなよ。さもなくば、名誉毀損で訴えるよ?自分がやったとは限らないでしょ?どうせ他にも自分にしたようなことしてるんでしょ?相当恨まれてるんだよ?貴女達」


 確実に証拠を残してねぇなと思った。懲りない貴族の子女達は、それでもリンカ様にちょっかいをかけたが、ことごとく返り討ちにされていた。


・水をかけようとする➡反射の魔法をあらかじめかけていたらしく、返り討ち。

・物を盗むまたは罪を着せる➡仕掛けられていたトラップにかかり、とんでもない格好で縛られていた。キッコー縛りというらしい。

・暴漢に襲われた➡逆に暴漢がナニかをされたらしく、泣きながら尻をおさえていたらしい。何をした。


 リンカ様の悪評を流そうとしたら、婦女子同盟というおとなしめの貴族女子によるコミュニティが全力で阻止した。リンカ様はモエの伝道師なんだそうだ。

 モエってなんだよ。そして、リンカ様を貶めようとした奴らはいつしか孤立した。


 さらに、リンカ様に手を出すと、何倍もの報復が来ると噂になり誰もリンカ様にちょっかいを出す奴はいなくなった。

 手を出した令嬢達は、やはり多数の令嬢から恨まれていたので、逆に今他の令嬢から嫌がらせを受けている。



「あの、最初のはやはりリンカ様が?」


 ほとぼりがさめた頃、こっそりリンカ様に聞いてみた。


「ああ、最初の2つは自分じゃなくて精霊さん達ッスよ。最後のだけが自分ッス。あー、一応自分、精霊王の加護持ちなんスよ。だから、他の精霊さん達がキレたッス」


「もしや、彼女らの持ちものが無くなったりしているのは…」


「半分精霊さんで、半分は人間みたいッスよ」


「……………そうですか」


 つまり、彼女はちょこっとやり返しただけで他は関わってなかったわけだ。しかし、精霊が自主的に嫌がらせをするなんて恐ろしい。自然すべてを敵に回すことになる。リンカ様を怒らせないようにしようと心に誓った。

 そもそもリンカ様は害そうとしなければ自分から他人に危害加えたりしないから、問題ない。むしろこちらに気遣ってくれるいい主人だ。


 ただ、やらかす前に相談して欲しいとお願いした。むしろ全力で懇願した。そして、このお願いをして正解だったと後に思うことになる。



 ちなみに、ロザリンド様にその件を報告したら懐かしそうに話しだした。


「懐かしいわ~、あいつ校長のヅラを釣り上げたりして呼び出されて謝ったよ」


「………そうですか」


 次々飛び出すリンカ様の珍プレーに、彼女の矯正は不可能だと悟りました。

 ところで、リンカ様よりロザリンド様は年下のはずなんだが…下手につつくと蛇が出そうだからやめておいた。



 リンカ=ワタセ…俺の主人は、基本敵に全く容赦をしない。


「こういう計画を…」


「却下!話し合いにしましょうよ!俺が何とかしますから!!」


「いやー、ディッツ君をスカウトして正解だったわ~」


「……そうだな」


 他人事なロザリンド様とラヴィータ様。説得手伝えよ!


 そして、わりと律儀なリンカ様は基本ちゃんと俺にやらかす前に報告してくれるので、俺は状況に応じて手伝ったり説得したり説得したり説得したり説得したりした。意外とリンカ様は血の気が多い。


 ある意味カーライル公爵子息よりも厄介な気がする今日この頃。

 しかし1番厄介なのは、どんだけ面倒でも全然リンカ様の従者を辞めたいと思わないことかもしれない。

 ちなみに

婦女子同盟➡×

腐女子同盟➡○

嫌な予感がしたので詳しくは調べなかったディッツ君でした。


 大変有能で、従者クラスの学年トップをキープしています。


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