私を支えてくれる彼
新章・幻の1話が次の予定でしたが、ディルクの慰めを見たい!という方がいたのでディルクの慰め話になります。
シャイニングクラリンが天に召され……いや、あれは多分天界的なとこに戻ったんだよね、きっと。とにかくクラリンが居なくなってから解散となりました。
今、私はディルクと帰りの馬車に揺られております。
ガタゴト…したぱた
ガタゴト…したぱた
ガタゴト…したぱた
ガタゴトは馬車の走る音。
したぱたはディルクの尻尾がごきげんに揺れて馬車に当たる音です。
「ディルクは何故そんなにご機嫌なの?」
「え?」
いやもう、表情も超ご機嫌でニッコニコです。
「それは…ロザリンドに頼られたのが嬉しくて…お家でしっかり慰めてあげるからね!」
「とんぬらぁぁ!??」
クラリンのインパクトですっかりと吹っ飛んでましたよ!ぬあああああ!嬉しいがはずかしい!転げ回りたいぃぃ!!
「…ロザリンドは本当に可愛いよね。俺と二人きりでやっと泣くんだから」
「ぐふっ!?」
カーティスの時だね!?黒歴史がぁぁ!!
※悪役令嬢になんかなりません。ロザリンド7歳・騎士団でお仕事編のディルクともふもふ参照
「それで、いつにする?今?」
ディルクがにっこりと笑った。
「い、いや…なんかクラリンで頭がパーンってなったから、もう悲しくない…」
「照れてるの?可愛いなぁ」
ディルクさん、話が通じてないよ。照れて…はいるけど、可愛くもないよ。素直に甘えらんない可愛いげない嫁で申し訳ない。
そして、御者さんに聞かれたら嫌だからするなら自宅じゃないとやだ。
「…だから、別に平気だってば」
そっぽを向く私。我ながら、可愛くないわぁ…
「うん、家でがいいんだね。可愛いなぁ」
心を読まないでいただきたい。しかも、ディルクの可愛いはなんかおかしい。そもそも悲しくないんだってば。しかし、おかしいな。
「…なんかディルクの方が私の感情を読み取ってない?」
私はなんとなーくわかるぐらいだけど、ディルクはかなり正確に把握している気がする。
「うーん…魔力が人間より内部に作用しやすいからかな?多分つがいへの繋がりも獣人側の方が強いし…そのせいなのかも。むしろそのぐらいできないと、獣人って伴侶に嫌がられそうだし」
獣人は察するのが不得手だから発達した能力なのかもしれないね、と話した。
話をそらせたと思ったのです。帰宅してもディルクは何も言わなかったし、ご飯を食べてお風呂に入ってさぁ寝ようというところで、ディルクが私に向かって両手を広げました。
「おいで」
ロザワンコはディルクにおいでと誘われれば喜んで抱きつきに行きます。わんわん。
「えへへ…」
「よく我慢してたね。泣いていいよ。ここには俺しか居ないよ」
「………」
泣かすのはやめていただきたい。優しくするのは卑怯だと思う。
「もやもやなんて、涙と一緒に溶かして出しちゃえ。俺といるときは、強がらなくっていいんだよ」
「…大好きなディルクの前だからこそ、カッコいい私でいたいんです」
優しく撫でる手に、涙がにじむ。
「…ロザリンドがカッコいいなんて知ってるよ。でもさ、俺はロザリンドと歩いていくって決めたから…ロザリンドを支えていける夫になりたい」
ディルクはそこまで言うと、獣化した。もふもふ…幸せ。
「ねえ、可愛い奥さん」
「…はい」
「君の夫はね、君に頼られたいんだよ。どうか君を、慰めさせてくれないか?」
ぺろり、と頬を舐められた。ほんの少し溢れた涙を舐め取られたらしい。
「…そんなに私を泣かせたい?」
「…泣かせたいというか、頼られたい。ロザリンドを幸せにしたい」
「…………」
もう泣かなくても、そんなにもやもやはない。ディルクの優しい言葉に充分癒されたし慰められた。それを伝えたいけど、うまく言えない。
「…っふ…うっふぇぇ…」
言葉にならない感謝は、涙になって溢れていく。ねぇ、ディルクは私の感情がわかるから、伝わっているよね?
「…うん。伝わっているよ」
自分から甘えるのは苦手だけど、ディルクはいつだって全力で甘やかしてくれるから…これでちょうどいいのかも…と思いながら、私の意識は薄れていった。




