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泣けない彼女

 前話のディルク視点になります。この話は入れた方がいいかなと思います。

 輝くクラリンが居なくなってから解散になった。ロザリンドと居るから大概のことに驚かない自信があるけど、あれはビックリした。



 今、俺はロザリンドと帰りの馬車に揺られている。


 ガタゴト…したぱた

 ガタゴト…したぱた

 ガタゴト…したぱた


 ガタゴトは馬車の走る音。

 したぱたと尻尾がごきげんに揺れて馬車に当たってしまう。


「ディルクは何故そんなにご機嫌なの?」


「え?」


 可愛いお嫁さんが甘えてくれると約束したからですよ。忘れてないよね?


「それは…ロザリンドに頼られたのが嬉しくて…お家でしっかり慰めてあげるからね!」


 俺はさりげなく念押しした。


「とんぬらぁぁ!??」


 真っ赤になって謎の雄叫びをあげるロザリンド。可愛い。でも、トンヌラってなんだろう?


「…ロザリンドは本当に可愛いよね。俺と二人きりでやっと泣くんだから」


「ぐふっ!?」


 どうやら覚えていたらしい。明らかに動揺している。好きな子を苛めるのって、こんな感じなのかなぁ。あの時のロザリンドも可愛かったなぁ。


「それで、いつにする?今?」


 俺は今すぐがいいなぁ。期待しつつロザリンドを見る。


「い、いや…なんかクラリンで頭がパーンってなったから、もう悲しくない…」


 ロザリンドは真っ赤になってもう大丈夫だと話している。可愛いなぁ。


「照れてるの?可愛いなぁ」


 素直に甘えられないところがまた可愛いんだ。本人には全く自覚がないけど。


 ロザリンドに意識を集中してみる。どうも御者さんに聞かれたら嫌だからするなら自宅じゃないと嫌だと思ってるみたいだね。


「…だから、別に平気だってば」


 そっぽを向くロザリンド。てれやさんなとこがまた可愛いなぁ。


「うん、家でがいいんだね。可愛いなぁ」


 なんかビックリしたみたいだ。何に?心を読まないでいただきたい?なるほど。かなり正確に彼女の気持ちを読み取ったからか。


「…なんかディルクの方が私の感情を読み取ってない?」


 俺も常に読み取ってるわけじゃない。集中するとわかるぐらいだ。


「うーん…魔力が人間より内部に作用しやすいからかな?多分つがいへの繋がりも獣人側の方が強いし…そのせいなのかも。むしろそのぐらいできないと、獣人って伴侶に嫌がられそうだし」


 獣人は察するのが不得手だから発達した能力なのかもしれないね、と話した。



 ロザリンドは話をそらせたと思っていたようだった。チラチラと俺の様子をうかがうロザリンド、可愛い。

 またギャオスと腹が鳴ると色々台無しだし、ご飯を食べた。そして風呂に入って念入りに洗い、念入りにブラッシングして毛皮をフワモフに仕上げた。


 準備はできた。さぁ、可愛いロザリンドを全力で甘やかそう。俺はロザリンド向かって両手を広げた。


「おいで」


 ロザリンドは嬉しそうに抱きつき来た。超可愛い。うちのお嫁さん、世界一可愛い。


「えへへ…」


 へにゃっと気を許した笑顔がまた超可愛い。これは俺やルーとか、気を許した人間にしか見せない笑顔なんだ。


「よく我慢してたね。泣いていいよ。ここには俺しか居ないよ」


「………」


 ロザリンドの感情が揺れた。ねえ、どうか強がらないで。君が悲しむなら、慰めさせてほしい。誰より君に優しい人間でありたい。


「もやもやなんて、涙と一緒に溶かして出しちゃえ。

俺といるときは、強がらなくっていいんだよ」


「…大好きなディルクの前だからこそ、カッコいい私でいたいんです」


 そう言いながらもロザリンドの瞳に涙がにじんだ。


「…ロザリンドがカッコいいなんて知ってるよ。でもさ、俺はロザリンドと歩いていくって決めたから…ロザリンドを支えていける夫になりたい」


 彼女はすごい。なにせ、世界を救った姫勇者様だ。本人が望まないからそう扱われないだけ。

 でも、俺にとってロザリンドはロザリンドだ。彼女に寄り添い、幸せにしたいと願っている。俺は獣化した。念入りなブラッシングのおかげでロザリンドは幸せそうに俺の毛皮を堪能する。


「ねえ、可愛い奥さん」


「…はい」


 可愛い可愛い、俺のつがい。俺も君の髪が大好きだよ。君はセットが面倒だから好きじゃないみたいだけどね。もふもふが好きな気持ち、ちょっとわかるよ。君の髪にいつまでも触れていたいと思う時があるから。


「君の夫はね、君に頼られたいんだよ。どうか君を、慰めさせてくれないか?」


 ぺろり、とロザリンドの頬を舐めた。ほんの少し涙が溢れていたから、ほんのり塩味だった。


「…そんなに私を泣かせたい?」


 それは違うよ、ロザリンド。


「…泣かせたいというか、頼られたい。ロザリンドを幸せにしたい」


 君の涙を拭って、笑顔にしたい。君とずっとずっとこの先を生きていきたいんだ。君の涙を拭えるのは俺でありたい。


「…………」


 ロザリンドの心は、もう悲しんでいない。暖かくて柔らかい気持ちが伝わってくる。


「…っふ…うっふぇぇ…」


 ロザリンドが泣き出した。でもそれは、悲しい涙じゃない。大丈夫、ちゃんと俺には伝わっているよ。


 君が今、本当に傷ついていないこと。

 君が今、俺に感謝していること。

 君が今、幸せだから泣いていること。


 そして、伝わってる?と彼女の心が囁いた。


「…うん。伝わっているよ」


 ロザリンドは甘えるのが苦手だって知ってる。でも、君が本当は俺に甘やかされるのが大好きだってことも、俺はちゃんと知ってるよ。


 君が泣きたくても我慢して、一人じゃ泣けないこともよく知ってる。君は強いから、泣きたくても泣けないんだよね。俺は、俺にしか見せない君の弱さも愛おしいよ。


 泣きながら眠る最愛のお嫁さんにキスをして、彼女を獣の身体でくるんで眠った。




 そして翌日の朝。

 ロザリンドはまだ眠っている。可愛いなぁ。


「ん…」


 おや、起きるみたいだ。たまには寝たふりをしてみようかな?


「…うああああああ…泣きながら寝落ちとか、ないわぁぁぁ…」


 何やら呻いて転がっていらっしゃる。別に俺が泣かせたんだし、気にしてないよ?


「…ディルク、寝てるの?」


 ロザリンドが近づいてきた。いい匂い。ナデナデされて気持ちいいけど、喉を鳴らしたら起きてるのがバレちゃうかも。我慢、我慢。くっ…しかし気持ちいい…!


「…………私を泣かせてくれてありがとう。だいすき」


 伝わる甘くて優しい感情を吹き込むかのように、ロザリンドは俺にキスをした。


「ひあ!?んんん!?」


 朝から可愛いことをするからだよ。我慢できなくさせたのはロザリンドだからね。可愛い可愛いお嫁さんの後頭部をがっしり固定して、口の中を蹂躙しまくった。


「ふぁ…ディルクさん、いつから起きて…」


「うん、とりあえず今日も遅刻してね」


「ふぇ!?」


 真っ赤になって硬直したロザリンドから、邪魔な衣服(モノ)をポイポイ排除していく。本気を出した俺にロザリンドは敵わないし、抵抗も弱い。ちょっと性感帯を刺激すれば魔法も使えない。


「あ、朝からはダメぇぇぇ!?」


「煽るロザリンドが悪いんだよ」


 それになんだかんだ言ってるけど、本当はロザリンドだって乗り気なんだってバレてるからね?

 とても美味しそうな最愛のつがいに、舌なめずりをして、美味しくいただいちゃいました。



 可愛い可愛いお嫁さんは、結局その日は…というかその日も学校に行けませんでした。ロザリンドが可愛過ぎるのが悪いんだと思います。


 俺は素直になれない、一人じゃ泣けない彼女が誰よりも大好きです。 

 ロザリンド、ディルク浮気疑惑で泣いてたんじゃ?というツッコミは受け付けてません。ディルクはそこ、知らないですから(笑)


 まぁ、わりと泣けないロザリンドです。大人になるほど泣きたくても泣けないですよね。

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