約束を果たそう
ロザリンド=バートンは今年で16歳になります。10歳年上、結婚もうすぐ2年目の旦那様が、そっと封筒を渡しました。
「あのさ、ロザリンド。結婚式のやり直しをしない?」
「やる!!」
封筒の中身は、結婚式の計画書でした。私は14歳の誕生日に旦那様…ディルク=バートンに嫁ぎました。婚約歴が長かったものの、不意打ちの結婚式だったので『いつかやり直しをする』と約束していたのです。ちゃあんと覚えていてくれた旦那様、大好きです。膝に乗って甘えちゃいます。
「…ん…」
「こ、こら!で、日にちなんだけど…」
「後で。ディルクが好きすぎてちゅーが欲しいのです」
「…………………うん」
このように、マイダーリンは私に激甘です。やらかしちゃった結婚式については、前作のどっかに載ってます(宣伝!)
結婚式は次の私の誕生日となりました。まだ半年以上ありますが、もう動かねばなりません。来賓に王太子もいるからなぁ…
今から打診してスケジュールを空けといていただかねば。両親も多忙だし…
「今回は一緒に頑張ろうね!」
「うん!」
基本、結婚式というのは嫁側の家が準備するものなんだそうです。自宅でのパーティや茶会をしきるのも嫁…女主人の役目だから、予行練習も兼ねてるんだそうです。まあ、うちはあまりやってませんけどね。私がまだ学生ですから。
というわけで、実家に相談しにきました。たまたまお休みだったそうで、父と兄も居ます。特に兄がいるのは珍しい。
「まああ、全力でサポートするわ!」
「お嬢様、このマーサにお任せくださいませ。全力をもってお手伝いさせていただきます!!」
「え?あ、うん」
私よりも超やる気な母とマーサに気圧されてしまいました。
「…大聖堂をおさえるか」
「いや、こじんまりした身内だけの式がしたいです!派手なのは前回だけで満腹ですよ!」
父もやる気なのはいいけど、大聖堂なんて結婚式で東京ドームを貸切にするようなもんですよ!?
「とりあえず、やることをリストアップしていった方がいいんじゃない?」
兄も手伝ってくれるようです。
「やることリストはディルクから預かってます」
リストにざっと目を通す兄。デキる男って感じでカッコいいです。
「まずは招待客リストだね。そこが決まらないと会場も決められない。ドレスは…」
「お母様に任せて!ミス・バタフライも呼ばなくちゃ!大作作るからね!」
母、満面の笑みですよ。可愛いです。
「母様、ありがとうございます」
「じゃあドレスは母様ね。母様、ロザリンドの意見も聞いてあげてね」
「もちろんよ。ロザリンドちゃんにもデザイン案やレース・布見本を相談するわ!こうしてはいられないわね、マーサ!」
「はっ!既にミス・バタフライには連絡済みです。現在は見本をあるだけ持参してこちらに向かっているそうです」
「まぁ!ではこちらもデザイン画なんかを準備しなくてはね!じゃあロザリンドちゃん、また後でね」
母は足取りも軽やかに去っていきました。本当に元気になったよね………昔病弱だった面影が皆無だよ。
「兄様、僕らは?」
「兄様、私達は?」
ルシルとルチルがキラキラして兄を見た。
「じゃあ、ポッチ達と披露宴会場の飾りつけをお願いしようかな。ポッチに頼んでくれる?」
ルシル、ルチルも早いもので8才。冒険者登録をして私と狩りに出かけてるせいか、同年代より突出している。
「「ポッチにお願いしてくる!」」
ああして走り回る姿は年齢相応だ。ホッコリして見送っていたが…ポッチを引きずってきたので超焦った。
「ポッチィィィ!?」
「「あ」」
「いたた…大丈夫だよ。で、僕はなんで呼ばれたの?」
「「ロザリンドお姉ちゃんの結婚式の飾りを一緒に作ろう!」」
「ロザリンドお姉ちゃんの結婚式…ロザリンドお姉ちゃんの結婚式!!やろう!今やろう!!すぐやろう!!」
ポッチの瞳がキラキラと輝きました。
「会場は!?お姉ちゃんの希望するイメージは!?予算は…いらないや!僕の貯金使うから!ほしい飾りはある!?」
「えええええ!?」
「詳細が決まったら改めて連絡するよ。お金は父様が出してくれるから好きに作っていいよ。ポッチのセンスは信頼してるし」
一気に聞かれて焦る私とは裏腹に冷静に対応する兄。いや、待て兄!
「いや、お金は私が「ロザリンド、私が愛娘にしてやれる数少ない事を取り上げないでくれ」
「……………」
父が、某CMのチワワ並みにウルウルしている…気がする。見た目は無表情だが、父が悲しんでいるのがわかった。私は負けました。
私より周囲がやたらやる気なのですが、どうしたらいいでしょうか。
ようやくスタートしました、幻の第1話。元から続編でロザリンドの結婚式リベンジを果たすつもりでいましたが………
気がつけは寄道し過ぎて62話。
なんでこうなった…と作者が頭を抱えております。毎度毎度ノープランだから仕方ないネ☆
さて、ロザリンドは無事『ささやかな結婚式』をあげられるでしょうか?読者様からの無理じゃね?コールが聞こえてきそうですね。




